赤い蜘蛛の巣の館

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第1話

 赤い蜘蛛の巣の館は広大な牧場の真ん中に建っている。館の主クアッドロ・ベルトオリス・エリズゾンデムは先代である父親の建てた館を改修する必要に迫られた際、町に近い場所へ移転しようか悩んで結局、修理して元の場所に建て直すだけにとどめた。牧場は四万ヘクタールもあるので、敷地の外へ出るまで時間が掛かって面倒なのだが、それでも古い館に愛着があったし、その周りの風景も気に入っていたのだ。

 しかし彼の妻エリザベートは、夫の気持ちが理解できなかった。館の周囲はだだっ広い平原である。雨季は緑の草が生えるが、乾季の今は黄土色の荒地があるだけで、風景といっても文字通り殺風景だ。ギャッジ・アップした介護ベッドの上から窓の外を眺めても、面白くも何ともない。気が滅入るだけだ。そんなときは嫁いびりでストレス発散するほかない。

「ペルシィベローズ! ペルシィベローズ! どこにいるんだい! どこで油を売っているんだい! 何をしているんだい! ああ、具合が悪い! 死にそうなくらい具合が悪いってのに、うちの嫁は一体どこで、何をしているんだい!」

 喚き散らしていると次男の嫁ペルシィベローズが飛んできた。

「お義母様、申し訳ございません。ちょっと用があって、おそばから離れておりました」

「ちょいとペルシィベローズ、あたしは具合が悪いって言っているんだよ。それなのに容体を聞かず、真っ先に言いわけかい? あたしの病状が、そんなに気にならないってえのかい? それとも何かい、あたしの体の具合が悪いのを、喜んでいるんじゃあないだろうね。あたしの体が今よりもずっと弱ってくれって、思っているんじゃないだろうね。あたしの具合がもっともっと悪くなれって願っているんじゃあないだろうね。どうなんだい? ええっ、どうなんだよ!」

「いいえ、お義母様、わたし、そんなこと少しも考えたことがございませんわ」 

「ああ~ああ~めまいがするよ。具合が悪いよ。死にそうだよお」

「お薬を持ってまいります」

「ちょい待ち、ちょっとお待ちってんだよ」

 エリザベートはペルシィベローズを呼び止めて尋ねた。

「この前から薬が変わったようだけど、どうなってんだい?」

 ペルシィベローズは首を傾げた。

「いいえ、お薬は前と変わっておりませんわ」

「おかしいね。風味が違うように感じるんだけど」

 エリザベートは納得しかねる様子である。それを見て、ペルシィベローズが言った。

「メリッサさんにお尋ねしましょうか?」

 メリッサは赤い蜘蛛の巣の館に古くから住む薬剤師兼呪術師だ。先々代より前から暮らしているそうなので、この屋敷で一番の古参である。彼女は様々な薬を調合し、この館で生活する者たちに与えてきた。その薬が無ければペルシィベローズの夫で病弱なエウスクレメントウルは幼いうちに死んでしまった、とエリザベートは信じている。従って、メリッサに疑いを持つことはなかった。

「いい、いい! メリッサが調合した薬なら大丈夫だ」

 そしてエリザベートは、ペルシィベローズが持参した薬を服用した。しばらくすると具合がさらに悪くなり、まもなく意識を失った。ペルシィベローズが慌てて救急車を呼ぶ。町から赤い蜘蛛の巣の館までは距離がある。四万ヘクタールの牧場をサイレンを鳴らした救急車が通る。人はいないが牛や羊がいるのでサイレンを鳴らして追い払わないといけないのだ。しかし家畜たちはサイレンに怯える様子がなく、救急車の進路に寝そべって邪魔をした。そのつど救急車は道路を外れなければならないので、救急隊の到着までには時間が掛かってしまった。

 救急車が赤い蜘蛛の巣の館へ着いた頃には、エリザベートは亡くなっていた。長患いをしていた高齢の女性なので病死だろうと救急隊は判断した。それでも、死亡確認のために病院へ搬送することになった。家長でエリザベートの夫であるクアッドロ・ベルトオリス・エリズゾンデムは進行した認知症のため施設入所中である。そこで次男のエウスクレメントウルと、その妻ペルシィベローズが病院へ同行した。着いた先でエウスクレメントウルは妙なことを言いだした。自分の母エリザベートは、自分の妻のペルシィベローズに毒殺されたのだと。

 聞き捨てならない発言だった。病院側は警察に通報した。警察が病院にやってくる。警察はエウスクレメントウルとペルシィベローズの夫婦から事情を聴くと共に、エリザベートの遺骸を検死解剖に回した。法医学者が老女の亡骸を徹底的に調べる。すると、果せるかな、エリザベートの死体から毒物が検出されたのである。

