第42話

 そんな自衛隊員たちやゴーレムたちを見に来ていた民間人や探索者たちが次元空間の出入り口を警戒するなか、開いている次元空間の出入り口からリヤカーを引いた新しいゴーレムが現れる。


 現れたゴーレムと交代で空になったリヤカーを引いてゴーレムが戻ると、再びリヤカーに積んだ装備アイテムやポーションを今度は自衛隊員だけじゃなくて探索者たちにも売りたいと、ホワイトボードに書かせて自衛隊員に見せる様にゴーレムに命令を出した。


 俺の命令を聞いたゴーレムは文字を書いたホワイトボードを自衛隊員に見せると、何やら苦笑いをしながら探索者の様な民間人たちにもゴーレムたちが製作した装備アイテムやポーションを売り始める。


 音声で知らせる事が出来ないのは商売するのに致命的な部分があるのだろうが、それでも自衛隊員たちが購入する姿を見ていたからか、リヤカーに乗せたアイテムの多くが売られて行き、最終的に残っていた物も自衛隊員が購入して、この日の売買は終わるのだった。


 そうして2台目のリヤカーの商品も全て売れた事に喜んだが、それよりも今現在に多くの戦線がある場所を自衛隊員から教えて貰えたのは良かった。


 これで明日にはかなりの範囲で戦っている自衛隊員や探索者たちへと、装備アイテムやポーションを売りに行けるだろう。


 午前中だけでリヤカー2台分の装備アイテムやポーションが売れた事で、かなりの量の魔物石やドロップアイテムが手に入った。


 どれも既存のドロップアイテムな為、このドロップアイテムを使って素材生成の登録は出来ないが、それでもこれだけの量があれば大量の素材を生成する事が可能になる。


 上級素材で作られた装備アイテムやポーションを制作しても、流石に上級のアイテムは売らない。


 でも中級素材で作られた装備アイテムやポーションなら、自衛隊員や探索者に取って貴重過ぎる様で、俺としては安く感じるが、向こう側からしたらボス魔物を倒さないと手に入らない装備アイテムやポーションが手に入るのは嬉しいそうだ。


 もちろん下級素材で作られた装備アイテムやポーションもゴーレムたちには製作して貰うが、強奪を目論む者も居なかったお陰で、今回の売買では俺に取ってプラスだろう。



 そして翌日、昨日の時に教えて貰った自衛隊員や探索者たちが戦っている戦線に近い位置の自衛隊の拠点へと中型蜂ゴーレムを使って向かわせる。


 そうして向かわせた先で中型蜂ゴーレムたちは警戒されて攻撃を受けたりもするなか、近くに次元空間の出入り口を開いてそこからまずは護衛役のゴーレムたちが外に出て来た。


 盾型武装を構える事でいつ攻撃が来ても構わない様にした護衛役のゴーレムたちの後に続いて、リヤカーを引いた商売用のゴーレムが次元空間の出入り口から現れる。


 ここで中型蜂ゴーレムが商売をしてくれる者たちの仲間なのだと気が付いた様で、話の分かる自衛隊員や探索者が居る地域では謝られてからリヤカーの商品をゴーレムたちは売り始めた。


 どこもゴーレムたちの商売が始まると、最初の頃は自衛隊員たちが購入していくが、商品の数が少なくなり始めると、探索者たちも商品を購入しようと集まり出して、自衛隊員と探索者の争奪戦になるほど売れ行きがどこの自衛隊の拠点でも良かった。


 こうして素材生成で生成した素材を使ってゴーレムたちが装備アイテムやポーションを作り、それをドロップアイテムや魔物石と交換で売るというシステムは、俺としては充分に利益が出て良い事尽くめだ。


 これで、この商売で集めた魔物石やドロップアイテムを使って上級素材を生成して、戦闘用のゴーレムたちのゴーレムボディや武装を上級に変えられるだろう。


 1週間に1度のペースで自衛隊の拠点でのゴーレムが作った商品の売買を行ない、それ以外の日は売るための商品を製作するゴーレム部隊と異界で戦闘するゴーレム部隊に拠点製作のゴーレム部隊と分けて行動させている。


 ゴーレムたちが自衛隊の拠点で商品の売買をしてから、魔物たちとの戦いで犠牲になる者が減ったと自衛隊員や探索者たちだけではなく、テレビのニュースでも流されていた。


 これでゴーレムたちの知名度が更に上がってしまい、今後のゴーレムたちの行動はより注目されると思う。


 そうして更に数ヶ月経って行き、日本全土の異界に次元空間の出入り口の登録を済ませた頃、ゴーレムたちが行なっている商売の客層はがらりと変わっていた。


 もちろん自衛隊員や探索者も利用しているが、今は子供や主婦などもこのゴーレムの商品を購入し始めている。


 何故なら次元空間の空間の中には農業を行なう為の空間が4つあり、そこから育てて採取した野菜や地球産の鶏の卵やゴーレムたちが製作したお菓子などが売り始めているからだ。


 この野菜や鶏の卵にゴーレムが作ったお菓子などを売ろうとゴーレムたちが自主的に考えて、俺にプレゼンを行ない俺が許可した結果、ゴーレムたちの商売として売られている。


 これらの装備アイテムやポーションなどの素材生成を使って生成した素材を使って作った物とは違い、次元空間の空間の中で作られた農作物などは日本円を使った商売になっており、売られている場所も前線よりも離れた場所の自衛隊の拠点や警察署前などでゴーレムたちが商売を行なっていた。


 日本円での商売をすれば、それだけ俺が消費しない日本円が貯まる事になり、経済的に良いことはないからと頭を悩ませる事にもなっていたが、それはゴーレムたちに欲しい物を聞いて、それを名簿としてまとめて信頼の置ける自衛隊員に日本円と一緒に渡すことで購入して貰う事で貯まり始めていた日本円を消費する事が出来た。


 そうやって商売をゴーレムたちは行なっているが、もちろんここまでの間にトラブルは多かった。


 売られている商品を強奪しようとする物や権力を使ってゴーレム自体を従わせようとする者など、厄介度は違うがトラブルが多数あるなかで、こうやってゴーレムたちが商売している姿は俯瞰視点で見ていただけの俺としても少し感動があったりもする。


 そんな風にゴーレムたちが1週間に1度のペースで行なわれる中で、複数の特別緊急地域が重なり合った土地で作っているゴーレムたちの地球での拠点の方でも大きな変化が行なっていた。

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