First Mission 2

 学校での日常は様々だ。色恋に落ちたり、部活動に勤しんだり、果ては自習室で勉強って言うのもある。


 おれも中学時代はよく自習室を利用したりしていた。


 あの頃は本当に精神がすさんでいたから、逃げるように勉強に走ったものだ。


 おかげでこの高校に入ることができて、友達もたくさんできたわけだが。


「おーい明日斗! はやくいこ!」


 ネネに呼ばれる。おれは颯爽と掛けていく彼女の姿を追った。彼女は階段をずんずかずんずかとのぼっていくと、とある鉄扉の前で立ち止まった。そう、屋上へと続く扉である。


「さぁ夢の世界にレッツトライ、ってね!」


 一体なんのかけ声なんだろう。おれにはさっぱり意味がわからない。多分本人もわかってないと思うぞ。


「おっ! みんないるねー! やっほー!」


 さっきから気になっている人もいると思うので一応解説しておくな。『やっほー!』っていうのは、まぁおれたちの間だけで通用する挨拶みたいなもんだ。「よぉ元気?」みたいな感じだな。その代わりにおれたちは「やっほー」と言い合う。誰が決めたのかは忘れたが自然とそうなった。


「明日斗明日斗! 放課後サッカーしない!? 今日みんな部活ないんだって!」

「ほうサッカーか。おれは長らくやってなかったが、実は中学校時代はサッカー部に所属していてエースストライカーと呼ばれていたんだぜ」


 おれは応えた。嘘だ。もちろん嘘だ。


 サッカー習ってたなんてことは一回もない。


「うっそだ! だって明日斗めっちゃサッカー下手じゃ~~~~~ン! なにその嘘! ちょーウケるんですけど!」

「……くっ、自分ではうまいつもりなんだがな」


 運動は、得意不得意がはっきりしてるっつうか、とにかく球技系は本当にダメだな。武道系なら余裕である。剣道柔道空手、あげくの果てに弓道も才能があると言われた。特に剣道は得意だ。おれは高校一年生の途中まで剣道部に入っていた。


 かなりの実力は自分でもあったと思っている。実際に大会で優勝したこともあるしな。


 じゃあなんでやめちまったかって? 理由は単純だ。おれの家はカフェを営んでおり、その手伝いを行わなくちゃならなくなったからだ。親父一人とバイト連中ではさすがに回らなかったからな……。こればっかりはしょうがねぇよな。


「明日斗見てみて~~~、シャボン玉! すっごいきれいでしょ!」

「きれいだな。まるでお前みたいだ」


「わーきしょ。さすがに今のはドンびいたわー」

「お、おう……。おれもさすがにキモいなと思ったわ」


 おれとハルはふつうにいつも通りの会話をしていく。このビート板が水面を滑っていくような、そんな何気ない会話がおれは好きだった。この関係性をくれたのもハルだ。そして一つ、いや一歩壊そうとしたのはおれだ。


 おれはこいつのことを……本当はよく知らない。一緒の家に暮らすようになってから数日経つが、交わす会話も今みたいなモノだ。すなわち上滑りしていくだけの中身のない会話。こいつはおれと、どうしようもなく『友達』でいたいと思っている、そう痛感するほどに。