 警察は裁判所から逮捕令状を取り、ペルシィベローズを逮捕した。容疑はエリザベート・ベルトオリス・エリズゾンデムの殺害である。事件は翌日には報道された。義母を毒殺した若い主婦ペルシィベローズに関する情報が拡散し、人々の間に広く知れ渡るようになった。

 身寄りのない若い女が富裕層の家庭に住み込みで働くようになる。そして、その家の跡取りである次男坊に見初められ、結婚した。家長のクアッドロ・ベルトオリス・エリズゾンデムは結婚に反対したが、彼の妻のエリザベートが結婚を認めるよう説得したのである。かくして、その女は資産家一家の一員となったのだ。しかし、その娘は欲深だった。その家の資産を自由に使うため、自分を雇い、そして一族に加えてくれた恩人のエリザベートを毒殺しようとしたのだ! と憶測に過ぎない記事をさも事実であるかのように報じたのだ。世間の者たちは、毒婦ペルシィベローズと呼んで騒ぎ立てた。

 やがて裁判が始まった。ペルシィベローズを裁く法廷で、重要な証言をしたのがエリザベートの服用する薬物を調合していたメリッサだった。彼女はペルシィベローズが自分の調合した薬を毒とすり替えた可能性を話した。

 法廷にいた全員が驚くほど高齢のメリッサは、警察の調べに応じて、自分の調合していた薬品の全サンプルを提出していた。その中にエリザベートの体内から検出された毒物は認められなかった。一方、ペルシィベローズの自室から発見された薬――メリッサが調合した粉薬に似ているけれども、実際は異なる――は、一度に少量ずつ投与されると体内に蓄積し、毒性を帯びるという研究結果が出た。いうなれば、薬だと思って継続して服用すると毒になってしまうのである。これらの証拠から、ペルシィベローズが有罪との見方が強まった。エウスクレメントウルは妻が欲深な悪女だと触れ回ったので、世間は勿論、裁判官もペルシィベローズに対し悪い心証を抱いた。裁判はペルシィベローズの有罪が宣告された。殺人罪で終身刑の判決である。上告が棄却されたので彼女の有罪が確定した。

 ペルシィベローズが流刑地へ護送される直前、メリッサが亡くなった。しかし何分、生年不詳の高齢者なので、それも当然と思われ、特に話題にはならなかった。エウスクレメントウルの請求により、彼とペルシィベローズの離婚が成立したというニュースも、大きく取り上げられることはなかった。エウスクレメントウルが再婚したとの事実に至っては、報道されることすらなかった。皆、事件のことなど忘れてしまったのだ。

 しかし当事者のペルシィベローズにとっては、そういうわけにいかなかった。身に覚えのない毒殺事件の犯人と見なされ、絶海の孤島のジャングルの中に建つ収容所に閉じ込められ、そこで死ぬまでいることになったのだ。

 ペルシィベローズは絶望した。そして脱走を試みた。ジャングルを流れる泥の川のに入って行われている――川の中には人喰いワニが潜む――砂金取りの最中に、下流へ向かって泳ぎ出したのだ。監視していた看守たちが逃走を制止しようとした。川の中には人喰いワニがいる。そこで泳いだら喰われるだけだ。川を下り海に出たところで、ここは絶海の孤島だ。おぼれ死ぬのが目に見えている。囚人は、それが分かっているので、逃げ出そうとしない。実際ここから脱走した囚人は今までいないのだ。脱走を阻止しようとカービン銃を撃っていた看守たちは、やがて発砲を止めた。何もしなくてもペルシィベローズが死ぬことは分かっていたからだ。

 ペルシィベローズは泳ぎが得意だった。だが無謀すぎた。人喰いワニからは逃げ切ったけれども、荒れる海で波に呑まれた。呼吸ができなくなり、意識が薄れる。そして彼女は幻覚を見た。


 × × × × × × × × × × × × × × × × × × × 


 競兎場へ出かけたっきり帰ってこないケイト女爵を探すべきか? 私は少し考えたが、悩んでも答えが出てこなかった。異世界人の賢者に訊いてみると「自力で戻って来られるだろう」と素っ気ない。

 素直じゃない男だ、と私は腹の底で嘲笑った。賢者はケイトを愛している。本当は、彼女のことが心配で心配で堪らないのだ。不安や緊張が高まると、大きな傷跡の残る頬がヒクヒク痙攣するから、すぐ分かる。

 それでも賢者は、自分に余裕のあるところを見せようと、努力はしていた。窓辺の机に向かい本の原稿を書く振りをしている。賢者は我々が魔王を斃した冒険の書を執筆中なのだ。もっとも、ケイトが出かけた朝から、筆は進んでいない。

