第2話 依存

 何枚も重ね着された高級服を脱いだその女の体は、重ね合わせるだけで骨を感じられるほど細かった。しかし、その女体の細さゆえか潜り込んだその部屋は想像以上に狭く、それでいて柔らかかった。今までにないほど硬くなった僕自身に直に締めつけている女の中身がまとわりつき、手で握られているかのように絞られていく。下半身と代わって口内は女が攻めた。甘い塊と液体が僕の口の中を満たし、そして溢れ出していく。さらに女の両手の親指は上半身の突起に触れ、それと連動して女の中で暴れている肉棒が小刻みな電気のように心地よく刺激された。胸の中に温かい何かが広がり、次に顔が熱くなった。耐えきれなくなった僕は先端から大量の液体を女の膣内に注ぎ込んだ。僕の口内を女がそうしたように、狭く柔らかい部屋を今度は僕が液体で満たし溢れださせた。


 男女の体液で重くなったシーツを洗濯機に放り込み僕の初体験は終わった。その後、六万、九万と加算された料金を支払うため女の監視付きで金をおろした。一人暮らしの大学生にとってこの出費は痛いものだったが、先程まで味わっていた気持ち良さには十分引き換えられると感じた。このようにして女は金を稼いでいたのだろう。別れの際も名残惜しくなってしまった。この女の武器である性交渉のための体と洗練された技術、そして行為中以外の冷たい態度に僕の心は虜になっていった。


 その後、何日経ってもあの女の感触を忘れることができなかった。常に変態的なことを考えているのは以前と変わらないが、今まで以上に大学生活に集中できていないようだ。上の空で過ごすことが増え、夜の自慰行為も物足りなくなってしまっている。もう一度、セックスがしたい。気になっていた女の子のことなど今はどうでもいい。大学卒業が危うくならないためという言い訳をして、もう一度出会い系サイトで別な女に会う約束を取り付けよう。それで気分が晴れるはずだ。

 

 とはいえ、たった一度の出会い系サイトの利用でこれだけ早く童貞を捨てることができたのは幸運だった。出会い系サイトだって健全な目的で利用している人もいる。本来、それが目的なのだからそのような人の方が多いのは当然だ。めぼしい女を探していっても自分と同じような目的で利用している人もあまり見つからない。もしいたとしても初回で行為に至ることなどほぼないだろう。


 馬鹿馬鹿しくなった僕は意を決して、「もう一度あの女に会う」ということを思いついた。連絡先の交換はしてなくても、女の家にまでいったのだから住所は知っている。そうと決めたら止まらない性格だ。就活で武器にしたその行動力で、次の日僕はさっそく女の家を訪問することにした。


 

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