第53話 土曜日の深夜のテレビ
日曜日、急遽青木のご両親が家に来ることになった。結婚前の大事な娘さんを妊娠させてしまい、本当に申し訳ないから、謝罪と挨拶にくることになったのだ。
日曜日の早い便で北海道から羽田空港まで来るので、作戦会議がてら青木は家に泊まることになった。
私が妊娠したことに対して、泰造は青木に怒ったりすることはなかった。
ただこれからのことについて聞いておきたかったみたいだ。
青木は「2人で話し合ったのですが、このご時世ですし、結婚式はしないで籍だけ入れようと思ってます。でもそれだけだと寂しいので、お互いの家族を招いて食事会と、僕らは
ウェディングドレスとタキシードに着替えて、記念写真をみなさんで撮りたいと思ってます」
「それでみさきは良いんだな」
「うん」
「写真の件だけど、青木のご両親に北海道から何度も来ていただくのは申し訳ないな」
「だからね、もう写真屋さんに明日の予約して来たんだ。結婚式の衣装も込みで写してくれるとこ」
「手回しが早いな」
「おじいちゃんも来てくれるってさ」
「父さんとこ行ったのか?」
「うん、私のウェディングドレス姿を楽しみにしてるって」
そんな風に作戦会議というか、ほとんど事後報告が終わり、青木と泰造は遅い晩酌を始め、私は烏龍茶を飲みながらそれに付き合った。
居間には見るともなしにテレビがついていた。
「青木は深夜のテレビは見るかな」
「そうですね。今はアメトークくらいですね。月曜から夜更かしは時間が早まったし」
「そうか。今までは月曜から夜更かししてたのか。
今はハナキンだが、当時は土曜日の夜が夜更かしが出来る唯一の日だったな」
「ハナキンって……泰造古いよ」
「す、すまん。で、その前年にフジテレビのオールナイトフジがヒットしたので、
昭和59年から60年にかけて、各局も土曜日の深夜番組に力を入れだしたんだ」
「そうなんですか」
「日テレは所ジョージが司会のTV海賊チャンネルっていうのをやってたな。
結構エロを売り物にしてて、ティッシュタイムってコーナーがあったな」
「私が引くような話はやめてね」
「わかった。で、そのコーナーはエロいシーンが最高潮になるまで、あと30秒とかカウントダウンしていき、
ラスト、3、2、1、ドッカーンと大爆発
するのだ!」
「ほら、引くような話じゃん」
「すまんすまん。で、TBSがあの松山千春を司会にしたハロー! ミッドナイトを始めて、
テレビ朝日は当時、青春の巨匠として再ブレイクしていた、
元千葉県知事の森田健作がレギュラーで出てたミッドナイトin六本木をやってたんだ」
「そっか」
「そんな土曜深夜戦争もしばらくして終結して、
のちに土曜の夜は、日テレはDAISUKI! フジはねるとん紅鯨団、ダウンタウンとウンナンが共演した夢で逢えたらなど、
伝説的な番組が出来るんだな 」
「ダウンタウンとウンナンの共演ってすごいですね」
「また共演してもらいたいけどな」
「昔の話もいいけど、明日は青木のご両親に昭和の話はしないでね」私が釘を刺すと、
「自信ないなー」と泰造は笑って言った。
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