 ケイトへの賢者の愛は本物だと私は思っている。魔王を駆除する最終決戦で、賢者はケイトを守って負傷した。魔王が放った攻撃魔法は最上級の回復魔法でさえ完治が困難な傷を負わせる。頬の大きな傷が、その名残だ(服に覆われて見えない部分にも同様の傷跡が残っている)。ケイトが魔王の魔法を食らっていたら、彼女の美貌の多くは失われ、今の賢者のような哀れな外見になってしまっていたことだろう。ケイトにとって賢者は恩人なのだ。

 愛する人の盾となって重傷を負う……メロドラマならば、二人の仲は進展していたことだろう。だが、ここはフィクションの世界ほど甘くないことを、賢者は身に染みて知ったと推察する。美女の身代わりとなって深手を負った賢者は夢想したはずだ。自分のために身を捨てた男に美女は深く感謝し、看護を申し出る。それがきっかけで恋人になれるかも! と思いきや、そんなことはなかった。今も賢者はケイトとパーティーの仲間以上の親密な関係を構築できずにいる。

 ケイトが薄情というわけではない。実際のところ、彼女は忙しかった。魔王を斃した我々パーティーの面々は国王主催の祝賀会に招待された。その席でケイトは武功随一と認められ、爵位を賜った。この世のものとは思えぬ美貌と魔王を破った戦闘力に加え、名誉ある地位を手に入れた彼女は一躍、時の人となる。各地の催し物に引っ張りだこのケイトに怪我人を看護する時間はなかった。愛する人と親密になる機会を失い悲しみに暮れる賢者を慰めてくれるのは、ケイトがデートの誘いを一切拒否していることぐらいだろうか。ケイトは今日も一人で外出した。誘ってほしそうな賢者に大きく手を振って。

 宿に残された賢者は、ケイトに頼まれていた内服薬の調合とBLオメガ光線銃(オメガ線バーストの稲妻で魔王を消滅させ我々の勝利を確定した武器だ)の分解掃除の二つを律儀に遣り遂げた。それから自分の原稿書きに取り掛かろうとして、何も手に付かない有様であることは、既にご存じのことと思う。

 私は何をしていたか、と問われたら私も原稿を書いていたと答えよう。今夜、冒険者ギルド本部で魔王征伐の成功を表彰する祝宴が催される。そこでケイト女爵がスピーチを披露することになっていて、私がその原稿を書くよう仰せつかったのだ。

 賢者に頼んだらどうかと言うと、あの人に頼むと長くなりそうだから、とのご回答。酒宴の挨拶は短ければ短いほど良いと伝えてみたら、と言えば、それじゃ貴方が頼んでよ、とのこと。それはそれで面倒臭いことになりそうなので、自分で書くことにした。

 スピーチは短く簡単でユーモアがあって、聴衆である冒険者ギルドの面々への感謝を示す内容にしたかった。冒険のあらまし特に魔王とのラストバトルは語った方が良いかな、とは思った。だが、それはもう皆が知っている。もう既に聞き飽きている人間だって多かろう。生の体験談を聞きたがる者はいるかもしれないが、それだって実話より派手に脚色された講談話に比べると盛り上がりに欠けると思う(個人的な印象です)。実戦に参加した当事者の私が、街の噂として耳にした最後の戦いの様子は、リアルより凄かった。魔王城の堅固な外壁に時空の亀裂を作って侵入、遭遇した敵をBLオメガ光線銃で始末しながら迷宮を駆け抜けて奥の間へ突入、魔王からの猛反撃で何度も死にかける激しい銃撃戦の末、遂に首級を挙げた――ようである。夜明けと共に始まった戦いが終わり魔王城の外へ出てきたとき太陽は既に沈み、代わりに四つの月が昇っていたのである、と辻の講釈師は語っていた。どうやら私たちは、手に汗握る激闘を半日やっていたらしい。鍵屋の辻の決闘じゃあるまいし、そんなに長くは続かなかった。長く感じたのは、魔王が寝入るのを時空の袋小路で待つ間だ。ケイトからの合図を待って魔王の寝室に忍び込む段取りなのに、それを待たず賢者が押し入ろうとしたので、それを制止するのに大変だったのだ。そのエピソードをスピーチに入れたら笑いが取れるかどうか? と考えて、止めた。大衆は真実を嫌う。自分たちが思い描く幻想に浸っていれば、それで良い。

 魔王との戦いは一言では言い表せません。これで済ませよう、と決めて草稿を書き上げる。これで良いかケイトに目を通してもらいたいが、帰ってこない。競兎場から会場の冒険者ギルド本部へ直入りするつもりなのだろうか? この日のため誂えたイブニングドレスに袖を通さず夜会に出るのは、せっかく買った錦を着ないで故郷へ帰るようなものだろうに。いつものビキニアーマーでも別に悪くないとは思うが。

