始業前の求愛活動


「一乃瀬先輩って、高橋先輩のことどう思ってるんですか」


今まで幾度と尋ねられた問いに、今はなんと答えればいいのか分からない。




「和おはよう!今日もめっちゃ可愛いね!大好き!」


登校早々、夏休み前から始発電車に乗り始めた高橋が声をかけてきた。あれ、クラス反対側だった気がするんだけど。


「何しにきたの未来」


「今日も和に愛を伝えようと思って!」


クラスメイトが呆れ顔で高橋に声をかけた。


「なんか知らんけど和ご愁傷様」


「見捨てるなよ佐藤サトウ


「何言ってるの和、ハヤテは空気読んで2人っきりの空間にしてくれたんだよ」


「うん、真夏なのに寒いんだけど」


「えー、俺も思ってた。やっぱ俺たち運命だよ、結婚しよう」


「お願いだから一旦黙って。佐藤助けて」


「俺なんも見てない聞いてない巻き込むな」


そろそろ本格的に困ってるんだが。救世主登場しても良くない?!あれ?!


「照れてるの?」


「わ、ちょ、離れて」


まじでこの人距離感、


「顔真っ赤だよほんと、うけるかわいってあ、和逃げるな」


とりあえず授業までは先輩の教室でやり過ごした。


「和、遂に未来と付き合った?」


「違うよ佐藤、勘違いすんな」


「結構お似合いだよ美男美女で」


「いや顔かよ」


2学期が思いやられるという私の勘は外れておらず、この日から毎日毎日、毎朝毎朝、部活後も高橋とはまともな会話が出来なくなってしまった。




「一乃瀬先輩、もしかして高橋先輩と付き合いました?!つ、遂に先輩の唇が…」


「付き合ってないし私の唇は奪われてないよ」

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