ヒロインファースト 1

  

「おうお前ら、おはよう」


 おれは元気よくクラス中に挨拶した。


「おはよーさん委員長!」

「島崎くんおはよー」

「島崎は今日もイケメンだなー!」


 みんなから返事が返ってくる。アストクラブのメンバーではない。ただののクラスメイトだ。


 おれはみんなから挨拶を返されるという状況を心地よく思っていた。おれも中学時代に比べたらだいぶフレンドリーかつ人気者になったと思う。


 時刻は八時二十分。おれは鞄を机の上に置いて辺りを見渡した。


 朝の清冽な空気、独特の喧騒。中には気怠げに机に突っ伏している者もいる。朝練終わったあとの野球部員だろうな。疲れてんだな。その気持ちすっげぇわかるぜ。


 まだ翔太の奴は来てないみたいだった。あいつが来ないという可能性もあるが、おそらくそれはない。確信できる。断言できる。あいつはきちんと約束を守る男だ。


「おっはよーあすっちゃん! なぁなぁ聞いてくれよ! まじすっげぇから! おれバク転できるようになっちまったわ! 見る? どうせならここで見ちゃう!?」


「見ない。お前はいつも元気いっぱいだな」


「あはは。そうだよね。洋介っていっつもこんな感じだよね!」


 おれ、洋介、大地の三人で会話が盛り上がる。アストクラブ男子の三人衆だ。


 洋介は野球部の四番で……って前も話したな。しかし洋介の奴、ずいぶんと髪切ったな。お 坊さんくらい思いきって刈ってきている。


「お前髪切ったな。涼しいか?」


「マジ涼しいぜ! あすっちゃんもやってやろうか!? うちの部員にめっちゃバリカン使うのうまい奴がいてさー。そいつにみんなやってもらってんだよね!」


「じゃあ部員限定じゃねぇか。しかもなんでおれがボウズにしないとならんのだ」


 おれは毎日ワックスでヘアセットしているというのに。ボウズ頭を否定するつもりはないが、さすがに男にとっても髪の毛は命なのだ。切りたくないという人だっている。


「そっかー。まぁあすっちゃんめっちゃ髪のけ拘ってそうだもんなー! ラーメン天丼あすっちゃん! って感じ!?」


 意味がわからなかった。思いっきり意味がわからない。ラーメン天丼? なんだ? 食堂の新メニューかなにかか?


「明日斗なんか雰囲気変わったか?」

「そうか? おれはべつにいつも通りだと思うが」


 大地の質問におれは嘘をついた。本当は今日複雑な気分だったのだ。家を出るときも心配だった。今朝のハルの件である。体調を崩したのなら休めばいい、と提案したのだが彼女は取り合わず学校に行くと言った。まぁ本人の意思は尊重すべきだと思ったおれはうなずいてしまったが……やはり心配だ。


 おれは今日、二つの感情を渦巻かせていた。一つは翔太のこと。彼が今日学校に来ると言うことでわくわくしている。そしてもう一つ、ハルのことだ。


 おれは義理とは言え、一応は名目上兄だった。名目上はな。ただ彼女はおれのことを頑なに義理の兄とは認めてくれない。なんでだろうな。やはりおれが前に告白したことが原因だろうか。それでおれに変に距離をつめられるのを嫌がっているとかか?


 その可能性は高いな。だとしたらおれはハルに嫌われていると言うことだろうか?