 エレガントなドレスを着た女爵の雄姿(不思議な表現だ)で冒険者たちの目を楽しませてやりたい一心で――高レベルの女騎士が事件や事故に巻き込まれるとは思えなかった――私はケイトを探すことにした。印を切って部屋の中空に呼び出したホログラフィック型タブレット端末に口頭でパスワードを入力し、この街の上空で待機中の反重力浮揚式無人航空機の母船へ命令を下す。機内からミツバチ大の超小型ドローン十数機が空中に放出された。光学迷彩で目には見えなくなった超小型ドローンは競兎場内に進入し、バニーガールたちが速さを競うターフから建物内部の全室に至るまで捜索したが、ケイト女爵の姿を見つけ出すことは出来なかった。彼女は何処にいるのか? 私には分からない。分かったことは、国中の美女が集められるというバニーガールの中で、ケイトほど美しい女はいなかった、それぐらいだ。それは周知の事実だ。そうでもなければ、魔王を誑かすことなど土台、無理だった。

 競兎場にいないとしたら、何処にいるのか? 市内全域を調べるにはドローンの数が足りない。私に割り当てられたドローンは今の探査で使い切ってしまった。しばらく母船でエネルギーを充填しないと動かせない。

 賢者のドローンを借りるか、と私は考えた。あるいはケイトのドローンを使わせてもらってもよい。私はケイトのパスワードを知らない。だが、賢者は反重力浮揚式無人航空機とドローンに関する一切をよく知っている。運用責任者なのだから、知らない部分があっては困る。彼なら自分のドローンと、パスワードを解除してケイトの分を出してくれるだろう。こんなことにドローンを使うのは反対だ、とか賢者は言うかもしれないが、もう魔王は滅びた。世界が平和になった今となっては、こんなこと以外に軍用偵察ドローンの使い道はない。

 戦うべき相手を見いだせなくなったという点においては、私たちもドローンと同じだった。魔王を斃した私たちは一緒にいる意味を失った。このパーティーは、もうすぐ解散するだろう。

 解散が囁かれているのは冒険者ギルドも同じである。冒険者ギルドは魔王を斃すために結成された同業者組合だ。魔王がいないのなら、存在する理由が無い。国王の近臣の中には、冒険者ギルドの解散を唱える者がいるという噂も流れている。冒険者といえば聞こえが良いけれど、実際はならず者だ。その集団が冒険者ギルドであり、それが王宮と同じ街にあるというのは、危険極まりないというのが理由である。

 勝手な言い草だが、納得できる部分はある。この私も、かつてはならず者だった。先祖代々、山賊を生業としていたのだ。山中を通る旅人や商人を襲って生活していた私たち一族は、同業者である魔王の大軍に敗れ、私以外の全員が死んだ。生き残った私は住み慣れた山中を離れ、この街に辿り着いた。王国の首都に来れば何とかなると思ってのことだったが、都会の風は田舎者には冷たすぎた。生き馬の目を抜く悪党が勢揃いする都で、私はなけなしの金を騙し取られたのだ。困窮して餓死寸前の私を救ったのが賢者と女騎士ケイトだった。食い物が欲しければ仲間になれ、というのだから脅迫しているわけだが、私に選択の自由などありはしない。その日から私はパーティーの一員となった。そして冒険者ギルドにも加入した。提出した書類の職業欄には盗賊と書いた。だって他に書きようがないだろう。

 堂々と盗賊を名乗る奴が私の他にも大勢いるのが冒険者ギルドであり、王権がギルドを閉鎖したがるのも当然っちゃ当然なわけだが、それはこの際どうでもいい。どうして賢者と女騎士ケイトが、数多い盗賊の中から私を選んだか、という話をする。簡単に言うと、ドローンを操れるからである。目を見れば分かるのだそうだ。冒険者ギルドから紹介された者に、その条件に適合する人間はいなかったらしい。

 冒険者ギルドは、武器や食料や宿泊施設を会員に安値で供給する以外に、会員同士でパーティーを組ませて冒険に送り出すサービスを提供している。一人では不安でも徒党を組めば怖くないってわけだ。賢者と女騎士ケイトは、そのサービスを利用し、パーティー加入希望者との面接を繰り返したが、二人の希望に沿う人間は現れなかった。二人が必要としていたのは、ドローンに代表される超時空技術を使いこなせる人物だった。この世界で生み出された兵器体系ではないため、この世界の住人では扱いかねる代物を、どうして私が使えるのか? 理屈は分からないが確かに、ホログラフィック型タブレット端末もドローンもすぐ使えるようになったし、時空裂開デバイスドライバーとバールのようなもので時空の隙間をこじ開けるテクニックは二人よりも上手になった。辛うじて読み書きが出来る程度の学力しかなかったのが、膨大なデータベースを閲覧しているうちに異世界の歴史――太閤秀吉が大の女好きだった逸話や、女装して敵を斃したヤマトタケルの故事は参考になった――にまで詳しくなった。賢者が推察するには、私の先祖に賢者自身と同じ世界からの人間の血が混じっているのではないか、とのことだった。賢者の世界の人間は遺伝子改造手術を受けており、その恩恵で魔法のような最先端技術を利用できるのだが、私にもその遺伝子が受け継がれている可能性があるということである。

