第16話 老婆のちゃぶ台返しに辟易話

SURREALISM VERSION:15


生還論 過誤死魔から愛を込めて/黄泉一労

「死魔に侵された老婆の逸話」

アカシア病院 観察室。腹痛を訴える、ひとりの老婆が居る。

誉田千恵子 年齢不詳 入院歴3カ月/1回目


誉田さんは空腹だから腹痛が起こっているのに

頭で理解出来ないせいか、上げ膳据え膳を無下に断った。

時には日々の配膳食を、

熱血親父のようにちゃぶ台返しの要領でひっくり返すことも。

「食べられんっちゃあねえ~~~!」悲痛な叫びを

「食べられんっちゃあねえ~~~!」何度も繰り返す。


完全に過誤であり、死魔に侵されたCASEである。

アカシア病院に入院経験があると言い張る黄泉は

観察室で、誉田さんと相部屋になった記憶が残る。

誉田さんは黄泉とトモダチになりたかった様子で

実際に口に出してそう言った履歴も残っている。


黄泉は誉田さんの不調時には、随時、ナースコールを押して

処置対応を求めた。彼女はナースコール自体を欲しがったが

きちんと黄泉に対しても、感謝の念を抱いていたようだ。


老婆 は一日にして奈落、面白半分に見出しを付けるなら

ローマは一日にして成らずのもじりがこの状況に付随する?

黄泉が振り返るに、誉田さんは真綿で首を締めるように

一日一日と病状が進行して行った印象が拭えない。

事実、彼女は入院の後半を車椅子に乗って過ごした。

自力歩行出来ないほどに、両脚の筋力が落ちたと見ていいだろうか?

***

SURREALISMの直訳は「超現実(主義)」である。

老婆の闘病記は「超現実」のカテゴリに該当する?

極限まで追い詰められた感じは「超」を付しても良いような気も。

死魔と表現する病気の進行具合からの生還は、言葉以上に難しい。

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