 おれはガシガシと頭を掻いた。いかんいかん。委員長がこんなに考え事に気を取られてどうするんだ。家のことは家のこと、学校のことは学校のことで区別すべきだ。


 でないとみんなに迷惑が掛かってしまう。そうなってはならないのだ。


「そーいやハルちんはー? いっつもあすっちゃんより早く来てない?」


「いやそんなことはないと思うぞ。あいつが学校に来る時間帯はけっこうまちまちだからな。それにアストクラブ以外にも友達が多いから、たまに道端で会った友達と一緒に校門くぐったりしてるみたいだぜ」


「へーそなんだー。おれ初めて知ったかも」

「おれも。初めて知ったよ。にしても明日斗はハルについて詳しいね?」


「んなっ……んなことねーよ。ふつうだ。長らくアストクラブやってればわかるんだ。一応あいつと一番仲のいい男友達はおれだろうからな。その自信は、ある」


「お! 言い切ったな! でもそうやって言い切れる自信ってけっこう大事だよね。うんうん、傍から見てもそうだと思うよ。ハルと一番仲のいいのは、お前だ明日斗」


「ありがとさん」


 おれは適当に応えながらも、そのときを待ちわびていた。


 八時三十分、予鈴が鳴った瞬間そのときが訪れた。


「おはようございます!」


 元気よく挨拶したのは翔太だった。黒髪マッシュにした髪の毛はきちんとワックスがつけられていて、雰囲気イケメンオーラバチクソ放っていた。やべー、こいつマジでかっこいい。おれの居場所がなくなるかも知れない。


「――え、誰?」「あんな人クラスにいたっけ?」「……誰かイメチェンした?」


 などと教室中から声が上がる。特に女子。なんだかヒソヒソと内緒話をするようにとなり同士だったり前後同士だったりで話し合っている。


「明日斗さん! おはようございます! そちらの方は……えっと、もしかしてアストクラブの方?」


「おう。――お前らに紹介するぜ。おれの友達の翔太だ。お前ら話には聞いているだろう」


「なっ――聞いてた話と全然血がうっつうのあすっちゃん! めっちゃイケメンじゃん! あれー? 藤波先生さては嘘ついたなー」


「もしかして明日斗が髪型やったのかい? なんか、写真の姿とは全然違ったから戸惑っちゃって。えっと、自己紹介するね。僕はアストクラブのメンバー、って言い方も変だけど、藤本大地っていうんだ。サッカー部の副主将をやってる。よろしくね」


「こちらこそ! 僕は月島翔太って言います! 所属してる部活動は、マルチアミューズメント研究部って言って、アニメとか漫画とか、そういう研究してる場です!」


 ほう。こいつマジでちゃんと昨日言われたことを実践している。よくよく考えればおれたちが会ったのは土曜日なのに、まさか人間ここまで短期間で変われるとは思ってもみなかった。


 本人の努力の賜物だろう。おれはちょっと嬉しくて泣きそうだった。


「おれは日野洋介って言うんだー。野球部だぜー。よろしくな『しょうたいむ』!」


 なんかいかがわしいマンガのタイトルみたいなあだ名をつけてしまった。いやいかがわしくはないか。しかししょうたいむって。なんか長くなってないかお前。


「よろしくね!」


 がっちりと固い握手を交わす二人。友情が芽生える瞬間をおれは目の当たりにしているのかも知れなかった。


 おれは見逃さなかった。翔太の頬に冷や汗が伝っていることを。そりゃ緊張もするだろう。翔太の内心は今ごろドッキドキに違いない。ここは助け船を出してやるか――


 と思ったその瞬間だった。横槍を入れられたのは。


「あれーもしかして噂の翔太くん? うわー、なんだぜんっぜん違うね! ホントに違う! 写真とまったく違う! モデルさんみたい!」


「あ、ありがとうございます! モデルさんみたいって言われたのは初めてです!」

「いいっていいってそんなに謙遜しなくて! 私豊田ネネって言うの! それでこっちが――」


「吉川真矢です! 月島さん月島さん! なんか決めポーズ取って下さいよ! かっこいい奴!」

「えっ!? 僕がですか!? そんなポーズのストックなんて持ってませんよ! あっ、でもできるポーズあります!」


「おっ、なになに!? やってみてよ!」

「こう、ですかね」


「「「「「――――――――――ぶっ――――!」」」」」


 おれたちは一斉に噴き出した。それくらい翔太の取ったポーズが面白かったからである。


「あっはは! なにそれぇ――! 翔太そのポーズ面白すぎ! それあれじゃん! なんだっけ!? 私よく知らないんだけどたしか『ディバインズゲイト』とか言うアニメの主人公がやってたポーズ!」


