第6話
さらにさらなる恋愛会話力の特訓が恋愛アドバイザー女から失恋男に施された。
「 彼女には男がいるという状況でどんな会話をしたら彼女をものにできるのか今から伝授するから、耳の穴をかっぽじいて聞いてね。ただし、鼻くそはほじらないで!」
「 言いたいことはよく理解できたよ。」
女は数時間かけて秘伝の奥義を伝授した。
他にもいろんな恋愛の奥義を約一ヶ月かけて女は伝授した。
そして「 そろそろ、また彼女に電話してみたら?」と女は言った。
男は今度こそ会う約束が取れそうな気がした。
男は頑張った。そして、会話を盛り上げた。しかし、またしても別れた女に逃げられてしまった。
「 いい所まで行ってるのよ。だけど、もうひと工夫が足りないわ。もう一ヶ月、頑張りましょう!」と女は言った。
そうやって二人で努力すること約一年、そして約一ヶ月毎に別れた女に電話をかけた。
しかし、毎回いい所まで行きながらダメだった。
そして、恋愛アドバイザーの女はふと気が付いた。
“ 私に依存してるからダメなのよ。だとしたら、あの事を言っておくべきだわ。”
その日、女は仕事を終えて、いつものように男のアパートに行ったが、恋愛のための授業は始めなかった。その代わりに重要な告白をした。
「 実は、あなたにずっと言わないでいたことなんだけど、私にも付き合ってる彼氏がいるの。その彼氏はあなたと別れた女の今の彼氏でもあるの。」
男はショックを受けた。そのショックは電話で別れた女に会うのを断られたショックよりも遥かに大きかった。
「 私はその男と五年は付き合っているんだけど、今から一年ちょっと前にあなたの元カノと付き合ってるのを知ったわ。それは彼の素行がちょっと変だったから探偵に頼んで調べてもらった結果わかったことなの。その時、同時に彼女があなたと付き合ってたこともわかったわ。」
「 いや~、ショックだな~、それは。だけど、キミの恋愛力をもってすれば、僕の元カノから彼氏を奪い返すことは簡単じゃなかったの?」
「 もちろん、私の恋愛力の全てを使っていろいろ試してみたわ。だけど、あの男には全く通用しなかったわ。」
「 ふ~ん。じゃあ、キミも彼氏にフラれたわけだ。」
「 ううん。週に一度、仕事が休みの日、つまり、あなたのアパートにも来ない日に彼氏と会ってたわ。」
「 そうだったのか~。じゃあ、公園で初めてキミと会ったのも偶然ではなかったの?」
「 え~。初めから、あなたが誰であるかわかってたわ。あなたと知り合って、あなたに私が持っている恋愛ノウハウを全て教えて、私の彼氏からあなたの元カノを奪い返して欲しかったの。」
「 そうだったのか~。」
「 まだまだ、彼女を奪い返すチャンスはあるわ。最後まで私は応援するわ。」
「 いいよ、もう。キミの話を聞いて元カノとよりを戻したいっていう気持ちも失くなってしまったよ。」
「 そんなこと言わないで。私もできるだけのことをするから。」
「 ねぇ、僕は今、元カノよりもキミと付き合いたいんだけど。」
「 ごめんなさい。それだけはできないわ。」
「 そう。じゃあ、もういいよ。キミから授業を受けるのもこれで終わりにしよう!」
男はキッパリとそう言い放った。
「 ごめんなさい。でも、私はずっとあなたの成功を祈ってるわ。」
玄関の所まで行って、男は女にひと言、言った。
「 今日まで、どうもありがとう。元気でな。」
「 ありがとう。あなたも元気でね。」
女の言葉を聞いて男はニコッと笑ったが、その後一瞬見せた悲しげな表情が女には忘れられなかった。
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