step2:さりげないスキンシップを大切に
うちの女子校で『王子様』と呼ばれている女の子、
朝早くに起きて身支度に時間をかけて、学校でお腹が鳴らないように朝ごはんをしっかりと食べてから、適度な時間に家を出る。
私が教室につき、出入り口から少し顔を覗かせると、、、
「(あ、いた………。はぁ、今日もかっこよくて、可愛いなぁ白馬さん)」
あらかたクラスメイトたちが集まってる教室で、意中の相手を見つけることは実に容易いことだった。
ん?でも、あれ?なんだろ??
なんだか、少し白馬さんの様子がおかしい。
どこか、ソワソワしてる?ような気がする。
あ、ひょっこりと顔を覗かせてる私と白馬さんの目が合った。
すると彼女はトテトテと早歩きで私のところへ向かってくる。
そうして私の目の前で立ち止まると、
「や、やぁ。おはよう」
まさか彼女が特定の誰かに歩み寄り挨拶をするなどと、誰も思っていなかった。もちろん私もそんなことは想定していなかったものだから、すごく驚く。
白馬さんは声音はいつもどおり、王子様然とした雰囲気だったけれど、昨日とは違って視線が右往左往している。
挨拶をしてきたのに、全然私の顔を見てくれない。
「おはようございます、白馬さん」
とりあえず挨拶を返してみる。
「あ、あのさ……。き、昨日のことなんだけど」
昨日のこと?
と言うと、告白のことしか有り得ないよね。
あ、
も、もしかして………。
昨日、キスしたこと。
怒ってるのかな?今もやたらと目を合わせてくれないし。
もしかしたら白馬さんは、突然、私なんかが口付けをしたことにご立腹なのかも。
「ちょっと、二人きりで話せないかな?」
「…………はい。わかりました」
どうしよう。
これ、凄く怒られたあとに、もう僕には金輪際関わらないで、とか言われてしまうのでは?
そうしたら、私の計画は破綻してしまう。
…………いや。
ポジティブに考えよう、私。
プラン通りに行くと、今日は白馬さんと二人きりの時に『さりげないスキンシップ』を多くすることが目標だ。
そもそも彼女と二人きりになれる機会が滅多に無い中で、向こうからそのチャンスを作ってくれたと考えれば、多少は思考もプラスに働く。
「そ、そっか!じゃあ、また今日の放課後に教室に残ってて!」
私が了承すると白馬さんは途端にお姫様みたいな華やかな笑顔で、昨日、私が彼女に伝えた内容と同じようなものを言い残し、再び教室の自席へと戻って行った。
なんで今、彼女は嬉しそうにしたんだろ?
まさか、私と二人きりになれるのが嬉しかったから、とか??
いや、それは無い。
幾らなんでもポジティブに考えすぎだよ私。
なにせ、昨日こっぴどくフラれたばかりなんだから。
昨日今日で彼女の態度がそんな、コロッと変わるとは思えない。
じゃあなんだろ?
まさか、そんなに私を怒りたくて仕方なかったとか???
これは前途多難かもしれない。
◇ ◇ ◇
そうしてあっという間に約束の放課後が来てしまった。
今日は誰にも聞かれたくない話をしたいとかで、わざわざ教室で二人きりになってから、更に「ついてきて」と言われ私は白馬さんの後ろを歩く。
ぴったりと。
当然のように、白馬さんの制服の袖をちんまりと掴みながら。
私は彼女のすぐ後ろをついて歩く。
傍から見れば平然と見えるかもしれない私だけれど、実を言うと今、緊張と不安でどうにかなってしまいそうだ。
「ど、どうして、そんなに近いのかな?」
未だに目線を私に合わせてくれない白馬さんが、吃りながらそう言ってくる。
よく見れば彼女の顔はほんのりと赤く。
顔が赤くなるほどに、怒っているのか、彼女は。
きっと誰にも聞かれたくない話だって言って場所を移すのも、これから私に怒る時、その怒っている姿を万が一にも他の生徒に見られたくないからだろう。
不安だ。
本当は今すぐにでも逃げ出したい。
けれど、ここで怯えて逃げてしまっては、もう白馬さんとの関係はこれっきりで終わってしまう。
ならば、あまんじて怒られたうえで、さらに白馬さんを私に意識させるようなスキンシップをすれば良い。
彼女が、私を突き放せないほどに、彼女の脳内に私を刻めば良い。
「まぁ、いいか。それよりも、ここの空き教室で話をしよう」
「………はい」
私たちは誰も来ないであろう空き教室に入った。
空き教室には、列と呼べるものは無く、乱雑に机と椅子が幾つか置かれている。
その中で、白馬さんは一つの椅子に埃を払った後で座った。
そしてちょうど彼女の向かいにある椅子の埃も払っている。
どうやら、その席に座って、ということらしい。
だから、私は遠慮なく座らせてもらうことにした。
白馬さんの真隣にある椅子の埃を払い、そこに座る。
「ど、どうしてそこに座ったの、かな?」
「ここが、良かったからです。ダメ、ですか?」
席が真隣ということもあり、私と白馬さんの距離は自然と近くなる。
私はこれから怒られる不安と、拒否しないでという想いを込めて、彼女を見つめた。
ついでに白馬さんの膝の上に置かれた手をギュッと握ってみる。
ここで今日、二度目の、目が合う。
彼女はみるみるうちに、顔を真っ赤に染め上げて…………
「いや、その、恥ずかしい……から………///」
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