第42話 懐かCM

 泰造がウニクラゲの瓶詰めを肴にハイボールをしこたま飲んで酔っぱらうと、


「娘とその彼氏がフォアグラとトルフェを買って来てくれた……と、日記には書いておこう」と唐突に言った。


「なにそれ?」


「昔の龍角散のCMだ。こうだったらいいなと妄想するが、現実は真逆で、その妄想した方を現実のこととして日記には書いておこう、


というなんだかポジティブなのかネガティブなのかわからないCMだったな。


たしか、ケンちゃんシリーズに出てた『マンガさん』が学生服着て出てた気がする」


「もう原始時代の話みたいでまったくわからないし、お土産がフォアグラとトルフェじゃなくて悪かったね」


「冗談だよ、冗談。

まあ昔は印象に残るCMが結構あったってことだ。


欽ちゃんが出てた、どっちが得かよ~く考えてみよう! とか、郷ひろみと柄本明がやってたハエハエカカカキンチョールとか、


サッポロビールのCMの若さだよやまちゃん! とか、栄養ドリンクのCMの、ちかれたびー! とか」


「あれ泰造、時々ちかれたびーって言うよね。それってCMのセリフだったんだ」


「そうそう。ちかれたびーと言うのはおやじしかいない。あとは、西川のりおと桂文珍が古墳時代の格好して言った、


『ちゃっぷい、ちゃっぷい、どんとぽっちい』も流行ったな」


「そんなのがあったんですね、見たことないです。なんのCMなんですか?」と青木が言った。


「カイロだよ。最近のは揉まなくても温まるけど、昔のは揉まないと温かくならなかったな」


「泰造、今でも寒いとき『ちゃっぷいちゃっぷい』って言うもんね。ほんと芯から昭和だねー」


「うるさいな。あとはパイポのCMで、眼鏡のおやじ、今だとシソンヌの長谷川に似てるかな。が、子指を立てて、『私はこれで会社をやめました』とかな。今だと子指を女性に例えたら炎上しそうだけどな。


でも俺が一番好きだったのは、よく俺たちひょうきん族を見てると、このCMが流れてたんだけど、


ひげダンスみたいな口ひげを付けたおやじが、サンバっぽいリズムで踊りまくって、


『あたたかめっちゃか、あたたかちゃ! ミスターHOTで、暖かチャ!』って言う、カイロのCMなんだが、誰か覚えてないだろうか?」


「マニアック過ぎだろ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る