第7話
女はもう男のアパートには行けなくなったが、あれからも一日に一回は男のスマホに電話した。
しかし、男が電話口に出ることはなかった。
着信拒否をしているのだろうと思い、公衆電話からもかけたが、男は出なかった。
心配になって、男が住んでいるアパートに行った。
そして、呼び鈴を鳴らしてみた。
すると、中から「 は~い。」と聞き慣れた声がした。
女がホッとしていると、玄関のドアが開いた。
「 キミか。どうしたの?」
男の顔は少しやつれていた。
「 いくら電話してもあなたが出ないんで、心配になって来たのよ。どうしてたの?」
「 僕、会社、辞めたんだ。」
「 まぁ! どうして?!」
男は何か言おうとしたが、結局何も言わなかった。
“ 私が悪いのよ。私のせいであなたは会社を辞めたりしたのね。”
そう思うと、今ここで男を抱きしめたいと思った。
しかし、それは男のためにならないと思い、やめた。
「 食事はしっかり取ってる?」
「 今日は昼に食べただけだよ。」
「 ダメじゃない。今日一日は私が料理を作ってあげるわ。」
「 いいよ、そこまでしてもらわなくても。」
「 気にしないで。」
女は男の家に入り、冷蔵庫の中にあり合わせのもので料理を作り始めた。
料理を作りながら「 少々の事で会社を辞めたりなんかしちゃダメよ。」と女は言った。
「 あ~、わかったよ。」と男は答えた。
出来上がった料理を男は美味しそうに食べた。
それから、二人はとりとめのない話をした。
帰り間際、女は「 仕事、早く見つけてね。」と言った。
そして、心の中で思った。“ 次の仕事がずっと勤まるようなら一緒に暮らしてあげてもいいわ。だから頑張って。”
キミ恋し 小説太郎 @shousetutarou
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