第3話 辺境の街 モルトケと魔女邸
世界樹の森を出てから半日ほどで『辺境の街 モルトケ』にたどり着く。久しぶりに立ち寄ってのでかなりのなつかしさに浸りながら、門をくぐろうとすると目の前に槍で止められてしまう。
「貴様、この辺で見かけないものだな」
「あ~えっと………入江の魔女邸に行きたいんですけど………」
鞄からアリサから別れ際にもらった懐中時計の様な物を見せると、兵士の態度が一変しだし、彼らの上司と言える体格のでかい人が門の中から出てきた。
「こいつが、巫女様の使者ねぇ」
「あはは………」
「よっしゃ、とりあえずついてきてくれ!」
街に入ると、以前着た時とは全く違う光景が広がっていた。錆びついていた町が改善され、人々活気にあふれていた。
「あのさびれてた町がよくここまで成長したもんだ」
とっさに言葉が出てしまうほど、その光景がかなりすごかった。モルトケの近辺に鉱山が見つかって発展したというのをアイリから聞いたことがある。
「何年前の話してんだ? 今となっちゃこれが当たり前だぜ?
「へぇー意外だな」
「あ、言い忘れたが、俺の名はガイルだ! よろしく頼むぜ使者さんよ!」
ガハハハッとガイルが笑いながら自己紹介をする。
「俺は、達………いやキールだ」
「そうか! キール今後ともよろしく頼むぜ!」
「ああ………」
街を歩く度に、ガイルは住民たちに話しかけられている。彼はそれほど住民たちに溶け込んでいるのだろう。騎士たちは、元々プライドが高くこれほどまでに住民たちと交流するのが少ない。
「入江の魔女邸って………お前さん紹介状はあるのか?」
「いや………ないが?」
紹介状ないといった途端、ガイルの表情が一気に暗くなり、突然止まって、俺の両肩を太い両腕で掴んできた。
「………大丈夫か? ナイフ投げられても知らんぞ!」
「ああ、ご心配なく~」
歩いていると『入江の魔女邸』と共通語で書かれた看板を見つけた。ガイルは、俺が殺されると詠んでいるのか、体格に会わずおろおろとしている。扉開け、リンリンっとベルが鳴る。
「誰?」
店の奥から声が聞こえてくる。店に足を入れると、殺風景な店内には、高度な魔導書や、高級な錬金術の素材、ポーションの素材達が木製の棚に陳列されていた。
「我は………」
店の奥から銀色の光を放ったナイフが飛んでくる。そのまま壁に刺さっていた。殺気を感じて咄嗟に避けたが、本当に飛んでくるとは思わなかった。
「帰って!」
「え~っと………」
「帰って!」
「あ、はい」
店から出ると、店の前でガイルが待っていた。落ち込んでいる俺を慰めるかのように彼は、酒でも飲もうぜと誘ってくる。
飲食兼居酒屋を営む異世界風の店に入って、ガイルと晩食を始める。麦酒を読みながらガイルが色々聞いてくる。
「それで? なんで魔女様のとこなんか寄ったんだ?」
「ああ………実はな………」
話そうとした途端こっちにジョッキが飛んでくる。投げられて方向に喧嘩している冒険者であろうものたちが争っていた。
「貴様! 今なんっつた!」
男がフードを被った者に怒鳴り、その人の首元を掴む。
「うるさいって言ったんだ」
一瞬のうちに魔法を唱えていたのか、フードを被った者は、その男の手から抜け出し、彼らの背後に回っていた。
「あの声………」
先ほど『入江の魔女邸』にて聞こえてきた声とよく似ていた。ガイルが、席を立ち、喧嘩を止めようとするも、俺が彼の手を引いて止める。
「あの魔女様だぞ? あいつらがこれ以上何かしたらあいつらの命がねー」
「ああ、そうだろうな」
席を立ち、フードを被った者の背中の前に立つ
「イアぁあああ!」
大声で名前を叫んだことで、イアも俺の方を向く。顔と瞳はアイリによく似ており、髪は俺の黑とまったく同じだった。俺のことに気付いた途端、彼女は、その場でガタガタと震えだし、その場で崩れ落ちる。
「………パ………パパ………やめて………いじめないで………」
はぁっとため息を付き、ポンポンとイアの頭を撫でる。すると、一気に彼女の震えが解け、あまりの恐怖だったのか彼女は俺に抱き着いて大声で泣き始める。
「パパァああああああ」
いや、違う。久しぶりの再会にイア自身で我慢していたことが、出てきてしまったのだろう。そんな様子を見ていた店にいた人たちは、その光景に驚いていた。
「あの魔女様が………」
「あいつら罰当たりすぎだろ」
「パパってあの少年が?」
イアを店の外に連れて行き、存分に泣き終わったのかずっと俺の右腕を掴んでいた。
「パパだよね?」
「ああ、そうだ。こんな状態だが、わかるのか?」
「うん!」
はっきりと笑顔で笑う。この笑顔は完全にアイリによく似ていた。再度イアの頭を撫でているとガイルが店から出てきた。
「悪いな、奢ってもらって」
「いいってこった! こんな状態の師匠なんか初めて見たわ」
「うっさい! 馬鹿弟子!」
ぷいっとイアが明後日の方を向いてしまう。ガイルは、俺達に遠慮してか「今度奢ってくれよ」と行って帰ってしまった。
「イア………抱き着くのそろそろやめてくれ」
「えーやだ。パパと一緒だもん」
ふと誰もいないはずの左腕に柔らかい感触とほんのりとあったかいまるで人肌の様な物が感じるも、そこには誰もいない。
「そろそろ帰るぞ」
「はーい」
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