「ん、どしたん明日斗ー? 元気ない?」

「んにゃ。男にはたまに考え事をしたくなる瞬間があるんだよ」


「なんそれ! なんかちょっとかっこいい!」

「るせ」


 いつものおれたちの会話だった。とそこへ。


「おやー、お二人いつにも増してラブラブですね! 写真撮っちゃいましょう!」

「うわっ! どっから現れたのもうビックリさせないでよね~~~! 心臓に悪いじゃん!」


「えっへへ。すみません。でもラブラブの二人を見ているとついつい写真を撮りたくなって、物陰からこっそりと出てきてしまいました!」

「だーめ。あたしたちの写真撮ってもなにもいいことなんかないんだからねっ!」


「いえいえそんなことは。私が鑑賞します! そしてクラスみんなに配りましょうっ!」

「いやだから! も~~~変な勘違いされるでしょ! とにかくダメだからね」


「え~~~、は~~~~い。わかりました。じゃあ網膜に焼き付けるだけにします」

「いやべつにおれたちはラブラブなわけじゃないからな」


 おれは一応断りを入れておく。入れておかないと勘違いされそうだったからな。


「うーわ、ハルのべんとうめっちゃおいしそーだね! どうやって作ったのそれ?」


 ハルの弁当は自作だった。つまりハルが朝きちんと自分で作っているのだ。この辺はすごいなと思う。


 鳥のそぼろにたまごやき。そして鳥のつくね、ほうれん草のおひたし……。どこの栄養士だよと思うくらいに素晴らしい栄養バランスだった。おれも見習いたいね。


 ちなみにおれの昼食は購買で買った焼きそばパンとメロンパンである。うまいぞこれ。


「なんでいっつも明日斗って購買のパンなのー? めんどくさいの?」

「いやそう言うわけではないんだが、なんだかこう購買で買うパンってなかなかよくないか? 風流というか、これぞ青春! って感じがして」

「なんそれ! ちょー面白いね!」


 ネネに大爆笑されてしまった。そんなに面白いだろうか。


 中学時代おれはいわゆる典型的なオタクだった。ラノベはもちろん漫画も読みまくり、アニメのDVDも買ってそれはそれは楽しいオタ活ライフを送っていた。



 ――あるとき母親が出て行くまでは、な。



 おれの母親はおれと親父を残して家を出て行った。おれはきっとあの人のことを母親とは認めていないのだろう。ハルがおれを家族と認めないように。


 しかしハルの場合、おれとは血が繋がっていないから仕方のないところはある。その点うちの出て行った母親は、おれと血が繋がっている分たちが悪い。


 思春期男子にとって、親が唐突にいなくなるというのはショック以外の何者でもない。おれは親のケンカを間近で見てしまっている。割れる皿、飛び散る夕飯、怒号……それらのモノが、おれの記憶に今でもはっきり蘇ってくる。


 オタク。そうかつておれはオタクだった。紛うことなきオタクである。



 だから青春ラブコメへの強い渇望があった。



 おれは楽しい仲間たちと一緒に学園生活を送りたい。キョンや八幡、綾小路清隆のような学園生活を送ってみたかったのだ。


 おれはオタクのグッズをすべて廃棄した。オタクは陽キャグループには受け入れがたいからな。いや、我々を陽キャグループと呼ぶにはいささか語弊があるかも知れない。アストクラブだったな。多様性を認めるグループ。


 しかし多様性の中にも不文律というモノは存在する。近年はオタクへの理解が広まりつつあるが、現役高校生ともなると案外オタクというのは受け入れられなかったりする。


 おれはたまたまハルがオタクだと言うことを知っていた。なんてことはない、廊下ですれ違ったときに彼女の鞄からエロゲーのパッケージが落っこちて、おれがそれを偶然拾い上げてしまった……という、ラノベもかくやというできごとがあったからだ。


 おれはべつに彼女のことをそのとき恥ずかしいなどとは思わなかった。不思議だよな。学校でエロゲー拾ったのにだぜ? しかしオタクというのは見慣れたモノに対してはあまり反応しないモノである。


『これ、お前のか? エロゲー、だよな』

『あ~~~~うん! みた? そそそそれ! 友達が欲しがってた奴なんだ~~~! ほらアタシって友達多いじゃん? だからそのカンケーで…………』


 完全にお聞き苦しい言い訳を並べ立てていたハルだったが最終的に、


『ごめんそれあたしのなんだ……』

『エロゲー好きなのか?』


『ち、違うモン! それはあたしが好きだったアニメの原作ゲーム! いわゆる泣きゲーって奴でちょー面白いんだよ! ヒロインが飛行機事故で両親を亡くしてしまうんだけど、そのときのスーツケースの中にヒロインへの手紙が入っててね――!』


