step7:外堀を埋めておこう②
「ここに、座っていいですよ」
私はポンポンと自身の太ももを軽く叩きながら、白馬さんに座るよう催促した。
これが私の積極的アプローチの第一策。
理想は私の上に白馬さんが座って、後ろからギュッと白馬さんに抱きつきた――げふんげふん。
白馬さんと密着することで、彼女に私の温もりを知ってもらいたい。出来るならば、刷り込ませたいのだ。
しかし、やっぱり最初は白馬さんも戸惑っていた。周りの目を意識せざるを得ない環境でずっと生きてきた彼女だから、まぁ仕方ないけれど。
私は一度立ち上がり、私よりも背の高い白馬さんの耳元に背伸びをしながら口を寄せる。
そしてコソッと囁いた。
イメージは、メスガキor小悪魔。
「まだまだ序盤なのに、こんなことも恥ずかしくて出来ないんですか?……お・う・じ・さ・ま♡」
「〜〜〜〜〜っ」
白馬さんはくすぐったかったのか、ビクビクッと震えたあと、顔を朱色に染めながらも王子様然としたキリッとした表情に切り替え、何事も無いように言った。
「………はぁ、まったく」
これを私は了承の意味と受け取り、はやく抱きしめた―――げふんげふん。
はやく私の温もりを分からせたいので、嬉々として再び白馬さんの席の椅子に座った。
両手を広げて、『おいでおいで』と意思表示する。
そして白馬さんは私に歩み寄り………
「わっ!?わーわーわー!???」
彼女は私の手を引き強引に立たせると、自分の席に優雅に、自然な流れで座り、その膝上に私をポフンとのっけて座らせた。
「普通は逆だろう?この位置が、僕と君の、正確な位置だ。………覚えておくように♪」
そう言いながら、彼女は私のお腹に手を回し、私がやりたかったことをそのまま、ギューっと抱きしめられる。
な、なななっ!
なんだなんだ!?
白馬さんのその言葉は、まるで今のこの状況。白馬さんの膝の上で『ぬいぐるみ』のように愛でられる私が正しいポジションだと示されているみたいだ。
納得いかない!
それに、、、
「また君って呼んだ!私のことは、名前で呼んで欲しいと言いましたよね〜!!」
「あはは。今の君は、まるでお転婆なお姫様だね」
「〜〜〜っ!!また言った!!!」
もはやこの時の私たちは、周りの目なんてもう、これっぽっちも気にしてなどいなかった。
「それにしても、温かいね。香ちゃんは」
「っ!!」
ギュッと後ろから抱きしめられ、互いの距離がゼロになってるから、彼女の声が私の耳の真隣りから発せられる。
控えめに言って、やばい。
声が良すぎるんだよなぁ、この王子様は!
心臓がもたない。
しかし奇しくも、私の目的である『私の温もりを知ってもらう』という第一段階は、想像とは違えど達成されたのだった。
◇ ◇ ◇
そんな積極的アプローチ計画初日を迎え、その日以降も私は休み時間やお昼休みなどなど、二人が暇な時間はぜーんぶ、白馬さんの膝上で過ごした。
それは、、、
「おーい。君の攻略対象である僕がこんな間近にいるのに、他のことで考え事かい?……随分と余裕があるみたいだねぇ、お姫様」
今も変わらない。
今日も今日とて、休み時間に私は彼女の膝上に座っていた。
「………すみません。少し過去を振り返っていました」
「ふーん。……それは、僕の上に座っている最中にやることだったの?」
「うーん……。そうですねぇ。違うかもしれませんけど、でも考えてたのは有栖さんのことだけですよ」
「僕のこと?」
「そうです。いつも私の脳内は有栖さんでいっぱいなんですよ?知りませんでしたか??」
「ふ、ふーん?ま、まぁ、べつに香ちゃんが何を考えてても僕は気にしないけどね」
そう言いながらも、顔は見えないけど白馬さんの声音は幾分か弾んで、嬉しそうだ。
それにしても、かれこれ一週間は彼女に抱きぬいぐるみ状態にされ続けていた私だけれど。
どうだろうか。
白馬さんもそろそろ、休み時間は私の体温を感じてないと寂しく感じるくらいには依存してるんじゃないだろうか。
………試しに、ちょっと今からお手洗いを理由に離れてみて、次の休み時間も彼女の傍からは離れてみよう。
そう思って私は彼女が私のお腹に回す手を解こうとしたけれど――――
「はぁ。………それにしても、ほんとに
――――私は固まった。
と言うか、今の言葉で心臓が爆ぜたかと思うほどバクンバクン鳴り出した。
や、やっぱり、離れて検証するのは明日にしよう。
こんな嬉しいことを好きな子から言ってもらえたんだから、今日まではね、好きに抱きしめられてあげようじゃないか。
えへへ///
ほんとにはやく私のこと大好きになってくれないかな白馬さん。
そうじゃないと、私の彼女に対する『
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一方的に王子様が堕とされるだけじゃ私は物足りないので、やっぱり手篭めにされる主人公も書きたかったのです。
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