30 一休宗純
「そうか……そうか。そうか」
弟はぎゅっと拳を握りしめて、
「おれは負けないからな。ちゃんと高校出て、カメラの専門学校に行くんだ。そんで、ホンモノの写真家になるんだ。いやもう写真家なのか?」
「写真家は名乗れなくてもカメラ小僧くらいは言っていいかもね」
「カメラ小僧か。一休さんみたいなもんか?」
「いや僧の部分しか合ってない。だいたいあんた令和の小学生でしょ、どこで一休さんなんてレトロなアニメ覚えたの」
「一休宗純は破戒僧みたいな人だったんだろ?」
なんで小学生がそんなことを知っているのか。
弟はどこで覚えたのか知らないが一休さんのエンディングテーマを口ずさみながらシャワーを浴びて、寝間着を着て寝てしまった。
ちょっと待て、親父殿のところに行くということはお弁当が必要なんじゃないのか。お弁当のおかずにするような冷食はないぞ。どうしたものだろう。
もう遅いし明日にしようかと思ったが、相手の都合もあるのでギリギリ起きているだろうと二代目に連絡する。即で返事がきた。
「気にしなくていいぞー。うちでなんか食べさせるから」
ほっと安心する。
次の朝、弟は家庭科で作ったドラゴン柄のナップザックに、なんだかんだ大事にしているコンデジなんかを押し込み、るんるんとシリアルを食べ、るんるんと出かけようとした。
「ちょっと待って。一緒に行こう」
「なんでだ?」
「礼儀ってものがあるでしょうよ」
弟が納得したので、二人で家を出た。すると、ゴブリンさんが血相を変えて走ってきた。
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