 おれはこのときの彼女の楽しそうに語る表情を一生忘れないだろう。のちの義理の妹となるハル。


 だからおれは危うく、自分がかつてオタクだったことを喋っちまうところだった。それくらいハルの笑顔には引力があった。


 青春ラブコメ大好きっ子、それがこのおれなのである。しかしそんなことを話したら彼女にドン引きされてしまうという予感があった。


 ――おれはハルがオタクだってことを知ってる。


 ――ハルはおれがオタクだったことを知らない。


『めっちゃ面白いから! ホント見てみてよ!』

『お、おう……………………』


 ――とまぁそれが去年のできごとである。今年もハルと同じクラスか。なんか感慨深いモノがあるな。


 だがハルでさえ、オタクであることはアストクラブに隠している。…………気持ちはわかる。オタクだってバレたら、後ろ指指されそうで怖いモンな。


 だからこの中で、ハルのオタク趣味を知っているっていうのはおれだけになる。何か優越感を感じちまうね。そうだ、この優越感に背中を押されてハルに告っちまったんだ。今でも脳裏に『ごめんね……あたしなんかじゃ相手にならないよ……ほんとごめん』という切なげな声がリフレインする。


 悔しかったがいつまでもうじうじしているおれではない。現にハルとおれの関係は元通りだ。


 おれが天を見上げていると、大地が声を掛けてきた。センターパートの黒髪男。超絶イケメンである。一年生ながら(今は二年生だが)副主将に任命され、ポジションはフォアード。絵に描いたようなリア充だ。


「明日斗ってたまにぼーっとしてるときあるよな。なに、宇宙と交信でもしてんの?」

「してねーよ。まぁできるもんならしてみたいけどな」


「な! おれも宇宙人と会話できるならしてみてーわ。ケド意思疎通が図れるってことと、常識が通用するってのはまた別なんだよな……」


 ごもっとも。おれが考えていることとまったく同じことを考えているな。たしかに意思疎通が図れるってことと、お互いを理解すると言うことはまったく違う。


 おれとハルの関係性も似たようなものだ。もっとも、このアストクラブの関係性も似たようなものかも知れない。どこかのラノベ主人公が言っていた。『本物が欲しい』と。たしかにおれたちの関係性は、上っ面なのかも知れないな。


 でも、楽しいんだ。おれはこの関係性を崩したくない。居心地の良さ。それがそんなに罪なのか? 


 時には陰口をたたかれることだってある。リア充である弊害だ。あるときなど『十三股野郎』というあだ名までつけられた。ふざけんな。おれはまだ恋人がいたことがない。


 おれたちが楽しくわいきゃい会話をしていると、重い扉が開く音が聞こえた。誰だ誰だ、とそちらを見れば、担任の藤波先生だった。


「どうしたんですか先生」


 おれは立ち上がり聞いた。いやべつに立ち上がる必要などなかったのだが、なんとなく立ち上がった方がいいかなと思った春の午後なのである。


「貴様らに重要なミッションを与えたいのだが、聞いてくれるか」


 おれはいやな予感がした。この予感はみごとに的中することになる。


「はーい先生先生! アタシなんだってするよ! なんたって名探偵ハルちゃんだからね!」


 調子がいいことこの上ないハル探偵だった。


 スーツ姿の藤波先生はそのうつくしいポニーテールを揺らしながら言った。


「頼もしいな。さすがは一同同じクラスにした甲斐があった。職員会議もたまには意味のある議題を提供するモノだな……」

「なんなんですか。先生早く言って下さいよ」


「せっかちだな島崎よ。まぁよい。先も言ったとおり貴様らには重大なミッションを与える。失敗した際のペナルティはない。だが成功した際の成績へのアドバンテージは保証しよう。まぁあくまでアドバンテージだがな」