「しょうたいむそれマジ厨二病って奴じゃん……! そういうのはみんな中学校くらいで卒業してっし!」


「そうでもないんじゃないの? だってあのアニメ見てるそうってけっこう大人も多かったりするんじゃなかったっけ?」


「そ、そうです! 僕はリアルタイムで見てたんですけど、掲示板とかはけっこう大騒ぎしてて、アニメ見てる層もけっこう頭のいい人が集まってたって言うか!」


「ほーん、めっちゃ詳しいんだねっ! ねぇねぇ他には!? なんかやってみせてよ!」


「ちょ、ちょっと待って下さい! アタシ笑いすぎてシャッター切るの忘れてました! も、もう一回やって下さい!」


 おれはこの場にハルがいないことが残念で仕方なかった。翔太がちょっと照れくさそうにしながらもポージングを決めた。首まで真っ赤にして決めポーズしている姿はちょっとばかしコッケイだったが、おれたちは笑いすぎてそんなことを気にしている余裕もなかった。


 これで翔太の学校生活は問題ないだろう。


 おれは最後に翔太の肩をぽんと叩いた。彼はビクッと体を震わせたが、おれの目を見るなりちょっと泣きそうになっている。


 おれは白い歯を輝かせて、言ってやった。


「お前は今日からアストクラブの副リーダーだ」


 

「「「「――――――――えぇ――――――!?」」」」



 四人の絶叫が教室中にこだました。




 退屈な国語の授業が展開されている。梶井基次郎の作品について解説しているらしい。正直おれは上の空だった。


 考えていたのはハルのことだ。今はもう二限目に突入したというのにまだ学校に来なかった。少々心配になってきた。


 おれはこっそりスマホを取り出してラインを開く。本当はやってはいけないことだぞ。だが授業中に怒られることよりも遥かにハルの方が心配だ。


 一応、おれは兄だ。形だけだが、心配してやる義理は大いにあると思う。しかも今日のハルの倒れ方は尋常じゃなかった。


 おれは考えを巡らせる。この間見てしまった、ハルの裸。


 くっ、ちょっと刺激が強かった。思い出すだけで鼻血が出てきそうだ。


 だが――問題はそこじゃない。ハルの首にあった傷。あの切り傷は何なんだろう。ふつうはあんな場所に傷は残らないはずだ。


 ヘアカットの際に失敗したとかか? その可能性がもっとも平和的なような気がした。それなら充分にあり得るし、あいつのことだ、ちょっと雑誌読んでたらそれが面白くて美容師に見せようとした、そして勢いよく振り向いた結果ハサミでグサリ……ありえる。


 きっとそうだ。おれはそう信じることにした。


 だがおれの胸のざわつきは収まることを知らなかった。


 ハルにラインを送る。『平気か?』と。返事はない。それどころか一向に既読がつく気配がない。


 まぁもともとラインの返信が遅いタイプなのかも知れない。そういう奴は一杯いる。だから既読がつかなくても心配する必要はない――


「どしたん?」


 隣の席のネネが声を掛けてきた。


「それ」

「……ぁ」


 おれは気づかぬうちに貧乏揺すりしてしまっていたらしい。そんなにもハルのことを考えていたのか。………………ちょっとストーカーっぽいな。


 兄らしい振る舞いを考えすぎて、ちょっと行き過ぎたかも知れない。それにおれは、あいつにとって兄じゃないんだよな。ただの同居してる友達。それ以上でもそれ以下でもない、か。


 だけど本音を言うのであれば、おれはもっとハルに近付きたかった。ハルのことをもっと知りたい。隠し事なしで、笑い合って話し合って。そういう関係性を望んでいる。


 なれるだろうか? わからない。でもおれはハルの心を開かせたい。おれのことを振り向かせたい。


 義兄妹になった、そのことをチャンスだと捉えている自分がいて、たまにいやになることがある。幸運にもほどがあるだろう。かつて好きになって告白した人と同じクラスになって、隣の席どうしになって、そして義理の家族になる。