 表立って反対はしないが、私の意見は別だ。私の先祖は賢者と同じ世界から来た人間を食べてしまったのだと思う。先祖が体内に取り込んだ異世界人の遺伝情報が先祖の遺伝子に組み込まれ、私に覚醒したと考えたのだ。生殖細胞の働き以外で遺伝情報の受け渡しは出来ないように思われるが、骨髄移植で血液型が変わることはあるから、ありえない話ではないだろう。

 女騎士ケイトも、私と同様に異世界の高度な技術を自在に操ることが出来た。だが、彼女は私のような食人族の出身ではない。地方領主の娘である。彼女の親を含め一族郎党全員が魔王の軍勢と戦って討死したので孤児となった。まだ子供だったケイトが、どうやって生き延びたのか? 魔王の体から飛び散った肉片で食いつないでいたというのだから人食い人種の私も驚いた。

 彼女の両親は優れた戦士であり、優秀な魔法使いだった。二人の攻撃は魔王を斃す寸前まで行った。傷は肉だけでなく、骨を砕き、魔王の脳・心臓・肝臓その他の内臓にまでダメージを与えたのである。二人に率いられた軍勢も並外れた精鋭揃いだったので、魔王の軍団は勝つには勝ったが大打撃を受けた。魔王自身も重傷を負い、麾下の兵力の損耗も大きかったので、さしもの魔王も王国首都への攻撃を諦めざるを得なかった。そして傷が癒えるまで迷宮の奥で療養を余儀なくされたのである――が、それはさておきケイトである。ただ一人生き残ったケイトは、両親の攻撃で傷ついた魔王の体の肉片を食べ、そして復讐を誓った。その願いが神に届いたのだろうか、ケイトは両親から受け継いだ戦闘能力に加えて魔王の魔力も身に着けたのである。

 ちなみに賢者によると、魔王の魔力とは増強された超能力であるとのことだ。ケイトは魔王の肉を食べたことで、魔王の超能力を使えるようになった、というのが賢者の唱える仮説である。どうして魔王の超能力に詳しいのか、と賢者に尋ねると、深い因縁があるとの話。それは魔王の超能力が深くかかわっている。

 超能力は人間に生まれつき備わっているものなのだそうだ。ただし、とても微弱な力なので何の役にも立たない。だが、元の世界にいた頃に賢者は超能力の研究を重ね、実用化の方法を発見した。細胞内で働く特殊なタンパク質が超能力を増強させるという動物実験の結果の基づき、賢者は当局に人体実験を働きかけた。軍事転用可能な超能力研究だったので、政府機関は賢者の誘いに乗った。何が起こるか分からないので、一般人を相手に実験するのは憚られた。そこで当局は刑期短縮を条件に囚人を対象とした人体実験を行った。その被検者となった囚人百名の中に、後の魔王がいた。他の九十九名には何の効果ももたらさなかったが、魔王は予想を大きく上回る超能力増強効果を示した。唯一の、そして最大最強の超能力者となった魔王は、当然ながら刑務所を脱獄し、追及の手を逃れて別の世界つまり、この世界へ逃亡した。責任を感じた賢者は逃亡者を追って、この世界へやってきた。魔王一派を狩るために設立された冒険者ギルトに加入し、魔王ハンターとなる仲間を探す。条件は私と同じ、ドローンその他の異世界テクノロジーを使える能力の有無だ。冒険者ギルドのマッチングサービスで適合したのが、女騎士ケイトだった。魔王の肉を食ったことで超能力のみならず、魔王と賢者の世界の人間なら誰でも使えるテクノロジーの遣い手になっていたのだ。

 だが、まあ、それだけではないだろうなって気はする。賢者はケイトに一目惚れしたのだ。だからこそ、自分が人身御供となって魔王に接近し、その隙を窺うという彼女の発案に反対したのだと思う。賢者は私にも反対するよう求めてきた。しかし私はケイトの案に賛成した。魔王は手下に女を集めさせている。魔王城の地下深くにある迷宮の奥にハーレムを建設しているらしい。魔王は元の世界では連続婦女暴行犯だったので、さもありなん、ではある。超能力を持つ変質者が異世界でやることと言ったら、それしかないような気がしなくもないけれど、ハーレムに入り浸りになってしまったのは厄介だった。酒池肉林が災いしてケイトの両親に痛めつけられた傷が回復していないため外出を控えたのかもしれないが、我々冒険者の側にとっては不都合だったのだ。超常の魔力で守られた魔王城への潜入は極めて困難だったためである。内部に向かった冒険者は誰も帰還しなかったので、魔王を狩るには野外決戦しかないと思われたが、ハーレムに耽溺する魔王が外に出ることはごく稀で、そんなチャンスは無かった。私は魔王でも、そうしていたと思う。魔王にしてみれば冒険者ギルドの面々が待ち構えるところに出向くのは馬鹿らしかったはずだ。晩年は戦仕事を家臣に任せ遊んで暮らした自称<第六天魔王>織田信長なら納得するはずだろう。

