第3話 飛び入り参加

 女の家は先日の待ち合わせ場所である小さな駅から徒歩半時間ほどの、かなり外れたところにあるアパートの一室である。


アパートの前まで着くと、体力のない僕はまず息を整えることに集中した。それから一階の一番手前側の扉をまず見つめ、覚悟を決めた。呼び鈴を鳴らす。


「……………」


もう一度鳴らしてみるか。扉の横に備え付けてある小さなボタンを押して、またしばらく待機する。


しかし、待機の末に返ってきたのは先ほどと同じような沈黙だった。


どうやら留守にしているらしい。下半身に蟠りが残るが、仕方ないので家に帰ることにした。



 収穫を得ることができず、再び単調な道を引き返していく。人はあまり見つからず、傍に見えるのは住宅、住宅、広い空き地にまた住宅という面白みもない景色だった。どうりで、ここは僕が住んでいる市でもかなり外れの方である。



 しばらく歩いて、前方に駅の看板が見え始めた。小さな駅だがいちおうこの街の中心地であるようで、ビルこそないものの小規模な個人経営の店だったり診療所だったりが並んでいる。


その中の一診療所から見覚えのある細身が真っ黒な帽子をかぶって姿を現した。ついさっきまで僕が性のはけ口にしようと考えていた女だ。その女の歩き姿に目を取られ、歩くのを止めてしまっていた。


どうやら病院にかかっていたらしい。僕はその女を気遣う気持ちで、何も話しかけずに立ち去り、またしばらくしたら家に伺おうと考えた。



 一週間経ち、現在授業中である。結局、なんの成果も得られなかったものだから、僕の集中力は回復する見込みを見せることはないままだ。


最近は、周りにいる女子を片っ端から眺め、好き勝手に妄想するなどという行為に走ってしまうものだから、いつか理性を失って警察沙汰になるのではないかという自分に対する恐怖も心の内に引っかかっている。


そろそろ大丈夫か。今日は午後に授業が入っていないので、もう一度あの女の家に行ってみよう。


気持ちを落ち着けるために考えたことだが逆効果で、考え始めると興奮が止まらなくなってしまい授業が終わると一目散に教室から飛び出した。



 家からではなく大学からだと、女の家はさらに遠くなる。電車に揺られながらなんとか昂る興奮を抑え、目的地に到着した。


 走って女の家に向かう。先週は気持ちを落ち着けてから女の家の呼び鈴を鳴らしたが、今日は扉の前まできて間髪入れず呼び鈴を鳴らした。


 しばらく返事はなかったが、家の中から物音がする。おそらく中にいるものだと思い、少しだけ待つことにした。待った末、よかった、今回は扉が開いた。


扉を開けたのは女だった。しかし、家の中をふと目にすると女は一人でいたわけではないようで、扉の奥から話し声がした。女は


「あんた、この間の…」


とだけ話して、驚いた顔をしている。薄着をした女に、申し訳ないと思っているが気持ちが抑えられないというような旨のことを慌てて説明した。女はしばらく微妙な顔をしていたが、前回よりも高い値段を払うことで了承してもらった。


 女に連れられ家に上がる。今回はなんだか前回したような匂いがせず、代わりによく嗅いだことのある異臭がかすかにした。


突然、部屋の中の扉が内側から開かれた。そこで目に入ったのは裸の男である。どうやら、先客がいたようだ。それも一人ではない。


裸の男が三人、部屋の中にいた。



 


 








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年増と大学生 青い葉 @sousousou___

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