 嬉しい……反面、怖い。彼女に素の自分を見せて幻滅されないかと。


「………………おーい、ちょっとぉ」

「悪い。ハルのことが心配で」


「………………ふ~ん、やっぱあんたってハルのこと好きなんだね」

「………………そう見えるか?」


「バレバレだって! まぁ自然なことだと思うし、あぁそうなんだろうな、とはずっと想ってた」


 おれはふっと笑った。


「お前はいい友達だな。ありがとな」


 言われた瞬間ぷすっとネネは顔を赤くした。ツインテールを振り回しておれの腕をボスボスと叩いてくる。痛くはない。ケドくすぐったいからやめて欲しい。


「ばかっ! あんたって男は女たらしなんだから! バカバカバカ!」

「バカはお前だ! 声がデカい!」


「おぉ――――っ、なんだ痴話げんかか!? お前らよく授業中におっぱじめられるよな! 先生羨ましいぜ!」


 がっははははと笑う先生。釣られるように教室中から「ちわげんか、ウケる……!」「お前ら外でやれよー笑」「うるせーぞてめーら笑!」と声が上がる。ったく、おれまで恥ずかしい。


 おれはネネとは反対側の席を見た。その席は空いている。ハルの席だ。




 この日春ハルは学校に来なかった。




 学校からの帰り道。


「けっきょくハルさん来ませんでしたね。僕楽しみにしてたんですけど」

「そうだな。来て欲しかったな」


「まぁ風邪ってことならしかたないっしょー! あぁそうだ、今日みんなでボウリング行かねー!?」

「うーん、ハルがいないのに行くのは、ちょっとね……」


「そうだよね……。ハルがいてうちのグループみたいなところあるからね」

「私、お見舞いの品持って行きましょうか……? ハルさんのおうちってどこでしたっけ?」


 最後に提案してくれたのはまややんだ。いやダメだ。それをやられるとおれの家にハルが住んでいることがバレてしまう。


「いや、みんなで行くと迷惑になるだろう。だからお見舞いにはおれ一人で行く」

「ほー、あすっちゃんまさかいかがわしいことしようとしてる?」


「ちょっとやめなよ! 明日斗がそんなことするわけないじゃん!」

「本当だぞ洋介。今の発言は失言だ」


「ちぇー、ごめんなさぁーい!」


 大して反省してない様子の洋介だった。


 しかしハルの奴……本当に大丈夫か? 倒れてたりとかしてないといいが。


「僕のせいですかね……。昨日僕がはしゃいでしまったせいで」

「そういうのやめろ。お前のせいじゃない。ハルが体調を崩したことと、お前のことは無関係だ」


「そーそー。そうやって翔太が自分のこと責める分、ハルもまた自分のこと責めちゃうんだからねー」

「たしかにネネの言うとおりだ。お前が気に病むことはない」


 おれは翔太に言った。翔太は「そうですよね」と言った。


 今日一日過ごして思ったのだが、翔太は陽キャデビューに成功している。


 昼休みにみんなで食堂に行ってご飯を食べた。そのときにあのマルチアミューズメント研究部の姫君である女の子がうちらの席にやってきて不敵な笑みを浮かべたが、ネネの鋭い視線にビビってまた離れていった。


