第37話

 中型蜂ゴーレムたちが逃げ出した兎の魔物を倒していくが、それが目に付いたのか、中型蜂ゴーレムを狙って牛の魔物が突撃して来るのが画面に映った。


 そんな牛の魔物の突進を兎の魔物を抱えたままで、中型蜂ゴーレムは上空に飛び去る事で回避してみせた。


 もちろん中型蜂ゴーレムが抱えている兎の魔物は抵抗の為に暴れるが、そんな兎の魔物に毒針を突き刺して中型蜂ゴーレムは黙らせて殺した。


 そして抱えたままで殺した兎の魔物を牛の魔物の上で投下すると、ぐったりと動かない兎の魔物が牛の魔物に直撃する。


 それだけじゃ牛の魔物は死なないが、それでもかなり高い上空から落下した兎の魔物の重さと高さからくるダメージで、牛の魔物は膝を折って地面で藻搔いていた。


 そこを狙って急降下した中型蜂ゴーレムに噛み付かれながら、その腹の先にある毒針が牛の魔物の首筋に突き刺さる。


 その後少しして毒が回った牛の魔物は死ぬ事になるが、それを見る事なく中型蜂ゴーレムは次の獲物を狙う為に上空へと戻って行った。


 そんな事を繰り返される戦場だったが、上空からの攻撃への対処があまりない牛の魔物では一方的に攻撃されるだけになってしまい、兎の魔物を排除しようしていた牛の魔物たちは異界の周辺まで撤退して行く。


 撤退して行く牛の魔物を執拗に襲っていく中型蜂ゴーレムたちの追撃に、牛の魔物は数を減らして行くが、自分たちの縄張りに入っているのが気に入らない牛の魔物の上位種たちが異界の周りからこちらへとやって来る。


 真っ赤な色をした皮膚を持つ牛の魔物3匹がやって来ると、その赤い牛の魔物は上空を飛んでいる中型蜂ゴーレムたちへと炎を口から吐き出して来た。


 「うわ、牛なのにこんな事をして来るのかよ。」


 炎を吐く牛の魔物の姿に唖然とする。こんな不可思議な攻撃をする牛が居るとは思わなかったからだ。


 中型蜂ゴーレムたちはこんな攻撃を行なって来る牛の魔物をどうやって攻略するのか見ていると、どうやら複数で1匹ずつ倒していくことを決めたみたいだ。


 3匹の牛の魔物が炎を吹くのを止めたタイミングで、中型蜂ゴーレムたちは1匹に付き5機で襲い掛かる。


 そうしてチクチクと赤い牛の魔物へと噛み付きや毒針を突き刺して攻撃して行き、5回目には牛の魔物も毒が身体に回って耐え切れなかったのか、赤い牛の魔物は草原に倒れるのだった。


 3匹ともが地面に倒れて死んだ事を確認する様に命令を出すと、俺は中型蜂ゴーレムたちに赤い牛の魔物のドロップアイテムを回収する様に命令を出した。


 「もしかしたら、あの赤い牛の魔物から手に入ったアイテムから火属性に関係する武装が製造可能かもな。まあ、それは持って来て貰ってからだな。」


 赤い牛の魔物が居た場所に出来た砂の山から中型蜂ゴーレムたちはドロップアイテムを探していく。


 そうして中型蜂ゴーレムたちが持って来た赤い牛の魔物のドロップアイテムは2つあり、その1つは火炎袋と言うアイテムで、もう1つは真っ赤な皮だった。


 どちらも受け取って素材生成の登録が可能だった為、すぐに登録をすると、どちらも中級の素材の様だ。


 この2つの素材で何が製造することが可能なのかを調べると、どうやらポイント消費は多いが火炎放射器型武装を製造する事が可能で、皮の素材は火属性耐性の武装を製造する事が出来ると分かった。


 「まあどっちにしてもポイントの消費が高くて製造までは出来そうにないな。」


 火炎放射器型武装を製造する事が可能な様にするのに必要なポイントが高い事から諦めて、中型蜂ゴーレムたちには上空に作った次元空間の出入り口を通って外に出て貰った。


 それから牛の魔物の異界の周辺の牛の魔物を中型蜂ゴーレムたちが倒していく姿を眺めていると、何処まで兎の魔物の拠点にしていた場所の建築が終わったのかを確認する。


 「ここまで建築が早いのか。」


 事前に大量に石材を素材生成で作っていたが、その大量の石材を使って高さがそこそこの石壁が作られていた。


 このまま順調に進めば1日で2メートルほどの高さの石壁が作られるだろう。それに効率が更に良くなればもっと速い速度で建築が進むと思う。


 「さてと、画面を戻すか。」


 中型蜂ゴーレムたちを映す俯瞰視点の画面に戻すと、そこには炎を吐く牛の魔物の大群に襲われている場面だった。


 「これ大丈夫なのか?」


 赤い牛の魔物の数は10匹を超えており、更にこの赤い牛の魔物は順番に火を吹いているせいで、中型蜂ゴーレムたちが攻撃するのに躊躇っている様子だ。


 「火吹き牛に集中しないで、ここは他の牛の魔物を狙う様に命令を出すべきかな。」


 炎を吹いている赤い牛の魔物を狙う中型蜂ゴーレムたちに、俺は新しい命令を出した。


 すると、命令通りに中型蜂ゴーレムたちは動き出すが、赤い牛の魔物も中型蜂ゴーレムたちを追って行動する。


 他の牛の魔物を狙う中型蜂ゴーレムを赤い牛の魔物が追って行き、それが続いて行くが徐々にだが、中型蜂ゴーレムたちが追っている牛の魔物の背後にたどり着く。


 追い付いた牛の魔物の背中に張り付いて、中型蜂ゴーレムたちは毒針を突き刺すと、すぐに中型蜂ゴーレムたちは再び上空へと飛び立った。


 激しい運動をしているお陰で牛の魔物に注入された毒が牛の魔物の身体に回って行き、牛の魔物の走る移動スピードが落ちて赤い牛の魔物の吹いた炎が毒で弱った牛の魔物を焼いていく。


 焼かれた牛の魔物はそれほど時間が経たずに死んでしまい、その牛の魔物の亡骸が赤い牛の魔物の進行方向にあるせいで一時的にだが障害物になる。


 そんな事の繰り返しで牛の魔物の異界の周辺に居た赤い牛の魔物以外の牛の魔物たちは数を減らして行き、最後にこの場所には赤い牛の魔物たちと中型蜂ゴーレムたちだけになった。


 「はぁ、ドロップアイテムの回収は出来そうにないな。仕方ない、諦めるか。」


 中型蜂ゴーレムたちに撤退の命令を出すと、赤い牛の魔物の吐く炎が届かない位置まで上空に上がって貰うと、上空から赤い牛の魔物がどんな行動を取るのかを監視して貰う。


 もちろんその時に赤い牛の魔物に隙が出来たら攻撃する様にも命令を出したが、結局は赤い牛の魔物たちに大きな隙が出なくて、赤い牛の魔物を全て倒すことは出来なかった。

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