 そういってくっくっと笑う藤波先生。この人性格がいいのか悪いのかよくわからない部分がある。


「要するにボランティアしろってことですね。なにをやればいいんです?」

「これだ」


 ピッと先生はある冊子の一ページを開いたモノを見せてきた。それは集合写真が載っている冊子であり、クラス写真が計七ページ分載っている。毎年四月になるとクラス写真が撮影され、それが現像されるとこうして冊子として生徒たちに手渡される。


「これがどうしたんですか?」

「これは去年度のものだ。そしてこのクラスの、この少年だ」

「………………」


 集合写真の一番後ろの端っこの方にぼーっとした表情で立っている少年を指さした藤波先生。なるほど去年の写真か。しかしおれにはこの生徒の見覚えがない。


 見たところ…………言い方は悪いが、ザ・陰キャっていう感じだ。長いボサボサの黒髪に黒縁眼鏡。表情はわずかに緩んでおり、今にも泣きそうな目をしている。なんか昔のおれを思い出すな……。


「名前はなんて言うんです?」

「月島翔太という。彼は現役のらいとのべる? 作家という話だ」


 なっ。おれはただちに反応してしまった。まさかそんな奴がうちの学校にいたとはな。驚きだぜ。


 なおこのタイミングで肩を跳ねさせたのはなにもおれだけではない。ハルも驚いたような目でこっちを見つめている。


「シリーズ累計百万部を超えているそうだ」

「そりゃすげーな」


 百万部だったらおれも目にしたことがあるだろうな。なんていう作品なのだろう。


「なんていうタイトルなんですか?」

「すまん。私はこういったモノに疎くてね。タイトルはよくわからなかった。若い人間の間ではあのようなモノが流行っているのだな」


 まぁそうなるか。なんかラノベ業界全体で長文タイトルは廃れる廃れる言っておきながら、結果的に長文タイトルが跋扈している現状何なんだろうな。結論長文は正義!


「こいつがどうしたんですか? サイン会でも開くんですか?」

「なかなか面白いジョークだな。だがそうだな、現状は逆だ。サイン会など開こうにも開けない状況にある」


「意味がわかりません」

「そうだろうな。まぁ焦るな。要するに不登校になった。いやなっている、といった方が正しい。今年の一月頃からだ」


 なるほど不登校か。でそれをおれたちにどうしろというのか。


「ふふ、なにをお前は不思議そうな顔をしている? わかっているのだろう。やることは一つだ。お前たち全員とは言わない。だが頼まれてはくれないだろうか。この少年は今年からうちのクラスなのだ。どうにか説得して――学校に連れてこい。それがミッションだ」


「ミッション、ねぇ。いや理解はできますけど納得はできませんよ」

「いーじゃんあすっちゃんやろうよー! なんかたのしそーじゃね? むしろおれたちうまくやれば感謝されて謝礼金とか貰えちゃうかもしんないよ?」


 サイテーだこいつ。おれはこいつだけは説得に連れて行かないと心に決めた。悪いな洋介。お前はお願いだから空気を読んでくれ。


「特例だ。住所を教えよう。本来は生徒の個人情報は機密に扱わねばならないのだが……やむを得ない事態だ。私も何度か彼の家に出向いたのだが、彼の精神を逆なでする結果となってしまった。すまない……」


 不器用なんだろうな……。我々はみんな知っている。藤波先生が不器用だってことを。


 去年もこの人おれたちの担任だったからな。


「頼めるか? 説得の方法は君達に任せよう。期日は……そうだな、四月いっぱいでどうだろう。新しい人間関係が構築され、固定されるのがちょうどその時期だと思うからな」


「わかりました。先生の言いたいことは充分にわかります。五月の中間試験には出させたいんですね?」


 おれは藤波先生に対して言った。ぎらりと、藤波教諭の目が光ったような気がしたが、おれは黙っていた。


「ちょっとなに言ってんの!? 正気!? いくらなんでもそれ先生に失礼じゃない!?」というネネの視線は無視する。


 藤波教諭は目を伏せた。


「なんのことだ。私はただ彼を五月の体育祭には参加させたいと思っているのだ。それ以上でも、それ以下でもない。そもそも青春の色など、それぞれが決めるモノだ。なにも教師が決めるモノではない。あとは若いお前たち同士で、つまり――友達同士で決めればいいことだ。そこに教師という不純物は入ってはいけない。違うかね?」


