第68話
『世界のレベルアップから5年目に入ります。異界の成長限界が上昇しました。ですが、最上級以上の魔物は異界の外に出る事はありません。安心してください。5年後に備えて強くなってください。』
この声の持ち主が誰なのかは分からないが、また異界は成長する事が出来る様になった様だ。
だが、幸いにも異界が最上級の異界に成長したとしても最上級の魔物は地球側に出て来る事はないのは朗報だった。
でもそれは最上級以下の魔物は依然として異界から外に出てしまう事には変わらず、更に1度地球側へと出た魔物が最上級クラスの魔物に進化しないという訳ではない事だ。
異界の位が上昇すればするほどに異界で生まれる魔物は位が上がって強くなるが、それと同時に位が低い魔物の出現率は上昇する。
だからより異界の間引きを行なわないと魔物が多く異界の外に出てしまい兼ねない。
その為、俺はすぐに管理している異界の中にある柱の確認を行ないながら、今はゴーレムたちに部隊を組んで貰っている。
「ふぅ、今のところは無しだな。」
今現在、俺が管理している上級異界で成長して最上級異界へと姿を変えた異界は1つも無かった。
その事に安堵すると同時に成長させる異界の選定を行なう必要が出て来ており、これはゴーレム全体にアンケートを取る必要が出て来た様だ。
「マスター、出撃可能なゴーレムで部隊の編成が終わりました。」
「そうか。それならすぐに出入り口を開く。」
01ゴーレムが知らせてくれた通りに指定の空間には、それぞれ部隊ごとにゴーレムたちが分かれて待機していた。
その待機しているゴーレム部隊のそれぞれの前に今回の大規模な間引きを行なって貰う予定の上級異界に繋がる次元空間の出入り口を開いて向かってもらう。
「これで一先ずはなんとかなるか?」
「そうですね。一時的にですが異界から魔物が現れる事はないでしょう。ですが、マスター。成長させる予定の異界が多くなりませんか?」
確かに01ゴーレムの言う通り、日本国内の異界だけでなく、今現在で海外の管理している異界でも最上級異界に成長可能な状態の異界は多いのが現状だ。
それが一斉に最上級異界に変化すれば、今の様には異界の管理をする事が難しくなる可能性が高い。
「確かにそうだな。でも流石に上級異界のボスとの再戦に必要な時間が半年も掛かるのは長いからな。異界を成長させようと思えばここは踏ん張るところだと思うんだよ。それにお前たちならこれくらい乗り越えられるだろ?」
「なるほど、分かりました。確かにその通りですね。私たちも一層頑張らせて貰います。これは張り切らないといけませんね!」
信頼していると暗に込める様にして言えば、ゴーレム全体の統括をしながら秘書の様な事もしている01ゴーレムはやる気に満ちていた。
これでゴーレムたちもやる気になってくれるのなら良かった。他にこの声の影響で起きるだろう影響はないかを俺は01ゴーレムに聞いていく。
「それでしたら、地球の国々に売り渡した元拠点にある異界の確認をした方が宜しいかと思います。あれらの異界はボスの討伐も行なえていませんから。」
「最上級異界に成長して大量の魔物が異界の外に出て来ても困るからな。折角建てた防壁に穴を開けている馬鹿な国もあるし。本当に何を考えているんだろうな。魔物が現れた時に閉じ込める役割りもあるのに。」
幾つかの国では防壁の外の魔物も駆除して安全になったからと、折角建てた防壁を壊した国も多数ある。
流石に万が一魔物が異界から出た時に閉じ込める役割りがある事も伝えたが、こちらの話を聞いて防壁の解体を取り止める国もあった。
だが、民意に逆らえなかった国や独裁的な国に防壁を解体して防壁の素材を得る事を優先している国などが防壁を解体を行なっていた。
この防壁を失った異界からその国中に魔物が蔓延る事が予想されており、今回の最上級異界への成長が可能になった事で、かの予想は濃厚になっている。
01ゴーレムの助言もあり、まだ登録を外していない異界の柱を確認すれば、柱は真っ黒でいつ成長して最上級異界に姿を変えても可笑しくない状態だった。
「これの後始末って俺らがやらないといけないんだよな?」
「ほぼ100%そうでしょうね。こちらから警告は入れておきますか?」
「そうしてくれ。他にも何か問い合わせがないかの確認も頼む。」
「分かりました。」
諸々の確認の為に01ゴーレムが退出すると、俺は現在確認可能な次元空間の出入り口の登録を可能な限り調べていく。
そして調べている途中で成長している異界を発見した。
「はぁ、上級異界ばかり気にし過ぎたか。」
今回成長していたのは中級異界だった。この異界がある場所は海外で前に管理していた異界で、今回の騒動で成長してしまったのだろう。
前々から異界のボスの討伐を行なわないのは不自然だとは思っていたが、もしかしたら意図的に攻略せずに上級異界に成長させようとしていた可能性もある。
だが、この異界がある場所は比較的人が住むエリアに近い位置だ。そんな位置にある異界を上級異界にでもしようものなら、異界から魔物が溢れた際にかなり危険な事になるだろう。
それもこの異界の周りには本来あるはずの防壁も人の行き来を優先するあまり取り除かれており、このままだと攻略や魔物の間引きに失敗すれば、大量の魔物が人の多く住む街中に向かって行く可能性がかなり高いと思われる。
それからも様々な俯瞰視点の画面を確認して行き、幾らかの場所で問題が発生する可能性が高い場所があるが、それでもまだ大丈夫だろう。
だが必ず起こるだろう問題に対処する為の準備を俺は行ない始めていると01ゴーレムが戻って来た。
そして各国からの問い合わせもあった様だが、とりあえずはゴーレムたちだけで対応する事が可能なものばかりだった様だ。
「ゴーレムたちで対応可能なものは全て任せた。」
「はい。何かしらの問題があった場合はマスターに頼ります。それでは昼食の用意を行ないますね。」
「メニューは任せた。」
「分かりました。そう伝えて来ます。」
間引きが行なわれている俯瞰視点の画面を開いてゴーレム部隊の活躍を眺めながら、退出した01ゴーレムが調理用ゴーレムが作った昼食を持って来るのを待つのだった。
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