第51話 ザ ベストテン

ある日の夜、泰造が新聞のテレビ欄を見ながら言った。


「最近はゴールデンタイムの音楽番組があまりないな」


「MステとCountDownTVくらいかな。あとは特番とかよくやってるけど」


「昔はもっとあったぞ。バラエティー番組でも、合間に歌手が歌ったし。8時だよ!全員集合もそうだし。最近のバラエティーはバラエティーオンリーで、歌は挟まないもんな」


「たしかに」


「それで今夜はザ・ベストテンの話をするぞ!」


「また唐突だな」


「ザ •ベストテンは1978年から1989年までTBSで木曜日の9時からやってた大人気番組だ。


司会が久米宏と黒柳徹子だった。


それでザ・ベストテンは1位から10位までは基本的にスタジオで歌うのだが、


地方のコンサート会場などにいてスタジオに来れない歌手は、


おっかけマンの松宮アナが名前の通りおっかけて行き、そこから中継するんだ」


「へー」


「あと昔はテレビには出ないって歌手たちもいっぱいいて、


矢沢永吉、中島みゆき、松任谷由実、オフコース、それに松山千春とか出演拒否してたな。今は結構テレビに出てるのに。


で、松山千春は季節の中でが、ベストテンの1位になった時、


自分がテレビに出ない理由を、自らテレビに出て話すという、豪快な技を使ったんだ。その後、一曲歌うし」


「変だ!」


「その頃はテレビに出ない事がステータスでもあったんだ」


「そうなんだ」


「でもザ・ベストテンには他にも楽しみがあって、


それはランキングを予想することだった。


大学ノートに……」


「大学ノート(笑)」


「悪かったな(少し凹んだ)。で、毎週木曜日の放課後までに、そのノートに今週のザ・ベストテンの1位から20位までの順位予想を書いて、そのノートを友達に渡し、


そいつも同じようにノートに予想を書き込んで、俺に渡してくれて、


その晩はそのノートを見ながら、ザ・ベストテンの予想が当たってるか答え合わせをするんだ! これは楽しかったな。


俺は最高で10コ当り、友達は最高で17コも当てて、すげえ自慢されたな!」


「たしかに20位中、17つも当てたらすごいな」


「たしかにな。でも放課後にノートを交換してるとこをクラスの女子に見られて、二人はそういう関係なんだと噂されたことがあるな」


「バカだ!」

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