「一理ありますね。ケド責任を全部おれたちに押しつけておいてその言い分はないんじゃないですか?」


「ふふ……まぁそう思うか。だが責任はすべて私にあるのだよ。いつだってそうさ。私はお前たちを見守ることしかできないからね。一度きりの青春なんだ。手に入れたいモノは自分で決めなさい」


 藤波先生はすらすらと言い立てた。この人の遠い目は、一体いつの日の青春を移しているのだろうか。


 藤波先生はおそらく、月島翔太に中間試験を受けさせたい。


 受けさせないと、全教科零点になるからな。


 中学校ならまだしも、高校だからな。不登校児の扱いは、学校側はシビアになるだろう。


 最悪退学になった場合、教師、生徒どちらも得をしない結果となる。


 それを避けたいんだろうな。藤波先生は。


「情報が足りませんね。月島翔太くんが不登校になった理由を教えて貰えませんか?」

「いじめさ。ありきたりな理由だろう。それこそ教師が幾度となく目をつむってきた事象でもある」


「認めるんですね。あんた最低だ」


「ともかくだ。マルチアミューズ研究部という部活を知っているかね? その月島という少年はそこに所属していた。マルチアミューズ研究部というのは、いわゆるマンガ研究部よりもさらに幅広い分野のオタク専門の部活動といった感じだ。


 アニメの鑑賞会や、ティーンエイジ向けの小説作成など、その活動は多岐にわたっていた。


 そこで幅を利かせていたある女の子がいてね。女王様とでも呼ぼうか。彼らの言葉では『オタサーの姫』だったかな。彼女が今年の一月頃から執拗なまでに月島少年を攻撃し始めた。理由はなんてことはない。生理的嫌悪って奴だ。


 女というのはいつでも残酷な生き物なのさ。『なんとなく嫌い』がまかり通ってしまう、そう思い込んでいる」


 なるほど。だんだん話が見えてきた。つまり月島少年は今年の一月頃、そのオタサーの姫君から嫌われて、不登校になってしまったと。


 わからない話でもない。いやむしろ痛いほどわかる。年頃の男子が女子から嫌悪されるなど、これ以上ないほどの心の痛みだ。


 おれは似たような経験をしている。だからこそできることがあるような気がした。


「わかりました。協力しましょう」

「さっすが明日斗! 話わかる男だねっ! ようしじゃあ今日から早速その子の家に行こうよ!」


 元気よく返事をするハル。それに呼応するように、他の四人からも賛同の声が上がる。


「本当に、お前が話のわかる男で助かる。人助けをいとわないのは美徳だと、私は思うよ」


 この人の目を見る。本当にそう思っているのだろうか。いつもこの人からは嘘の匂いがした。嘘で塗り固めないと生きていけない人間特有の匂いというモノがある。


「頼んだよ未来の生徒会長。あぁそうそう、私の一存でお前を学級委員にしておいた。ちなみに女子の学級委員はお前だ国枝」

「ふえっ! マジ!? アタシやんの!? えーちょー緊張するー!」


 おれはさしたる感慨を抱かなかった。だって去年も同じだったからな。つまりおれとハルが学級委員だった。押しつけって言う言葉は意外と便利かも知れない。濫用禁止だぜ。


「アァお前たちなら何とかしてくれると思っている。ではな」


 そう言ったきり藤波先生は屋上から去って行ってしまった。取り残されたおれたちは、吹きすさぶ風のゴウンゴウンという音を聞きながら、その場に立ち尽くしていた。


 さすがにいきなり重すぎやしないだろうかこのミッション……

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