掌編400字・足首

柴田 康美

第1話 足首 

 わたしは足首だ。わたしを知らないひとはいない。足の平から少しうえの超合金部品だ。なかなか精巧なもので故障したばあいは町の修理工場では直せない。わたしが機能しなければスケートはおろか歩くことさえできない。この機能を利用して軽くスキップしながら飲みにゆくとこの町ではオモロなるものがでてくる。豚足である。精力をつける食としてもてはやされる。夜な夜なオートレースの選手が食べにくるとネットで紹介された。足首のまわりの脂肪やゼラチンをかじって食する。かんたんな塩味でサラッとした味が特徴だとメモリが記録する。深めの皿に山盛りでドサッとでてくる。湯気がのぼる爪ツキ足を視力器が感知したときおぉという発声音がでた。最初このねちゃねちゃねばねばした食感はわたしのセンサーになじまなかった。いわゆる食感をつかさどるデータが欠陥商品だったからだ。


 店主はせっかくいらっしゃったのでなにかお観せしますといって豚足にタップダンスを踊らせた。




(了)






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