 それはともかく、魔王を確実に仕留める方法が見つからず、私たちは攻めあぐねていた。鍵となるのは時空裂開デバイスドライバーとバールのようなものだった。これらを使って亜空間へ侵入することで、この世界の障害物を迂回可能となる。ただし内蔵するエネルギーが長持ちしない。魔王の根城まで辿り着く前にエネルギー切れを起こすと、時空の迷路を永遠に彷徨うことになる。魔王の居場所へまっすぐ進むために。魔王城の構造を知ることが重要だ。光学迷彩の超小型ドローンは魔王城内だと電波が届かなくて使えない。内部に潜入して調査しなければならないが、どうするか……という段になって、ケイトがハーレム入りを申し出たのだ。

 ハーレムのオダリスクになれば中の様子が分かるかもしれない、とケイトは理由を述べた。危険だが妙案だった。史上最強の魔王でも弱みがある、それは美女に目が無いこと。そんな世間に広く知られた事実に基づく潜入計画だった。悪くないと私は思ったが、賢者は反対した。そんな危ないことはさせられないというのだ。

 ケイトは反論した。ハーレムに入った女たちが殺された例は今のところ無いというのだ。それは推測の域を出ない噂にすぎないが、一部の者たちには信じられていた。ハーレムに入れば贅沢が出来ると考える女も思いのほか多くいた。美味しい物をお腹いっぱい食べて、奇麗な服を着て、働かずに遊んで暮らせる後宮生活を夢見る(自称)美女たちは次々と魔王城に乗り込み、誰一人戻って来なかった。

 悲観論者は殺されたと考え、楽観論者は彼女らが待望のハーレム生活を送っていると羨んだ。どちらが正しいのか、ケイトが身をもって証明することになる。断固反対の賢者だったが、ケイトを説得できないと知るや、外部と連絡可能な超小型通信機を開発し、それをケイトの両脇に埋め込みたいと言い出した。通信機の埋め込み手術を受けてもらえば、緊急時に連絡が取れるというのだ。こちらにSOSが届く頃にはもう手遅れという気がしたけれど、私は何も言わなかった。ケイトと賢者の問題だからだ。ケイトは手術を受け、それから魔王城へ向かった。その通信機を使ってケイトが連絡を寄越したときの賢者は恐れおののいて、自分が死にかけているみたいだった。ケイトが思念で描いた地図を片手に時空裂開デバイスドライバーとバールのようなもので時空の隙間をこじ開け、私と賢者は亜空間へ突入した。ケイトが示した魔王城の座標に出口を設定し、彼女からの合図に合わせて通常空間に飛び出す。魔王の寝室は、予想よりも簡素だった。そこに全裸のケイトが立っていた。魔王は半裸で横たわっていた。亀甲縛りの縄を服に含めるのか疑問だが。雁字搦めに縛られ動けない魔王を、私と賢者はBLオメガ光線銃で射殺した。断末魔の魔王が放った攻撃魔法がケイトを襲ったが、賢者が身をもって庇ったことは、既に触れた。私たちは魔王の屍を四次元ポシェットへ放り込んだ。討伐の証拠品にするためだ。それから時空の亀裂を伝って外へ出た。その間、ケイトは賢者を労わっていた。その後もしばらくケイトは賢者を看護していたので、もしかして二人はうまくいくのかな、と私も思ったが、そうはならなかったようだ。私がケイトの立場なら、賢者に惚れそうなものだが、うまくいかんもんやねえ。

 ケイトの居場所を探し続けているうちに、外は暗くなってきた。やがて賢者が私の部屋を訪れた。酷く深刻な表情である。自分の部屋に来て欲しいとのこと。断る理由も無いので行ってみると、ケイトがベッドに横たわっていた。後ろ手でドアを閉めて、賢者は言った。

「ケイトが死んだ」

 私はベッドへ歩み寄った。目を閉じて仰向けに寝ているケイトの手を取り、脈を測る。

「そのようだな」

 私は手を元に戻した。体に掛かった白い布を顔まで引っ張り上げるべきか少し悩んで止めた。別の布を宿の者に頼んで持って来てもらった方が良いと判断したから、それから、それより先にすべきことがあると思ったからだ。私は振り返った。青ざめた賢者が唇を細かく震わせている。その唇は開いた。

