第30話 サザンオールスターズ

 青木が帰った後、泰造がコンパクトなCDプレイヤーで何かを聴いていた。

 リビングでイヤホンを付けて、腕を組んで目をつむって聴いている。


 しばらくしてイヤホンを取ったので、

「何、聴いてたの」と訊いた。


「サザンだよ。さっきエアチェックの話をしたら、当時の曲が聴きたくなってな」


「そうなんだ」


「サザンは俺が中学生の頃から聴いてたもんな。

でも最初はずっとコミックバンド扱いされててな」


「そうなんだ」


「だってデビュー曲が『勝手にシンドバット』だしな。


 これは当時ヒットした沢田研二の『勝手にしやがれ』とピンク・レディーの『渚のシンドバット』をもじってて、


その頃、8時だよ!全員集合で志村けんが『勝手にしやがれ』と『渚のシンドバット』を交互に1フレーズずつ歌うという『勝手にシンドバット』ってネタをやってて、


後にサザンが出た時に、志村けんにパクりだって責められてたな」


「そうなんだ(最近、そうなんだってあいずち多いな)」


「そんな扱いはセカンドシングルの『気分しだいでせめないで』が出た後も続いてたな。


サザンがザ・ベストテンに出た時に、レコーディングスタジオから中継してたんだが、


なかなか曲が出来なくて桑田さんが『ノイローゼ! ノイローゼ! 』って曲の間奏で叫んでたのを思い出すよ。


それでサザンのファーストアルバムに『女呼んでブギ』って曲があって、歌詞がコンプライアンス的にどうよって感じですごかったな。


だって、♫女呼んで揉んで抱いていい気持ち♬って歌詞だったからな。その後に♫女なんてそんなもんさ♫って続くんだけど、当時はコミックソングとして聴いてたんだけど、今聴くとひどいな」


「今だったら絶対炎上するじゃん」

「そうだな。当時、中ピ連っていう、中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合という、ウーマンリヴの団体がいて、


当時はピルが自由に買えなかったことを女性への抑圧として、ピンクのヘルメットを被った女性たちが女性差別的なことがあると抗議に行くんだけど、よく中ピ連が抗議しなかったなと思うよ」


「そんな団体がいたんだ」


「当時は有名だったよ。話は戻るが、でそんなイロモノ扱いされてたサザンがある一曲によって、評価がガラッと変わる。革命が起きるただ。その曲とは!」


「なんて曲?」


「サードシングルの『いとしのエリー』が発売されたんだ。 でも最初はみんな違和感があったんだ。


あのサザンがバラード? みたいな感じで。でも曲の素晴らしさがすべてを凌駕し、大ヒットし、彼らのバンドとしての力が民衆につたわったのだ!

革命だ! 奴隷が皇帝に勝ったのだ!」


「それカイジだし」


「まあその後はレコーディングに専念すると言ってしばらくテレビに出ないで毎月1枚シングルレコードを出してた時期があったのだか、テレビの露出が減るとシングルの売上も徐々に落ちていた。


その頃出したシングルに、恋するマンスリーデイって曲があって、これは女性の生理の時のことを歌詞にしたんだが、あまりヒットしなかった。


その間に出した『ステレオ太陽族』ってアルバムはバカ売れしたんだけど、シングル盤でサザンがヒットを出すのは歌謡曲調の『チャコの海岸物語』まで待たなきゃいけなかった。


その後は、誰もが知ってる『エロティカセブン』や『マンP★のGスポット』などの曲で日本一のバンドへと駆け上がって行くんだけどな」


「おやじエロい曲しか選んでないな」

「偶然だ。ちなみに霜降り明星が漫才で、せいやが桑田佳祐の真似をして歌って、粗品が「知らん曲!」だかなんだかツッコんだ時の曲が、『逢いたさ見たさ病めるMy Mind』だ! ヌードマンってアルバムに入ってる」


「すげえマニアックだ」


「年末の紅白の出演者決まっちゃったから、追加出演でサザンが出ないかな」


「出るといいけどね」

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