殺人鬼のモノローグ①
殺人鬼のモノローグ① 1
この時のために、いやこの日のために、どれだけの労力を積み上げてきたことか。今はとりあえず、第一段階を突破できた喜びで叫びたい気分だ。もちろん、そんなことをしてしまったら全てが台無しになるから黙っているが。
思ったよりもうまく行っている。行き当たりばったりな部分もないとは言い切れないが、今のところ思い通りになってくれている。
ただ、彼らに合わさねばならないから、いつものリズムが崩れている自覚がある。昼寝をしなかったのは久方ぶりだ。もっと眠くなるのかと思ったのだが、人を1人殺したという事実があるからなのか、それに対して高揚感のようなものがあるのか、不思議と眠たくはならなかった。やるべきことをなさねばならないのだ。体が自分の覚悟を理解してくれているのだろう。
しかし、まだ気を緩めてはならない。数多くある試練のうちのひとつを乗り越えただけだ。まだ生きていることが許されざる人間はいるし、裁きを受けるべき人間も多い。
絶海の孤島。電話は使えないし、助けを呼ぶこともできない。そして極めつけは嵐。何人たりとも逃さないという自分の覚悟を、まるで自然までもが汲み取ってくれているかのようだ。
きっと、この数日でいくつもの命が失われることになるだろう。巻き込んでしまう者だって出るに違いない。しかしながら、これは仕方のないことなのだと思う。何かを成し遂げるためには、必ず犠牲はつきものなのだ。
まだ続く。まだまだ惨劇の夜は始まったばかりだ。ゆえに、気づかれてはならない。自分が殺人鬼だということを。あの女を殺害した罪人だということを。
――悟られるな。気づかれるな。全てが成就する、その時まで。
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