「時間が無い。一気に話すから、質問があるなら最後に頼む」

 私が頷くと、賢者は一気呵成に語った。ケイトは魔王の子を妊娠した。色々な堕胎の方法を試したが、胎児は強靭な生命力の持ち主で、どれもうまくいかなかった。ケイトの頼みで自分が人工妊娠中絶薬を作って飲ませたが、胎児と一緒にケイトまで死んでしまった、と。

 話し終えた頃には、賢者の唇は紫に変色していた。顔が土気色になりつつある賢者に、私は尋ねた。

「その薬を、お前も飲んだのか?」

 賢者はかすれた声で言った。

「飲んださ。製造者責任だよ。毒を飲ませたんだから、こちらも毒を飲まないとな」

 もう遅いと分かってはいたが、言わざるを得ない。

「これは悲劇だが、事故だ。お前に責任は無いし、あったとしても、お前だけのせいじゃない。ケイトも私も、こういうリスクを考えて作戦を立てたんだ。私にだって責任がある。お前が死ぬことはないんだ、教えてくれ、解毒剤は何処にある?」

 賢者は首を横に振った。

「ケイトがいない世界は無意味だ、生きていても仕方がない」

 何をそこまで……とは思うが、それは人それぞれだろう。賢者の呼吸が次第に荒くなってきた。最期の時が近づいているようだ。二人きりの時間を邪魔するのは野暮だと思った私は、外に出ようとして呼び止められた。

「目が見えなくなってきた。手伝ってくれ」

「何を?」

「何の手伝いを頼む」

 ケイトへの思いを遂げてから死にたい、というのが賢者の願いだった。正直、私は困った。それは屍姦というやつだ。私はノーマルな性癖しか持ち合わせていない人間なので、どういうリアクションをするべきか分からない。

「それって、どうなんだろう。ベッドの隣に身を横たえる程度で、どうかなあ」

 賢者はカラリと笑った。

「昔、読んだ本でな。そういうのがあったんだ。六文銭の何とかっていう凄い漢が、死にかけながら、死んだ恋人の体を抱くんだ。あれに、憧れてなあ」

 その本は私も読んだことがある。

「恋人の名前は朱鷺、だったよな?」

「そうだ」

 ならば、私が口を挟むことは無い。いや、あった。

「……何をどう手伝えばいいんだ?」

 ベッドが何処にあるか、教えてくれ、と賢者は言った。お前の少し前だ、と教えたら、何だ、聞くまでもなかったな、と笑いやがった。しばらく経って、二人はつながった。見るのは失礼だよな、と分かってはいたが、目を離すことは出来かねた。間もなく賢者の動きは止まった。私は葬儀について考え始めた。

「二人を一緒の墓に埋めてやりたいが、埋葬の費用はどうなるんだろう。死体は埋めずに骨まで砕いて食べるのが流儀の一族に育ったから、分からないなあ」

「埋めるのは賢者の死体だけで十分よ。あたしは死んでないから」

 聞く者は誰もいないと思って独り言を呟いていた私は、大いに驚いた。ケイト女爵は自分に覆いかぶさっていた賢者の亡骸を両手でつかむと八つ裂きして投げ捨てた。そのままベッドから体を起こす。ふざけた口調で語り出す。

「蘇ったケイト女爵が命じる。我が僕となれ。拒むのならバラバラにしてやる」

 蘇ったケイト女爵は私の知っている女ではなかった。相変わらず美しい。しかし全身から漂う妖気と殺気は以前には無かったものである。私は尋ねた。

「魔王がケイトの体を借りて蘇ったってことか?」

「違う。魔王の力を吸収したの」

 魔王の体から飛び散った肉片を食べたら魔力が備わった。体を交えたら、どうなるか? もっと凄いことが起こるに違いない! 魔力が強まって、交接した魔王を操れるようになるかもしれない! 少女時代から魔王との性交を夢見ていたケイトは、魔王城のハーレムで行った人体実験にて自らの仮説が正しかったことを証明した。次は、魔王の子供を宿したら何が起こるのか、という実証実験の段階になる。妊娠の結果、魔力は増強したが、期待値を下回った。その原因として、体内で育つ胎児の栄養に魔力が流用されていることが考えられた。魔王の子供を生んで育てるつもりなど全くないので、せっかく蓄えた魔力を胎児の成長に使われるのは迷惑千万だった。胎児を子宮内で殺して胎盤ごと吸収し自分の栄養素に変えてみよう! と思い立った彼女は賢者を利用して胎児を殺す薬剤を作らせた。自分も一緒に死にかけたが、これまた大成功! 今までとは桁違いの魔力を得て生き返り、現在に至る――とケイト女爵は私に説明した。私は質問した。

