第28話 エアチェックって何?

 日曜日に青木が家に遊びに来た。


「これ美味しいんですよ、生搾りモンブラン」と青木は自分のお土産を泰造に差し出して言った。


「どれどれ」


 泰造が箱を開けると、マロングラッセを乗せたケーキにすごく細いマロンクリームが幾重にもかかっていて、とても美味しそうだ。


「みさき、紅茶入れてくれる?」


「はーい」


 私は紅茶ポットとカップをトレイに乗せて、テーブルに運んだ。泰造はケーキを家で1番高い皿に載せて、私と青木と自分の前に置いた。


 そしてケーキをうまいうまいと食べながら、

 泰造が言った。


「青木は好きなアーティストとかいるの?」


「西野カナとか好きですけど、今病気療養中なんですよね」


「そうか、西野カナか。

俺は西野カナ、加藤ミリヤ、絢香、JUJU 、MIWAの区別がつかないのだよ」


「泰造、オヤジだからな」


「そうだよ、オヤジにとってあの系統の女性アーティストは鬼門なんだ。


この歌手と、代表曲を線で結べって問題があっても、一個も正解できそうもない。でもMISHAやAdoや、Anoちゃんはわかるんだ、不思議なことに」


「なんでだろうね」


「でもちゃんと聴けば西野カナだけはわかるようになりますよ。今度CD持って来ます」


「そうか、ありがとな。まあ、そんな訳で、音楽ネタついでにエア・チェックの話をしようか」


「また唐突に。なにエア・チェックって? 空気をチェックするの? 空気洗浄器かなんかで」


「違うっ! FMラジオから流れる曲をカセットテープに録音する行為のことをエア・チェックと呼ぶのだ!


昔はそれ用に番組表のついたFM雑誌が何冊も出ていて、


『週刊FM』『FMファン』『FMレコパル』『FM STATION』などがあった。それだけエアチェックする人がいたんだよな。


まだレコードの時代で、レンタルレコード店も出来る前だったから、


聴きたい曲があってもLPレコードは本当に高くて、一枚でひと月の小遣いがなくなるから、本当に欲しいものだけをお金を貯めて買って、


それ以外はエア・チェックしてよく聴いたものだ。


特に土曜日の13:00からFM東京でやってた『コーセー歌謡ベストテン』は毎週聴いてたな。


その週のベストテンの曲を全部流すのだが、録音しやすいようにか3曲くらい連続で流し、MCを挟まないのが良かったんだ。


土曜日に半ドンで帰ると録音しながらよく聴いたものだ」


「今のSpotifyとかのサブスクみたいなもんですかね」


「ああ、そうだな。今は手軽にスマホで聴けるんだもんな。


当時は俺は親父のステレオを借りて録音していたんだけど、


まだステレオは高級品で、一家に一台あればそれをみんなで使うって感じだったな。


その後、今ではヒップホップの人しか持ってないようなでかいラジカセ……シャネルズがランナウェイって曲でCMをやってた、


あれを高校入学のお祝いに買ってもらった時はすごくうれしかったな」


「シャネルズって、名前からしてR&Bか何かですか?」青木が食いついた。


「シャネルズは鈴木雅之がボーカルで、例の田代まさしと何度もスリの被害に遭う桑マンがいて、後にラッツ&スターと改名したんだ」


「ある意味、すごいメンバーだね」


「田代まさしことマーシーと桑マンは、志村けんのバカ殿様とか出てたな。その後、田代まさしが女の人のミニスカートの中を盗撮して捕まって、その時の言い訳が、


『耳にタコが出来るじゃなくて、ミニにタコが出来るって写真が撮りたかった』などと訳がわからない謝罪をしてたな。その後は覚醒剤所持で捕まったりと、あれだけ売れてたのに、なんでそんなことするかなあと思ったな。


さて、コーセー歌謡ベストテンの続きだ。今週の1位は西城秀樹の『ヤングマン』だぁ!」


「いつの時代だよ!」


「ちなみに、FUN.ってバンドに『We are young』ってめちゃくちゃ良い曲があるんだが、


その邦題が……『伝説のヤングマン』だ。なんだかすごく残念だ」


「……残念だすね」青木がしみじみと言った。


「あ、これを読んで下さった方々、当時、使ってたカセットテープはなんですか? 応援団コメントのところにカキコミよろしくお願いします!


私はTDKならADかOD、ソニーならBHFかAHF、マクセルなら……あー、なんだっけ、忘れた!」


「気長にお待ちしております! 」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る