第26話 花の82年組
晩ご飯を食べながら、Mステの3時間スペシャルを観ていた泰造が、
「今のアイドルはグループばっかりだな。
坂道しかり、NiziUやTWICEにしてもそうだ。ピンでアイドルで歌を歌ってる人っていないだろう」
「あいみょんとかAdoはアイドルじゃないしね」
「あの2人はアーティストだしな。アイドルグループにいて、ソロで曲を出す子はいても、ピンのアイドルはいないな。
でも昔のアイドルはピンで活動してたな。
1982年にデビューしたアイドルは後に花の82年組と呼ばれて、続々とスターになっていくんだけど、
今も女優の小泉今日子、スチューワーデス物語の掘ちえみ、後にシブガキ隊の薬丸裕英の奥さんとなる石川秀美、
帰国子女の早見優、さっきの薬丸裕英がいたシブガキ隊……ちなみにシブガキ隊のバックバンドはシブ楽器隊っていうんだが」
「ダジャレかよ」
「原田知世やアイドルではないが岡村孝子のいたあみんの『待つわ』もこの年だ。年末には欽ちゃんのどこまでやるのって番組から出た、わらべの『めだかの兄妹』もデビューしてる。ピンではないけど、
のぞみ、かなえ、たまえ(望み叶え給え)の女の子三人組で、
のぞみこと高部知子は同時期に積み木くずしっていうドラマに主演で出てたな。原作は穂積隆信っていう、中村雅俊の青春ドラマの嫌味な教頭とかを演じてた。
その俳優の娘の実話を本にしたら大ベストセラーになったんだ。その家庭内暴力をする不良少女役を演じた高部知子の迫力がすごかったんだ。視聴率も30%超えで、これで高部知子はスターになるとみんな思ってた。
その矢先に、元彼とベッドで、多分そういう行為をした後にタバコを吸ってる写真をFridayに、その元彼が流出して、大スキャンダルになって、高部知子は引退させられたんだ。その元彼はその後、責任を感じて自殺したな。
その後はコンビニの店長をしていると聞いたが、今はわからない」
「へー」
「後は、パンジーと呼ばれた女性三人組ユニットの北原佐和子、真鍋ちえみ、三井比佐子がそれぞれソロでデビューした。
そして変わり種はスターボー。やはり女の子三人組なのだが、髪の毛は男の子みたいに刈り上げられ、宇宙人を模したウェットスーツみたいのを着て、
『ハートブレイク太陽族』というテクノな曲を歌っていた。当時は亡くなった坂本龍一さんと高橋幸宏さんのいたYMOの影響でテクノが流行っていたんだ。
でもその路線は素人の俺が見ても失敗だと思った。
すると次に出した曲は、何事もなかったかのように髪も伸ばして普通の女の子の格好で歌ってたんだよ。しれっと」
「変わり身早いぞ、スターボー」
「でも売れたアイドルはジャニーズ系以外みんな女性で、
新田純一って男のアイドルもいたが、近藤真彦と似過ぎていたせいか、あまり売れなかったし、金八先生でブレイクした沖田浩之はデビュー曲の「E気持ち」は売れたけど、それから人気が下降していって、若くして亡くなってしまったな。
その時、加藤役で一緒に出てた直江喜一は、『おいしい給食のseason2』ってドラマや劇場版おいしい給食に出てるな。でっぷり太ってしまったけど」
「そうなんだ」
「そして当時は月刊明星と月刊平凡というアイドル雑誌があって、
それの読者同士の売ります買います的なページが暗号だらけだったのだ!」
「暗号って何?」
「誌面の1ページを細かく区切って、そこに読者がこれ欲しいから売ってとか、これと交換して、みたいのを書く掲示板なのだが、
一人の文字数が限られているからか、それはまるで暗号のようだった。
例えば、
『チェ ポスター希望、シブ、近と交換可』
これの意味がわかるか?」
「わかるわけないし」
「これを解読すると、チェはチェッカーズ、シブはシブガキ隊、近は近藤真彦の略で、
要するにチェッカーズのポスターが欲しいから、売ってもらうか、
私の持ってるシブガキ隊か近藤真彦のポスターと交換して欲しいということだ」
「すげえ、その文字数でそれだけの情報量!」
「そう、俳句みたいに凝縮されてるよな。まあ、ぶっちゃけシブガキ隊からチェッカーズに乗り換えたってだけの話だがな」
「世知辛いな」
「今だってそうだよ。ジャニーズ、とはもう言わないんだけど、前からいるアイドルからキンプリやSnowManやSixTONESに乗り換えたりしてるファンも多いだろうしな」
「まあ、いつの時代もみんな新しいものが好きなんだよね」
「でも、いまでもかたくなにSMAPや嵐のファンも多いけどな」
「まあ、国民的スターだからね」
「今、国民的スターって言ったら誰だろうな」
「大谷翔平さんじゃない?」
「芸能界じゃないのが悔しいな!」
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