第36話

 小型犬ゴーレムたちを兎の魔物の巣穴に向かわせてから1時間経つが、かなり大量の兎の魔物が巣穴に居た様で、小型犬ゴーレムたちの侵入に驚いてかなりの量の兎の魔物が外へと逃げ出して来ていた。


 そんな兎の魔物を外で巣穴を見張っていたゴーレムたちが駆除するかの様に倒して行くが、小型犬ゴーレムが巣穴の外に出て、まだ兎の魔物は巣穴に居るのかを確認すると、どうやらまだ居ると小型犬ゴーレムから情報を得たゴーレムがジェスチャーで教えてくれた。


 「やっぱり全てを倒し切るのは難しいか。それなら巣穴から出ないと死ぬ事になる様に罠を仕掛けるべきだな。」


 一度小型犬ゴーレム以外のゴーレムを帰還させると、俺はゴーレムたちに大量の油と素材生成で生成した下級草の枯れ草を生成して持っていて貰う。


 兎の魔物の巣穴がある草原にゴーレムたちを向かわせると、そこで枯れ草に油をかけさせると、小型犬ゴーレムたちに油の付着した枯れ草を兎の魔物の巣穴の中に敷き詰めさせる。


 そして全ての枯れ草を兎の魔物の巣穴に仕掛けさせると、小型犬ゴーレムたちが外に全て出たのを確認してから、魔法杖型武装を持つゴーレムの内、火魔法を放てる魔法杖型武装を持つゴーレムが兎の魔物の巣穴へと火魔法を放ってもらう。


 そうすると、巣穴へ火の玉が入り込んで行き、兎の魔物の巣穴の中の枯れ草に火の玉が当たり、火の付いた枯れ草から他の枯れ草へと火はどんどんと移って行き、兎の魔物の巣穴に仕掛けられた枯れ草全てに引火する。


 兎の魔物の巣穴から煙が立ち込めると、勢いよく兎の魔物が次々と飛び出て来る事態になった。


 「ここで兎の魔物を全匹倒すんだ!!」


 本当にどこに居たんだと言うほどに巣穴から飛び出て来る兎の魔物を倒す為に、俺はゴーレムたちに命令を出した。


 その命令に従ってゴーレムたちは兎の魔物を倒して行くが、自分たちの巣穴に戻る事が出来ない兎の魔物の行動パターンは2つだ。


 1つ目はゴーレムたちを倒しに向かう。2つ目はゴーレムたちを無視してそのまま背を向けて逃げ出すかの2択の行動をする。


 どちらにしても兎の魔物の未来は明るくはないだろう。


 1つ目を選べばゴーレムたちに殺されてしまい、2つ目を選んでも自分たちの棲家や安定した食事を取れる場所を失って他の魔物にも襲われる事になると思われる。


 そうして襲って来る全ての兎の魔物を倒したのを確認すると、俺は逃げ出した兎の魔物の追撃をしようとしたゴーレムたちを止めた。


 「とりあえずこの周りに兎の魔物はもう居ないだろうから、全ゴーレムで巣穴の穴を潰してくれ。煙が出ている今のうちに穴の位置は確認しておけよ。ドール型のゴーレムは巣穴を潰す為の道具を取りに来てくれよ。」


 次元空間の入り口を作り出すと、ドール型のゴーレムたちは入り口を通って戻って来る。


 そんなゴーレムたちに兎の魔物の棲家である巣穴を潰して貰う為に、スコップなどの道具だけじゃなくて重機なども持って行かせた。


 そうして兎の魔物を草原から追い払って1時間が過ぎた頃に、草原や小高い丘の下にあった兎の魔物の巣穴は完全に塞ぐ事に成功する。


 これでもし逃げ出した兎の魔物たちが戻って来ても、再び巣穴を利用して隠れ潜む事は出来ないだろう。


 あとは異界に侵食されて出来た草原を囲む様に壁を作って、誰にも侵入させない様にすれば、今回の目的の1つが達成する事が出来る。


 その為の道具もまたゴーレムたちに次元空間の中から取りに向かわせると、ゴーレムたちはこれまで得た様々な知識から草原を囲う様に壁の建築を始めた。


 ここまでくれば、あとはゴーレムたちが壁の建設をするだけなので、俺は少し早いが昼食の用意を始めて食べる事にした。


 それから素材生成で作り出した大量の石材を使って壁を作る作業を見ながら昼食を終えると、あまりにも何もなくて暇になった為、中型蜂ゴーレムたちに新しい命令を出す事にした。


 「この近くにある異界の1つに向かってくれ。どこでも好きな場所で構わないぞ。」


 俺がそう命令を出すと、中型蜂ゴーレムたちはすぐに動き出した。


 集団で飛行する20機の中型蜂ゴーレムたちは、そのまま俺の命令を聞いた通りに飛んで行き、ここから1番近い位置の異界へと向かって行った。


 変わり映えしない建築作業を行なうゴーレムたちから、これから戦闘を行なう中型蜂ゴーレムたちへと俯瞰視点の画面を変える。


 「ここから1番近い異界は牛の魔物の異界だったか。」


 兎の魔物の異界の周辺と同じ様に草原が広がっている牛の魔物の異界周辺には、呑気に牛の魔物たちが傘を食んでいた。


 「ん?ゴーレムたちから逃げ出した兎の魔物か?あれは。」


 牛の魔物の異界に侵食されて出来た草原の1番端っこで、兎の魔物たちが草を食べていた。


 若干毛並みに焦げている個体の兎の魔物も居る事から、あの兎の魔物たちはゴーレムたちから逃亡した兎の魔物だと思われる。


 そんな兎の魔物たちをどうやら牛の魔物は敵視しており、集団で包囲する様に兎の魔物たちを囲み始めていた。


 それを見て俺は中型蜂ゴーレムたちに攻撃を中止させて様子見をする様に命令を出す。


 「さて、牛の魔物たちは兎の魔物たちにどんな風に攻撃をするのかな?」


 上空からの俯瞰視点で見ていると、兎の魔物たちも牛の魔物たちの行動に気が付いている様だ。


 その為、兎の魔物たちはその場から逃げ出そうと始めるが、その前に牛の魔物たちが行なった包囲網が完全ではなくても作られていた。


 兎の魔物が逃げ出さない様に包囲した牛の魔物たちが一斉に包囲網を縮めていく。


 そうして包囲網がどんどんと縮まると、兎の魔物の逃げ場は無くなって行き、兎の魔物たちは一点突破を試み始める。


 一斉に一ヶ所を目指して走り始めた兎の魔物たちだったが、そんな兎の魔物たちに向かって兎の魔物たちの進行方向の牛の魔物たちも一斉に走り出した。


 「あ〜これは逃げ切れる兎の魔物は少ないだろうな。」


 2段構えで突撃する牛の魔物の行動に対して、牛の魔物に対して跳躍して回避しようとした兎の魔物たちもその後ろの牛の魔物の突撃で跳ね飛ばされていた。


 それを見て俺は中型蜂ゴーレムたちに逃げ切れそうな兎の魔物と瀕死で動けない兎の魔物を倒す様に命令を出すのだった。

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