初心な王子様(♀)を私のことが好きすぎるカノジョに堕とします
百日紅
第一目標 『温もりを刷り込ませる』
step1:まずは印象に残るように
私の通う女子高には、『王子様』と呼ばれている女の子がいる。
その子の名前は
私の語彙力では言い表せないほどの可愛いとかっこいいを兼ね備えた。すっごい女の子だ。
そんな彼女に今日、私こと
告白だよ?告白。
十七年間生きてきた私にとって、間違いなく人生大一番と言えるイベント。
もう彼女に放課後は教室に残ってて欲しいと伝えてある。
めちゃくちゃに緊張してる。
けれど、そんなされる方もする方も一大イベントである告白も、白馬 有栖さんにとっては日常茶飯事なため、大したことじゃない。
つまり…………。
私がただ普通に告白をするだけでは、当然ながら彼女の印象には残らないのだ。
ならばどうすれば良いのか。
簡単だ。もう既にプランは立ててある。
あとは実行に移すのみ。
時は放課後。
教室は二人を除いて、誰も居なくなった。
「あの、まずは時間を割いてくださり、ありがとうございます。白馬さん」
「んーん。構わないよ。………それで、僕に何か用があるんだよね?」
「はい………」
たった一言二言交わしただけで、彼女が次の展開を予測していることも。そしてそれの返事をもう既に決めていることも、分かってしまう。
だけど、今日は否定されても良い。
「あのっ!白馬さん、ずっとずっと好きでした!!私と、お付き合いしてください!」
私よりも背の高い彼女の瞳を見上げ、見つめ続ける。
白馬さんはそんな私の決意の視線を紳士に真正面から受け止め、そして―――――
あれ?少しだけ今、彼女の瞳が揺らいだ気がした。
――――白馬さんは「ふっ」と息を小さく吐いたあと、予め決めていたであろうセリフを吐く。
「君の気持ちは素直に嬉しい。………でも、ごめんね。僕、あまり恋愛には興味が無いんだ」
私としても、この返事は予想していた。覚悟は決めていたはず。傷つく覚悟は、してたはずなのに………
やっぱり、拒否されるのはキツい。
けれど、ここで諦めたら彼女の印象に残ることは叶わない。
だから、私は諦めないのだ。
「そう、ですか………」
「……うん、ほんとにごめ―――んっ」
交差していた互いの視線を、白馬さんが申し訳なさそうに逸らす。
それを狙ってた私は、、、
「んぅ!??」
不意に。
突然に。
自然と。
彼女が拒否する間もなく、その艶やかな唇に、私のものを重ねた。
「(私と同じで、白馬さんもこれがファーストキスなら嬉しいな)」
まぁ、彼女の場合は幾ら恋愛に興味が無いと言ってもモテるだろうから。もうキスぐらいは名も知れない誰かと済ましているのだろうけど。
でも、彼女の何番目かは気にしない。
大事なのは、彼女に私の初めてを捧げること。
口内までは流石に侵さなかった。
ただ、互いの柔らかい部分を重ね合わせたに過ぎない。
そして、「ぷはっ」と私は口を離し、少しだけ近づきすぎた距離を正常に戻した。
私は顔が熱くなるのを自覚しながら、出来るだけ彼女の目から可愛く映るように、「えへへ」と笑った。
「私、初めてなんですよ///」
そう言い残して、私はタタタッと駆けて教室を後にする。
やった。
やってしまった。
けどこれで良い。step1は、如何に彼女に私の印象を残せるかにかかっている。
唇に触れてみた。
温かかった。
◇ ◇ ◇
僕は今しがた出て行ってしまった女の子の影を連想するかのように、彼女の出た教室の出入口を見つめる。
なんだ、あれ。
な、なんなんだ。あれは。
最初はいつものやつかと思った。
なんなら、断わる身にもなってくれと憤りさえ覚えていた。
しかし、今回の相手は全然、いつもの子とは違った。
あの子が告白してきた際に僕に向けた視線。あれは、『戦う乙女』だった。僕が断わることを知って、彼女は僕を呼ぶ今日よりずっと前から、その失恋と戦っていたのだ。
正直言って、かっこよかった。
少し、気持ちが揺らぎそうになった。
恋愛にはこれっぽっちも興味が無いはずのに……。
でも、結局僕は彼女の告白を断った。
だって、興味が無いのにお付き合いするのは、その子が可哀想だから。
これでいつもみたく終わりだと思った。
でも彼女はここでも違った。
彼女は。
彼女は……。
彼女、は…………。
僕に、あろうことか、キスをしてきた。
僕はそっと自身の唇に触れる。
温かい。
彼女は言った。「初めて」だと。あの時の照れ笑いは、正直先程とは打って変わってものすごく可愛かった。
だが、一つ言わせて欲しい…………。
「僕だって、初めて、なんだけど」
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