第20話

 まだ夕方前で帰還した冒険者の少ない時間帯だった為、少しサーヤさんが知っているターテレ周辺の森の情報を聞いていた。


 知り得た情報は採取可能な物や現れる魔物の情報だ。そこで知った情報を元に冒険者ギルドにある資料室で資料を確認と行こうと思う。


 冒険者ギルドの2階にある資料室でサーヤさんに教えて貰った採取物の適切な採取方法と魔物の情報を得て資料室を出る。


 2階から1階に降りると、冒険者ギルドは冒険者たちでごった返していた。そんな中で、冒険者ギルド内に居たミリアさんに挨拶して石ランクに上がった事を報告する。


 「アオイくんなら石ランクになれても可笑しくないからね。明日は森に行くの?」


 「うん、そうだよ。」


 「それなら早めに行動する事を心掛けると良いよ。森の中だとどうしても太陽の位置の確認が難しいからね。」


 「なるほど。」


 それから幾つかの森で行動する際のアドバイスを受けると、僕はミリアさんにお礼を言って金のウサギ亭に帰るのだった。


 金のウサギ亭に帰った僕は装備の手入れを行なってから夕食までの時間を文字の勉強に当てる。


 やっぱり文字を読む事が出来るからか、1からの読み書きよりも速く覚える事が出来そうだ。


 夕食までの勉強を終えて夕食を食べ終わると、洗濯と洗体に洗髪を終わらせてワンピース1枚で勉強していく。


 そして日課に成りつつある幸運の女神ティア様への祈りを行ない、定期的に気持ち悪くなるティア様との会話が終わると眠りに付くのだった。


 翌日、僕は冒険者ギルドでターテレ周辺の森の依頼を受けてターテレの森を探索していた。


 事前に知り得たターテレの森で現れる標準的な魔物はウルフ、フォレストラット、スパイダーの3種類が魔素溜まりから発生するらしい。


 フォレストラットは最大で20センチの森に生息する鼠の魔物だ。強さ自体はそこまで強くないが、フォレストラットは集団行動をする魔物で最低でも1匹居れば5匹は居ると言う魔物だ。


 次にスパイダー、この魔物は最大で50センチもある蜘蛛の魔物だ。スパイダーひ巣を作り待ち構えている為、スパイダーの巣を見つければ近くにスパイダーが居り、罠に獲物が掛かるのを待つ様だ。


 この2種類の魔物にプラスしてウルフの発生する魔素溜まりがターテレ西の森には現れる。


 そんな森を探索しながら現れたウルフに向かって、僕は【マジックボール】を食らわして怯ませてから蹴りを繰り出し倒していく。


 「ん?……あれがフォレストラットだね。全部で8匹か……多いな。」


 ロッドをフォレストラットに向けて【マジックボール】を念じて魔法陣を展開と同時に発動する。それも連続で。


 何度も何度も念じて【マジックボール】の魔法陣を展開し、念じて【マジックボール】を発動する。


 それの繰り返しでフォレストラットが僕に接近して来る前にフォレストラットの数は2匹まで減った。


 それでも逃げずに襲って来るフォレストラットの1匹はロッドで叩き、もう1匹は蹴りを食らわした。


 「本当に弱いなぁ。フォレストラット。」


 【マジックボール】でも物理攻撃でも僕の一撃をフォレストラットは耐え切れずに絶命していた。


 そんな数だけは多いフォレストラットをインベントリに集めてから一気に魔石を取り出してドロップアイテムにしていく。


 「ん、両方肉が出た!」


 フォレストラットの肉は臭みも無くて美味しいらしく、多く依頼に出されるほどターテレでは食べられている。


 僕も金のウサギ亭の夕食に出された時は気付かずに食べ、鼠の肉なのに美味しかった印象があった。


 そんなフォレストラットの肉を袋に詰めていると、解体で出た血の臭いに誘われてウルフが隠れながら向かって来る姿が視界に偶々入った。


 1匹だけだし、あのウルフ僕が気付いている事を知らないな。ニヤリと口角が上がるのを感じながら僕はいつでも【マジックボール】を放てる様に意識しておく。


 そうして僕の走って来たタイミングで僕はウルフに地面に置いていたロッドを拾って向けると、【マジックボール】と念じて魔法を発動した。


 【マジックボール】をすぐ近くで受ける事になったウルフの動きが止まった瞬間、僕はいつも通りウルフの顔面に向かって蹴りを繰り出した倒すのだった。


 倒したウルフは実は囮で他にもこのウルフ以外が居た。と言う事はなく、僕はまだ残っているフォレストラットの解体を済ましてウルフの解体も行なうと探索に戻った。


 それから現れる魔物を倒して進んでいるとスパイダーの巣を発見した。


 「これだけ目立ってると引っ掛かる奴は居ないだろ。」


 2、3本の木を使って作り出されたスパイダーの巣を見ながら呟き、僕は巣の近くに居るはずのスパイダーを探しているとスパイダーと巣に捕まっている何かを発見した。


 まさかこんなに目立つスパイダーの巣に引っ掛かる獲物が居るとは思っても見なかったが、スパイダーは獲物に意識が向いている様で僕には気が付いていない様だ。


 そんな獲物をこれから捕食しようと近付いているスパイダーに向けてロッドを向けると、僕は念じて【マジックボール】を発動して行った。


 1発目の【マジックボール】を受けて自身の巣に吹き飛ばされるスパイダー。だが、1発だけじゃスパイダーを倒す事が出来ず、2発目の【マジックボール】でスパイダーは倒す事が出来た。


 スパイダーを倒す事が出来た僕はスパイダーの巣に捕まった哀れな獲物がどんな生き物なのかを確認する為にスパイダーの巣へと近付いて行く。


 スパイダーの巣に近付いて確認すると、そこには胴体がぐるぐる巻きに糸を巻き付けられた15センチくらいの動く昆虫の翅が生えた可愛いフィギュアが捕まっていた。


 「妖精?」


 この捕まって胸が強調されている妖精?をまじまじと見ていると、その妖精?は早く助けろと言葉にならない言葉を話しながら目で訴えてくる。


 「口が糸で話せないんだね。傷付けない様に糸を外さないといけないか。」


 解体ナイフで捕まっている妖精?の周りの糸を切断して行き、妖精?の翅を傷付けない様に胴体の糸から外していく。


 「ベタベタする。魔法で取れるかな?」


 スパイダーの糸でベタベタになった手を見ていると、妖精?は両腕が自由になったお陰で自分の口元の糸を外し始めた。

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