「どれだけ凄い魔力が備わったというんだ?」 

「例えば、私の子宮は強大な魔力を生み出す器官になったの。ここから発射される魔法エネルギーは地平線の彼方まで焼き払うことが可能よ」

 もろ出しの股間を自慢気に指さすケイト女爵に、昔日の――ほんの少しだけ昔の――面影は無かった。だが、その面影そのものが虚像だったようだ。死んだ賢者は偽りのケイトを愛したのだ。

 いや、もしかしたら、こっちのケイトも変わらずに愛し続けるかもしれないが、今となっては確かめようがない。

「そろそろ答えてちょうだい、ここで賢者と一緒に死ぬか、私と来るか」

 ケイトは舌なめずりして言った。

「ずっと言えなかったけどね、ちょっと好みのタイプなのよ、あんた」

 残念だ、こっちはまったくタイプじゃない――とは言えないので別のことを話す。

「その股間からビューっと出るやつ、見せてもらえるかな。それを見てから決めるよ」

「好きものなのね、あんた」

 ケイトは股間をまさぐった。急に顔を赤らめる。

「やだ、あの男のあれ、まだ入ったままじゃない」

 自分の亀裂に突き刺さったままになっている賢者の一物を引き抜こうとして抜けず、ケイトは押したり引いたり捻じったり回したりを繰り返した。そのうち身悶えて何度も弓なりになった。その姿が隙だらけだったので、私はホルスターからBLオメガ光線銃を抜いてケイトを撃った。賢者の一部とケイトの全身は一緒に消滅した。新鮮な空気が吸いたくなった私は、銃をホルスターに戻し、窓辺に立って窓を開けた。四つの暗い月が浮かぶ夜空に天の川が見える。ふと思った。BLオメガ光線銃で天の川を消滅させたら、彦星と織姫は私を感謝するだろうか? 銃をホルスターから抜きかけて止める。男女の仲は、他人からは計り知れぬものがある。余計な真似はしない方が良いだろう。


 × × × × × × × × × × × × × × × × × × × 


 かつて見た幻覚の夢を見たペルシィベローズは小さな悲鳴を上げて目覚めた。体を強張らせた彼女に気づき、隣で寝ていたクアッドロ・ジュニアが優しく抱き締める。

「大丈夫かい?」

「ええ」

「怖い夢でも見たのか?」

「うん……でも平気。何も怖くない」

 あなたがいるから、とペルシィベローズは呟いた。

 何があってもクアッドロ・ジュニアが助けてくれるという確信が、彼女にはある。実際、絶体絶命の窮地を救われている。荒れる海で溺死するところだった彼女を、この男が救い上げたのは、必ずしも偶然ではない。

 クアッドロ・ジュニアは、ペルシィベローズを脱獄させるため、島へ向かっている途中だった。無実の罪で収監されている彼女を救おうとしたのだ。それは同情のためばかりではない。一つは復讐のためだった。

 このクアッドロ・ジュニアは、クアッドロ・ベルトオリス・エリズゾンデムとエリザベートの第一子である。だが両親と不仲となって家を出たので、後継者は次男のエウスクレメントウルとなっていた。長男のクアッドロ・ジュニアが家を出たのは理由がある。メリッサの正体が魔女だと見破ったため、彼女から命を狙われたのだ。

 両親は長男の告発を信じなかった。メリッサに洗脳されていたのである。逆に両親はクアッドロ・ジュニアの正気を疑った。自分を異常者として自宅の地下へ閉じ込めようと画策していることを知り、彼は逃げた。そして、母のエリザベートが毒殺された事件を知った。容疑者は弟エウスクレメントウルの美しい嫁ペルシィベローズで、彼女が有罪となったことも。

 メリッサが主犯で、エウスクレメントウルが従犯だとクアッドロ・ジュニアは確信した。やがてメリッサが亡くなったことを知ったが、実際は死んでいないとも思った。魔女のメリッサは一定の時期が来ると若い女に姿を変える。案の定、エウスクレメントウルが素性の分からない娘を再婚した。

 その新妻、実は転生した魔女メリッサ! とクアッドロ・ジュニアは断定した。魔女メリッサは、とうとう実家を乗っ取ったのだ。許せることではない。彼は復讐を誓った。しかし、それは困難である。相棒がいる。彼が白羽の矢を立てたのが収監中のペルシィベローズだった。無実の罪で人生を奪われた弟嫁なら、強い復讐心で自分をサポートしてくれるに違いないと思ったのである。

 だが、理由はそれだけにとどまらない。クアッドロ・ジュニアは、弟嫁を愛していたのだ。

 二人は赤い蜘蛛の巣の館に戻り、魔女メリッサとその夫というか下僕エウスクレメントウルへの復讐を果たした。今は、新婚旅行の途中である。この幸せを絶対に離さないと、夫の腕に抱かれたペルシィベローズは誓うのだった。

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