第25話 テレビ出演の思ひ出
「テレビの話ばかりでなんだが、実は俺、テレビに出たことがあってな」
「泰造が?」
「うん。俺が小学3年くらいだったかな。TBS系の『コント55号の決定版』って番組があって、
火曜の19:30から20:00にやってたのだが、その枠はのちに『ぴったしカンカン』になって、
萩本欽一と坂上二郎が出てたんだ。司会が久米宏で『ぴっ(少しタメる)たしカンカン恒例、1枚の写真!』とか言ってたな。
この一言と、大橋巨泉が世界まるごとハウマッチでチャックウィルソンに言った『もうケチャックなんて呼ばせない』は着ボイスにして欲しいな」
「まるでわからない上に、ずいぶん話がそれたけど」
「すまんすまん。で、『コント55号の決定版』は日本各地の公会堂から生中継してて、その日は横浜の今は無きスカイ劇場ってとこでやったんだ。横浜のスカイビルの一階にあった。
当時、屋上にはなんと360度回転するレストランがあった。中で食事をしてると景色が変わっていき、1時間くらいで一周したんじゃなかったかな。あまり早かったら乗り物酔いするしな。
そのスカイ劇場での観覧希望のハガキを母が出して見事当選して、俺は小学校をズル休みして、母に連れられて見に行ったんだ。
その番組は欽ちゃんと二郎さんがコントをしたり、素人を参加させるコーナーがあったりするのだが、
その素人参加コーナーに生放送が始まる前にADみたいな人が子供たちに、
テレビに出たい人は舞台に上がって、 って言ったので俺は急いで劇場の階段を駆け降りて、一番に舞台に上がった。俺と後から来た数人の子供がその日のテレビ出演者に選ばれたのだ!」
「すごいじゃん」
「で、本番が始まると、その日は野口五郎と浅田美代子という豪華なゲストで、
俺はその素人参加コーナーで、女装して浅田美代子に扮した二郎さんに迫られ、
『ぼ、僕は君を愛している』ってセリフを言うのだが、
二郎さんが口紅を塗りたくって、白粉を真っ白に塗って、マスカラもつけて、その女装姿の圧が凄すぎて、俺はひるんだんだ。二郎さんはひるんだ俺にまだ顔を近づけて来るんだ。地獄絵図だった。だってすげえ圧なんだよ。子供にとって。
今でも時々、夢に出てきてうなされるぐらいだ。
だから俺は「ぼ、僕は君を……」でセリフが言えなくなってしまった。しばらく棒立ちの俺に欽ちゃんが、ツッコんでくれてなんとかそのシーンは終わった。本当に膝から崩れ落ちそうなくらいに衝撃を受けていたんだ。坂上二郎さんの圧に。
生放送が終わり、テレビ出演した子供たちにおみやげが配られたのだが、それがカバかゾウかわからないような微妙なぬいぐるみをもらって、二郎さんのトラウマを抱えて帰ってきたのだ」
「すごいな、泰造。見てみたかったな」
「まだビデオのない時代だからな。録画してたら、あの時の自分を見てみたかったな。それで次の日学校に行ったら、ズル休みしてテレビに出てたとみんなにうらやましがられたな。本人はまだトラウマで心が震えていたのだが」
「そんなにすごかったんだ」
「あとテレビ出演といえば、前にも話したギンザNOW! ってTBSで夕方の5時から月~金でやってた30分番組があって、せんだみつおが司会だったんだが、
その月曜日のしろうとコメディアン道場ってコーナーに、俺の中学の先輩が出てな、
その付き添いで、当時俺が入ってた柔道部の先輩二人が見に行ったんだ。
それで俺は学校が終わると急いで家に帰ってギンザNOW ! を見た訳だ。
そのしろうとコメディアン道場は、関根勤や小堺一機、竹中直人、清水アキラなどが5週勝ち抜いてチャンピオンになった、今考えるとすごいコーナーなのだが、
中学の先輩が舞台に立って漫談みたいのを始めると、
客席にいた柔道部の先輩2人がもろにテレビに映ってうれしかったな。
その人はあまりウケなくて一週目で落ちてしまったがな」
「へー」
「俺もまたテレビに出たいもんだな」
「犯罪おかして、ニュースに出たらイヤだからね」
「しねーよ、そんなこと。青木の方がやばいんじゃねーか。痴漢とかセクハラとかして」
「しねえっつーの!」
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