昭和40年生まれだ！馬鹿やろコノヤロ！父、泰造の昭和レトロ噺

第22話 遠足のおやつは300円まで！

「さて、今日は日曜日で天気もいいから青木も誘ってハイキングでも行くか！」

「行かねーし。青木は今、仙台に出張してるし」

「（人の話を聞いてない）おやつは300円までな。

　それからバナナはおやつに含みません。なぜならバナナは……主食だからだ」

「あんたはゴリラか？」

「で、前日に友達同士で遠足用のお菓子を買いに行くのが無上の楽しみだった。

　金額が決まってるから店先でいろんな組み合わせを考えたな。そしてまずはセンターを決めた」

「センター？」

「そのセンターに据えるのは少し高めで、その日のメインって感じのお菓子だ。

たとえばグリコのアーモンドチョコレート……赤いパッケージのフライドと、白いパッケージのセサミがあったが、子供の俺には味の区別がつかなかった……が、それがセンター候補だ。

　他にも森永ハイクラウンって、タバコみたいなケースに入ったチョコも有力候補だ。

　変わり種では明治なんきんまねってのもあったな。

落花生を模したスナックをチョコでくるんでいるのだが、中には本物のピーナッツもはいっていた。

まあそれらがメイン級だとしたら、その脇を固めるお菓子が必要だ。

俺は毎回そこにグリコのペロティチョコ、もしくはいちごのペロタンを入れたな。

ペロティチョコはペロペロキャンディーみたいに棒に平たくて丸いチョコがくっついていて、

それを最初のうちは、いろんな絵が描かれていた表面のホワイトチョコの部分をペロペロなめていくのだが、

結局は我慢できなくなって噛じって食べたものだ」

「へー」

「ペロタンはペロティの小さいのが二本入ったイチゴ味のものだ。

あとは森永のチョコベーも必ず買ったな。パッケージにカカシかやじろべえみたいな絵が描かれているヌガーチョコなのだが、

ベーシールっておまけのシールが入っていて、よく家のタンスに貼って起こられたな。今も実家のタンスの引き出しに貼ってあって、取れないって親父に怒られたな」

「あ、それ見たことある。あれがそのシールなんだ」

「そうだよ、そうだよ、ソースだよ！　あと時々買ったのは、チョコベーとかよりも値段が高い森永カリンチョだな。

他にも森永ドーナッチョって、チョコフレークをドーナツ型に固めて二個入ってるのもあったな。

明治ヤンヤンってのも買ったな。これは筒型のケースの中に、スティック状のビスケットとチョコレートクリームが別々に入ってて、

そのビスケットをチョコにつけて食べるという」

「それならチョコポッキーでもよくない？」

「ヤンヤンはポッキーとはちょっと違う。あのちょっと柔らかめなチョコクリームを付けて食べる感じが良かったんだ。

他には筒型のパッケージに藤子不二雄のキャラクターの絵が描かれてたロッテのカプッチョや、

不二家のパラソルチョコやペンシルチョコも安かったから買ったな。

ペンシルチョコは、チョコえんぴつっていうのが正式名らしいが」

「どっちでもよくね？」

「たしかにそうだな。あとキャラメルだと一粒で二度おいしいアーモンドグリコや、普通のおまけ付きのグリコ、

クリーミーで少し高級感があった森永ハイソフトなんか好きだったな。

そしてそれらを無限にある組み合わせの中から、自分の黄金ラインナップを組むのだ！　まるでプロ野球の監督になった気分で、選手の打順を自分で作っていくように！

そして色々と悩んだ末に、自分の最強の野球チームが出来上がったところで、どうしても2～30円余ったりする。

その時は、安価なライスチョコレート……子供がお小遣い上げておくれよと言うと、頑固そうな親父が『ライスチョコレートがある』と手に持って見せるというCMがあったな。ライスチョコ20円くらいだったしな。

なぜライスかと言うと、米粒みたいな形をしたおこしみたいなのがチョコに混ぜられていたからだ。

それや、ウェハースでチョコをコーティングしたセコイヤチョコ……このチョコを買うと、せこいと言われたな。セコイヤだけに。せこいって意味わかるか？」

「わかんないよ」

「ケチとかケチくさいとか、そんな感じの意味だよ。

そして10円でオレンジの粒ガムが４つ入ってたマルカワのオレンジガムなどを買って、帳尻を合わせ、きっちり300円で、最強の野球チームが出来上がるのだ！

自分の野球チームが出来上がると、友達がどんなのを選んだか気になるから見せてもらうと、

高いグリコアーモンドチョコのセサミとフライドの２個だけで、なんだよ高額な助っ人外人2人だけじゃ野球にならないじゃん、とか思ったり、

ペンシルチョコだけを10何本も買ってる奴もいて、お前、巨人の土井正三ばっかり揃えてんじゃねえよ。名手だけど地味じゃねえかと思ったりしたな。そういうとこに個人の趣味が現れるんだ」

「まるで買い物ゲームみたいだね」

「わりと楽しいぞ。じゃあ今度300円握りしめて、みんなでスーパーに遠足のお菓子を買いに行こう！」

「不二家のカントリーマアム買ったら、ソッコー無くなるね」