第47話

 それにしてもまさか未だに前線で戦う者たちのなかで、こんな風にゴーレムたちから戦果を奪おうとする者が現れるとは思いもしなかった。


 上級クラスの蟹の魔物のドロップアイテムを奪おうとする外国人部隊への対処はゴーレムたちに任せると命令を出した俺は、この場に居るゴーレムたちのゴーレムボディや武装の耐久のチェックを行なっていく。


 「1機以外はボディと武装も問題はないな。それにしても耐久度がかなり減ってるな。流石、上級の魔物だ。」


 強化を施した上級素材のゴーレムボディと鎧型武装の耐久はかなり減っており、すぐに修理するべきかどうか悩んでしまう。


 これからの戦闘に上級クラスの魔物が現れないのなら問題はない。だが、もし上級クラスの魔物が現れた場合はボディも武装も破壊されても可笑しくないからだ。


 「でもここはやっぱり戻して別のゴーレムを派遣するべきだな。何があるのか分からないし。」


 とりあえず耐久度が減っている蟹の魔物のハサミに挟まれたゴーレムを帰還させる為の準備を行なっている間に、横やりを行なうだけじゃなくて、上級クラスの蟹の魔物のドロップアイテムを奪おうとする外国人部隊への対処をゴーレムたちだけで終わらせていた。


 どうやらホワイトボードに文字を書いて対処していたが、外国人部隊は暴力でどうにかしようとした様で、逆にゴーレムたちに返り討ちになっていた。


 ズタボロの状態で沼地に転がっている外国人部隊を尻目に、俺は次元空間の出入り口を開いて、出撃準備を終わらせたゴーレムと耐久度の減ったゴーレムをお互いに情報交換させてから交代する。


 戻って来たゴーレムを、俺はすぐにゴーレムボディと武装を修理に出すと、予備のゴーレムボディと交換したゴーレムに休憩する様に命令を出すと、ゴーレムは了解したとジェスチャーを取って休憩しに向かった。


 ゴーレムが休憩に向かうのを見送り、俺は俯瞰視点を映す画面に視線を戻して確認すると、ゴーレムたちはロープで拘束した外国人部隊を連れて、この国の軍隊が拠点にしている場所に帰還する様だ。


 俺よりも喋れないがコミュニケーション能力が高いゴーレムたちなら、この国の軍隊が拠点にしている場所に戻ってからの対応も問題はないと思うが、一応問題はないかを確認する為に確認しておく。


 そうして基地に戻ったゴーレムたちが引き摺る者たちを見て、最初は基地の防衛を行なっていた軍人も驚いた様子をしていたが、ゴーレムがホワイトボードに何があったのかを書いて知らせると、軍人たちの表情が険しくなって行き、ロープで拘束されている外国人部隊を睨み付けていた。


 それから応援に駆け付けた軍人たちが拘束されていた外国人部隊に手錠を付けたりと、拘束をより強化して行き、そのまま拘束されたまま連行されて行く。


 これからあの外国人部隊がどうなるのかをゴーレムに聞く様に命令を出すと、どうやら更に過酷な戦場に送られる様だ。


 それも囮など危険が多い役割を行なわせるそうで、十中八九あの外国人部隊は死ぬことになるだろう。


 俺が聞きたかった外国人部隊の末路の確認が終わると、ゴーレムたちは再び蟹の魔物が現れて異界に侵食されて出来た沼地へと向かって行く。


 沼地へと向かったゴーレムたちが沼地に入って行って蟹の魔物との戦闘を開始してから倒すまでを観戦すると、遭遇した中級クラスの蟹の魔物を倒した事で、この場所で活動するゴーレムたちはもう問題ないと、俺は他の場所も確認して行った。


 海外で活動しているゴーレムたちの様子を見て行き、他の異界に侵食された魔物の棲家を攻略しているゴーレムたちも問題なさそうだ。


 「最初に確認したところだけが、今のところ問題が起こった場所だったな。」


 ピンポイントで1番最初にそんな場所を選んだ事が不運だったのか、それともゴーレムたちが外国人部隊に攻撃されるのを確認する事が出来て、すぐにゴーレムを交代させる事が出来た事が幸運だったのかは分からない。


 とりあえず海外に派遣したゴーレムたちは、今日は異界攻略する事はないそうなので、俺は日本で活動するゴーレムたちに俯瞰視点の画面を変えていくその前に、上級クラスの蟹の魔物からドロップしたアイテムを素材生成に登録する。


 「上級素材の蟹の甲殻は初めてだからな。確実に登録する事は可能だろ。出来れば、食用の蟹の身がドロップしてくれたら、上級の蟹が食べれたのにな。」


 そして、思った通りに素材生成の登録を行なうと、上級甲殻に蜂以外に蟹が追加されるのを確認する。


 蟹の身がドロップしなかった事を残念に思いながら、俺は今度こそ日本で活動しているゴーレムの俯瞰視点に切り替える。


 海外に派遣したゴーレムたちも活躍する中で、日本では中級異界で魔物の間引きを行なっているゴーレムたちの俯瞰視点の画面から様子を確認していく。


 「中級異界の間引きしているのか、それなら問題なさそうだな。成長させている異界以外にボス攻略が出来る異界は今のところ日本にはないし。」


 間引きを行なっている中級異界に現れる魔物は蟷螂の魔物だ。下級の蟷螂の魔物は1メートルサイズだったが、中級の蟷螂の魔物だと大きさが2メートルにもなっている。


 その鎌から繰り出される斬撃は50センチを越える木の幹すらも両断するほどの切れ味と威力を誇るが、ゴーレムたちのゴーレムボディや鎧型武装に中級の蟷螂の魔物が行なう攻撃が命中してもダメージはそこまでない。


 だから安心して観戦する事が出来るが、緊張感のない一方的な戦闘になる事もそれなりに多くて若干飽きてくる。


 やっぱり上級クラスの魔物や中級異界のボスの魔物との戦いでないと、すぐに飽きてしまうのは強い魔物との戦いの方が見応えがあるからだろう。


 「もうここはいいかな。次に行こう。」


 蟷螂の魔物が現れる異界の観戦から他の異界の確認を俺は行なって、すぐに俯瞰視点の画面を切り替えていく。


 それから次元空間の外で活動しているゴーレムたちの様子の確認を終えた俺は午前中に行なうべき事を終えた。


 午前中にやる事を終えた俺は、午後までの間は自由時間になり、調理担当のゴーレムが昼食を持って来るまでの間、緊急の用件がない限りはのんびりと自由時間を満喫しながら過ごしていくのだった。

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