第36話 オールナイトニッポンの2部

「前にオールナイトニッポンの話をしたから、今度はオールナイトニッポン2部について話そう」

「別に聞きたくないけど」

「昔のオールナイトニッポンは夜中の1時から3時までが1部で3時から5時までが2部と言われていた」


「わわわわわわわわ(聞こえないように耳を両手でふさいで叫んでみた)」


 でも泰造の声はその叫びを凌駕して聞こえて来る。まるでトイレの音姫よりも大きな音でおしっこをしてしまったように。


「その1部のパーソナリティと2部のパーソナリティーのやり取りが面白かったな。1部が終わる間際に2部をやるパーソナリティの紹介するんだけど、


1部が松山千春で2部がTHE ALFEEの坂崎幸之助だった時は、松山千春が時々2部に乱入して、歳上の坂崎幸之助を『坂崎っ!』て呼び捨てにして、


坂崎は番組が始まる時にいつも『千春来るなよ!』って言ってたのを覚えてるな」


「へー(もう降参して話を聞いている)」

「松山千春は誰でも呼び捨てだったな。小田和正は小田っ! さだまさしは、さだっ! 矢沢永吉は矢沢っ!って呼んでたし、ビートたけしのラジオにゲストに出た時に、ビートたけしが松山さんって呼んで、松山千春はたけしって呼んでたな」


「無双状態だね」

「まあオールナイトニッポンの1部と2部でそういうやり取りがあるのはファンには面白いが、


とんねるずのオールナイトニッポンが終わる時はいつも貴さんが『寝ろっ』って言って終わった。そこに交流も何もなかった」


「貴さんらしいけど」


「あと1部がまだSMAPが国民的アイドルになる前の中居正広が1部で、2部が小沢健二とスチャダラパーだった時、当時は1部が終わると、2部のパーソナリティが『1部の〇〇さんお疲れ様でした』とねぎらってから放送が始まるのだが、


中居正広のリスナーが小沢健二に『中居正広さんお疲れ様でした』って、なぜ言わないって抗議の投稿をして、それに小沢健二がキレて、なんでそんなこと言わなきゃいけないんだよ! ってずっと言わずにいたな。それが原因じゃないだろうが小沢健二とスチャダラパーのオールナイトニッポンは3ヶ月で終わった」


「まあ当時もSMAPの熱狂的ファンはいただろうしね」


『この前、オールナイトニッポン55周年記念で、タモさんやウンナンや当時のパーソナリティが2時間ずつ番組をやったんだけど、その中にオールナイトニッポン2部だった人を集めて番組をやったんだ。


伊集院光と、小室ファミリーだった久保こーじ、リンドバーグの渡瀬まき、石川よしひろ、真璃子たちが当時の2部の内情を明かしてて面白かったな。こんな時間に誰も聞いてないだろうって思ってたらしくて、自由にやれて楽しかったって。真璃子が当時1部だった電気グルーヴのことを、電気グループって言ったって話が笑えたな。


それでその2時間が終わる最後に、乳癌で38歳で亡くなった川村カオリのデビュー曲『ZOO』が流れたんだ。


オールナイトニッポンの2部をやってた川村カオリの曲で締めたのがちょっと胸に来たな。曲のことにはまったく触れなかったのが、粋だった」


「泰造泣くなよ」

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