第45話 ご飯のお供

 翌朝、青木は二日酔いかなと思ったが、わりと元気に起き出した。


 私は野菜ジュースのパックをストローで飲みながら、ダイニングキッチンにいた。


 そこに入って来た青木に、リビングのテーブルで新聞を読んでた泰造が、「朝メシ食ってくか?」と言った。


「あ、はい」


「青木はご飯のお供は何が好きかな?」


「え、なんだろう。イクラの醤油漬けとかですかね」


「青木、ブルジョアだな。俺が子供の頃は、おそ松くんふりかけだったぞ!」


「なんか、いきなり昭和臭がします」


「うるさいな。丸美屋のおそ松くんふりかけ好きだったんだよ。


近所の乾物屋に行くと壁にカレンダー大の台紙がぶらさがってて、


ホチキスかなんかでいっぱいおそ松くんふりかけがくっついてて、それをはがすのも楽しかったんだ。


おそ松くんの他にもエイトマンふりかけもあったな」


「そうなんですか」


「あと、三色ふりかけっていうのがあって、プラスチックの容器の中が3つに仕切られてて、


そこにのりたまと、たらことごま塩が入ってるんだけど、


他の友達の家はのりたまが一番先になくなるって言ってたけど、


うちは圧倒的にごま塩の減りが早かったな。

なぜかはわからんが」


「そうなんですか」


「あとは桃屋のごはんですよも好きだったな。


姉妹品に、幼なじみやお父さんがんばって、なんていう名前の海苔の佃煮もあったな。もう販売終了らしいが」


「お父さんがんばって、ですか……」


「あとは、これはおかずに入ってしまうが、マルシンハンバーグのあのチープな味が、大人になっても時々無性に食べたくなるな。


ケチャップたっぷりのイシイのチキンハンバーグとビーフハンバーグも、

子供の頃を思い出させてくれる味だ」


「泰造、今でもスーパーで見つけると買ってくるもんね」


「うん。まあ今は、紅鮭フレークあらほぐしの瓶詰めが一番だな」


「あれ、いいですよね」


「今日の朝食はトーストだから、ご飯炊いてないよ」

 私が言うと、泰造と青木が昭和風にずっこけたのだった。

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