第54話

 「さっき間引きを始めたばかりだからな。その前に出て来たか。いま動かせるゴーレムはどれくらいあるか。」


 ほとんどの戦闘を任せているゴーレムは上級異界の攻略に向かわせている。その為、動かせるゴーレムは地球内の拠点防衛を任せているゴーレム部隊くらいだけだ。


 それだけのゴーレム部隊で上級異界から現れた魔物の内、異界から外へと出て来た数の少ない日本の管理異界なら現れた上級魔物の数も10を下回っているので問題ない。


 だが、海外の未攻略の異界から現れ続ける上級魔物たちのことを考えると、今後はかなり不味い状況になってしまうだろうと予測出来る。


 とりあえずは海外の事を考えるのは止めて、動かせるゴーレム部隊に日本国内にある管理異界から出現した上級魔物を全て倒しに向かわせる事にした。


 「よし、これでとりあえずは良いだろう。出来れば早く倒して欲しいが、上級の魔物、それも複数体を同時に相手にする事になるからな。無傷で倒して欲しいけど、無理だろうなぁ。はぁ……。」


 上級魔物とゴーレム部隊が戦う俯瞰視点の画面を開いて見ながら、俺は今のポイントでどれだけゴーレムを増やせるかを考える。


 「今のままだと増やせても1日に3機が限界か。ふぅ、ボーナスで保有可能なゴーレムの数が増えてよかった。それがなかったら、1日で増やせるゴーレムの数が1機だったからな。」


 1日に3機だけでも少しずつ増やしていけばポイントを手に入れるゴーレムも増えて加速度的に大量のポイント獲得が出来る様になるからな。


 下級異界や中級異界のボスが出現する柱が白色から黒色に完全に変わっている異界はないかを確認しながら、今後を考えると頭が痛くなってくる。


 「下級3、中級2か。これも攻略してこれ以上成長させない様にしないとな。下級なら1機でも充分か。それくらいなら動かせるゴーレムがないかを確認するか。」


 そうして確認していけば2機のゴーレムを動かすことが可能だと分かった。


 「2機だけか。このゴーレムたちに向かわせよう。これ慣れるまでのんびり過ごせそうにないな。はぁー。」


 溜め息を吐きながら動かす事が可能な空間内で活動していたゴーレムを呼び寄せると、俺はそのゴーレムたちに下級異界のボスを倒す様に命令を出した。


 そうして次元空間の出入り口を開いてゴーレムたちを見送ると、苦戦せずに倒せるだろうからゴーレムたちが倒すまで俯瞰視点の画面を残して置く。


 その間にも上級異界に成長した異界から現れた上級魔物の討伐を行なっているゴーレム部隊は苦戦せずに1匹倒し終わったところだった。


 「ここは出て来たのは1匹だけだからな。集団で攻撃すれば充分に余裕に倒せると思っていたけど、本当に余裕に倒していたな。」


 でも、次に送り込む異界周辺に現れた上級魔物の数は2匹だ。数が増えればそれだけ危険になる回数が増えるだろう。


 一応ゴーレム部隊のゴーレムボディや武装の耐久力を確認してから、俺はゴーレムたちを次の異界周辺へと向かわせる為に、偵察用の飛行系ゴーレムを利用して次元空間の出入り口を開いた。


 上級魔物2匹とゴーレム部隊が戦闘を開始した頃に、下級異界のボスを倒しに向かわせた2機のゴーレムたちがボス魔物を倒し終わっていた。


 「現れる魔物の強さは中級クラスだからな。上級素材でボディと武装を製造した2機のゴーレムなら余裕か。」


 宝箱とボス魔物からのドロップアイテムを受け取ると、俺は次の異界にゴーレムたちを向かわせた。


 2匹の上級魔物と戦っているゴーレム部隊の様子を確認すると、盾型武装を使用している大型ドールゴーレムたちが上級魔物をそれぞれ押さえ込んでいる様だ。


 「やっぱりギリギリか。」


 盾型武装を扱っている大型ドールゴーレムの数はゴーレム部隊の中で4機しか居らず、2機ずつに分かれて上級魔物を押さえ込んでいる。


 だが、これが1匹だけなら3機で交代しながらならば余裕に上級魔物を押さえ込めるが、2機だけだと負担が大きくなってしまっていた。


 このまま時間を掛ければそれだけ負担が増えてしまい、盾役のゴーレムが壊される確率が高くなってしまう。


 そんな激しい戦闘を見ている間にも下級異界のボスを2機のゴーレムは倒し終わっていた。


 「もう倒したのか。これなら残り1つの異界を攻略させたら、この2機をゴーレム部隊に向かわせて合流させよう。」


 最後の下級異界にゴーレムたちを向かわせると、俺は上級魔物と戦っているゴーレム部隊へと画面を変える。


 俺が下級異界のゴーレムたちを次の下級異界に向かわせている間に、その見てない間に上級魔物をあと少しで1匹倒せそうになっていた。


 「このまま行けば倒せそうだな。まだ油断は出来ないけど。」


 1機の大型ドールゴーレムが身の丈にあった盾型武装で上級魔物の1匹を一瞬だけ押さえ込むと、その隙を付いて前衛のゴーレムたちが一斉に攻撃を行ない、上級魔物を1匹倒し終わった。


 それからすぐにドロップアイテムも拾わないで、上級魔物を倒していたゴーレムたちはもう1匹と戦っているゴーレムたちに合流して、残りの上級魔物を集団で囲む様にして倒して行った。


 これで日本の管理異界から現れた上級魔物は残り1つの異界周辺だけになった。だが、この異界の外に出て来た上級魔物は3匹だ。


 その3匹の上級魔物は異界から出てから今まで異界に侵蝕された結果草原になった部分で草を食べているだけで暴れる様子はなかった。


 けれどそれも生えている草を食べ終わるまでの間だけだろう。10メートルを超える巨大な身体では異界周辺の草原の草だけでは足りそうにないが、食べ尽くしたらきっと異界を囲む様に出来た石壁を破壊して外に出て来てしまうに違いない。


 そして丁度、下級異界のボスを倒し終わったゴーレムたちが宝箱とドロップアイテムを抱えているのが視界に入り、俺はゴーレムたちを(上級魔物を倒していたゴーレム部隊も含めて)次元空間の中に戻して合流させる。


 そのまま上級魔物3匹の討伐に向かわせないで、俺はこの場に集まったゴーレムのゴーレムボディと武装の修理を行なうと、畑の空間で仕事をしているゴーレムたちを呼び寄せて、修理の終わったゴーレム部隊と合流させると上級魔物の討伐に向かわせた。


 戦闘可能なゴーレムの数が増えた事で畑の仕事に支障が出てしまったが、3匹の上級魔物を見事に討伐してゴーレムたちを帰還させる。


 そうしてゴーレム部隊全てを元の業務をする様に改めて命令を出すと、とりあえず今日は異界から魔物が出て来ないかの確認や上級異界を攻略しているゴーレム部隊の確認などをしながら過ごすのだった。

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