第46話

 もっと次元空間内の空間を拡張して畑を広げれば、野菜や果物などはもっと作ることが出来るが、それをすると畑を管理するゴーレムを増やさないといけないから、他のところに回せるゴーレムが少なくなってしまう。その為、店舗の拡大は誰かに頼まれても今のところはする事が出来ないのだ。


 そうして日本国内の店舗の様子をゴーレムを介して確認する事が終わると、次は海外に派遣されているゴーレムたちの様子を確認していく。


 日本の近隣国は派遣したゴーレムやゴーレムが販売している商品を権力や暴力などを利用して奪い取ろうとした為、近隣国のほとんどはゴーレムを現在は派遣していない。


 そんな近隣諸国とは違って暴力で奪おうとはするものの、ゴーレムたちが反撃してもそれほどとやかく言わずにいる国々に派遣しているゴーレムたちの様子は今のところは大丈夫の様だ。


 それにゴーレムたちから奪おうとした者たちの様子を見た人たちが、そんな奪おうとする馬鹿な真似をする人たちを目撃している為、ゴーレムたちの反撃がどれほどに凄いのかを分からせたからか、最近では襲撃もほとんどない。


 「開店したばかりだからな。人も多いし、もし馬鹿な真似をする人が居ても、周囲の人たちにやられるだけだろう。」


 海外の店舗の様子を確認し終わると、次に海外に派遣したゴーレムたちが参戦した戦線の状況を確認した。


 今日は店舗経営に回しているゴーレムも居るが、店舗経営しているゴーレムも店舗を開く日ではない定休日は、戦闘用ゴーレムたちと一緒に襲って来る魔物の群れの襲撃を抑えて異界周辺の攻略を行なっている。


 そうして海外の国々に派遣したゴーレムたちのほとんどは2、3箇所の異界周辺の攻略を終わらせており、異界自体も多くの人が暮らしている付近にある異界の攻略をゴーレムたちとその国の軍隊や探索者と共に4つほど終わらせた。


 だがやはり、他国のそれも自分たちよりも強いゴーレムに対して否定的な者も多く、そのせいでそこまでゴーレムたちを動員して攻略が出来ていない為、それほど多くの異界を攻略する事が出来ていないのが現状だ。


 それに足手纏いをゴーレムたちが庇ったりしたせいで、効率的に異界を攻略する事が出来ないのも、派遣後の異界攻略数が少ない原因になっている。


 はっきり言ってゴーレムたちだけなら、異界の中の探索でも休まずに進める為、休憩で無駄な時間を使わずに済むし、せっかく異界を攻略しても一緒に来た足手纏いたちにも渡さないといけないせいで攻略報酬が減ってしまって、俺やゴーレムたちに取っても良い事はない。


 それでもその国の軍隊や探索者を連れて行かないと、異界の攻略を禁止されている為、仕方がないと諦めている。


 そんな異界攻略や異界周辺の魔物狩りを行なっているゴーレムたちの様子を確認すると、ちょうど上級クラスと思われる魔物との戦闘が起こっていた。


 「それにしても外国だと上級の魔物が多過ぎないか?」


 上級クラスの魔物が現れる条件は中級クラスの魔物の魔物石の大量摂取しかない。その為、海外だと魔物が未だに異界の外に出て来るうえに、その魔物たちが別の種族の魔物たちと殺し合いを行ない、その殺した魔物から魔物石を捕食して上級クラスの魔物へと変わって行っているのだろう。


 だからといってここまで上級クラスの魔物が異界周辺の棲家に居るとなると、このまま異界が成長を続けて上級異界が現れて異界から外に上級クラスの魔物が出て来る様になった頃には、いま上級クラスの魔物が最上級クラスの魔物になっていそうだ。


 「はぁ、やっぱり上級素材を使った装備アイテムやポーションも売った方が良いのか、でも下手に売ると、売った装備アイテムを使ってゴーレムの排除や奪い取ろうとする組織や国も出て来かねないからな。」


 こんな事を考えなくて良かった、ただゴーレムを異界に送るだけだった頃が懐かしくなってしまう。


 俺が頭を悩ませている間にも、上級クラスの魔物をゴーレムたちが連携しながら相手をしていた。


 いまゴーレムたちが相手をしている魔物は大型の蟹の魔物だ。ハサミを広げないでも3メートルを超えるほどの大きさの蟹の魔物の攻撃を3機のゴーレムが盾型武装で押さえ込んでいる。


 左右のハサミを1機ずつで押さえ付け、1機は蟹の魔物の口部分から放たれる破裂する泡の対処を行なっているなか、他のゴーレムたちが蟹の魔物の足の関節を狙って、蟹の魔物が動けない様にする為に移動手段を潰していく。


 1本、2本と次々に蟹の魔物の足の関節を攻撃する事で足自体を破壊していると、蟹の魔物は押さえ付けられたハサミを無理矢理に振り解こうとした時、ゴーレムたちの援護しようとしたのか、それともゴーレムたちだけに手柄を渡させまいとしたのか分からないが、外国人部隊がゴーレムたちが戦っている蟹の魔物を攻撃し始めた。


 ゴーレムが経営している店舗で売られている属性魔法の玉を放つ魔法杖を使用して、外国人部隊の者たちから様々な属性魔法を放たれる。


 その内、狙いが甘い者たちも複数人おり、そのせいで蟹の魔物のハサミを押さえていたゴーレムに被害が出る。


 「ちっ、余計な事をしやがって!!」


 舌打ちしながら状況を確認する。背中から魔法攻撃を受けたゴーレムがバランスを崩してしまい、押さえ付けていた蟹の魔物のハサミが拘束から逃れてしまった。


 そうして拘束から逃れた蟹の魔物のハサミが、先ほどまで拘束していたゴーレムを挟み込む。


 挟まれたゴーレムは上級素材でボディと武装の鎧型武装を製造している為、すぐに破壊される心配はないが、それでもこのまま時間が経てば、挟まれたゴーレムは破壊されてしまうだろう。


 「本当に余計なことをしてくれたよ。お前らの装備で上級の魔物に満足にダメージを与えられる訳ないだろうが!」


 未だにゴーレムにも当たるのにも関わらずに攻撃している連中に苛立ちながらも、捨て身覚悟で動いたゴーレムの1機が蟹の魔物の口内に槍型武装を深々と突き刺して、上級クラスの蟹の魔物の討伐は終わった。


 上級クラスの蟹の魔物が倒されても、まだ他の場所では中級クラスや下級クラスの蟹の魔物が暴れている為、本来ならゴーレムたちも駆け付けないといけないが、その前に図々しくも先ほど倒した上級クラスの蟹の魔物のドロップアイテムをゴーレムたちから奪おうとして来たのだ。

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