 流石ネネ様だ……。向こうの姫様とおれたちの姫様じゃ格が違いすぎる。


 特に精神的な部分が違いすぎる。


 ハル? あいつは姫様と言うより女王様だ。天然系な女王。大してネネはきちんと常識をわきまえて民から絶大な支持を集める姫君だ。


「帰りにコロッケ買って帰るくらいはアリだろう」

「さんせー! マジお腹ペコペコだよー! いこいこ!」


 こうしておれたちは買い食いをして帰ることにした。


 全員が揃って帰ることって滅多にないんだよな……。今日はたまたま『一斉下校』の日だから揃ってるけど、部活ある奴はほとんど平日一緒に帰れない。


 できればこの中にハルもいて欲しかったな、と思うおれだった。




「おーいハル、ただいま」

「あーおかえりー。なになに!? プリン買ってきてくれた系!?」


「お前、元気じゃねぇか。まぁな。牛乳プリン買ってきたぞ」


 今日休んだ理由は教師から聞かされていた。風邪を本当に引いちまったみたいだ。


「熱は何度だった?」

「三十八度……。けっこう高熱」

「そうか……」


 ハルはこう見えて意外と体調を崩しやすい。季節の変わり目とかにけっこう休みがちになっている。


「あー、あたまいたい」

「平気か? 休んでろよ」


「けどなんかヒマなんだもん! ねぇゲームしていい?」

「ダメに決まってんだろ。………………いや、うるさくするくらいだったらべつにやっても構わない」


「ほんとに!?」

「……まぁヒマすぎて店の手伝い始められるよりかはマシだ。うちのは飲食店だからな」


 カフェ『オリエント』。


 それが我が家が経営する店だ。フラワーガーデンとふわふわのパンケーキ、そして自慢のオムライス……! 


 すばらしいお店なので皆様にも是非お越しいただきたい。


「そっかぁ。お店の手伝いもできないんだー。申し訳ねぇ」

「気にすんな。むしろお前いっつも働き過ぎなんだよ。ちょっとは休んでろ」


「はーい。じゃあ大人しくゲームしてるね!」

「ったく……」


 おれは頭を抱えた。


 冷蔵庫の中に今日買ったものを入れていく。するとだいぶ中身の減った牛乳が目についた。 パックの底が潰れている。


「……………………」


 おれはじっとハルの方を見つめた。携帯ゲーム機でなんか遊んでる。おれはあんましゲームをする方ではないが、ハルの姿を見てるとなんかやってみたい気にもなってくる。


 なにがあったんだろうか。


 テレビで気になるニュースなんかやってたか? くそ? ニュースなんてモンはいちいち目に留めないからな……。


 立ちくらみ、と本人は言っていた。


 ケド本当にそうか?


 やはりおれにはなにか裏がある気がしてならない。


 体調を崩した原因。それがあるような気がする。


「…………考えても仕方ねえな」

「……んー? なんかいったー? ねぇ明日斗! 一緒にゲームしてよ!」


「断る」

「うっわ。でたー。その元根暗な人間な発言」


「るっせぇな、ほっとけ。だいたいゲームしないのはむしろ根暗じゃないだろう」

 なんか会話がよくわからなくなってきた。ギャルって脊髄で喋るからな……。

「ん、にしてもヒマだなー。なんかゲーム飽きた!」


「飽きるの速すぎだろ……」


 ハルはこう見えても飽き性なのである。


 いや飽き性なのは見た目通りか。


 おれは冷蔵庫に今日買ったものを入れていたのだが、ふとあることに気づいた。いや気づけよって話である。


「そうか。牛乳ねぇんだ……」


 いつもは一週間に一回くらいのペースで買っていた。あんまり飲まないからな。


 しかし今日は違う。ハルが取り落としてほとんど減ってしまったのだ。


「わるい。ちょっと買い忘れたモノがあるから買ってくる」

「えぇ!? なになに!? アタシも行きたい!」


「お前は寝てろよ……。本当にちょっと行って帰ってくるだけだ」

「あーたーしーもーーーーーーいーーーーーーきーーーーーーーたーーーーーーーーいーーーーーーーっ!」


 なんだこいつ。ものすごい駄々をこね始めたぞ。


 おれははぁと息を吐いた。しょうがない。


 こうなったらハルはもう誰にも止められないのである。


 おれは腕を組んで胸を張り、そして言った。


「四十秒以内に支度しろ!」


 ハルは目を見開き、そして面白いくらい顔面を蒼白にしたあとにバタバタと支度を始めた。

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