第34話 カリオストロの城
テレビでジブリ映画を観てた時に、泰造が「やっぱりジブリはすごいな。宮崎駿は天才だな」
「たしかにね」
「でも俺の世代ではどうしても認められないことがあるんだよ」
「何?」
「宮崎駿監督の『ルパン三世カリオストロの城』が公開された時、不評だったことをみんななかったことにしてるんだ」
「不評って、あんなに名作じゃん」
「それは当時の目利きの評論家が絶賛したことや、後々の宮崎駿自身の評価がどんどん高まって、名作になったんだ。昔と今では評価が違うものってあるよな」
「ん、田中みな実ちゃんとか? 局アナ辞めた頃とかキャラが迷走してて、すごいぶりっ子で腹黒いキャラで嫌われてたのに、ドラマやCMに出るようになって、いつの間にか女性たちのカリスマみたいになってるし」
「そうだ。田中みな実と同じメカニズムなのだ、カリオストロの城の評価が変わったのは。俺はカリオストロの城の前作の、『ルパン3世 ルパンVS複製人間』を観ているがこちらが正当なルパン3世だと思った。ルパンのキャラがちょっとエロくて女性にだらしなくて、みたいなのがルパン3世なんだ。まあラストに三波春夫のルパン音頭が流れるのが微妙だけどな」
「ルパン音頭って」
「それで次作のカリオストロの城はルパン3世の最初のアニメの絵柄だと言っていたが、あれは違う。最初のアニメのルパンにはアダルトな感じと凄みがあった。
でもカリオストロの城のルパンの顔は健全過ぎる。猥雑さがない。なんだか世界名作劇場みたいな絵柄だ。健全が迫り寄ってくる。
だから当時の俺たちは困惑した。
ルパン3世 ルパンVS複製人側を支持する俺はカリオストロの城を受け入れられなかった。そういう人が当時は多かったのだろう。
ルパンVS複製人間は興行収益9億5000万で、カリオストロの城は6億1000万という所に、当時の人たちの違和感が現れてると思う。
関係ないがルパンVS複製人間でルパンたちと戦う神を名乗るマモーというキャラがいたのだが、それがウッチャンナンチャンのやるならやらねばのコントで、ウッチャンとちはるが演じるマモーミモーはこれが元ネタだ」
「マモーミモーがわからないし、ちはるって誰? 千秋は知ってるけど」
「ちはるは当時はよくテレビに出てたタレントだ。
でも宮崎駿はそれ以降の精力的な活動でどんどん名声を高めて、いつの間にかカリオストロの城に対する違和感もなくなってしまっていた。ジブリのアニメに慣れてきたのだ。そしてカリオストロの城は名作となった。
最後に銭形警部が言う、『ルパンはとんでもないものを盗みましたぞ』『あなたの心です』って、名セリフだよな。ルパン音頭で締めるよりよっぽどいいな」
「泰造も寝返ってるじゃん!」
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