六
玉癸が次に目を覚ましたとき、そこはどこかの部屋の一角だった。
辺りを見回してみると一人、背を向けて本を読んでいる人がいた。後ろから見ると、どこかであったような気がするが、髪で顔が隠されていて、玉癸は誰なのか分からなかった。
不意に、玉癸が目を覚ましたことに気がついたらしく、玉癸の方を振り返った。
「っ!師匠!?」
玉癸は顔を見て気がついた。幾年も経っていて忘れかけていたが、確かにこの感じは師匠である。
「気で気付けなかった…」
「まあ、お前も死にかけてたからな。」
「え?」
驚いて自分の体を確認してみる。
よく見てみると、胸に沢山の包帯が巻かれていた。
傷があるのだと気づくと、急に痛くなってきた。
結構深い傷である。
「お前がやられるとは…。何があったんだ?」
玉癸はできる限りのことを思い出す。そしてあることに気付いた。
「…!?総はっ?」
辺りを見回す。しかし、彼はどこにもいない。気を使って探そうともしたが、重症を負っているせいでなかなか難しい。
「生きてはいる…安心しろ。お前と一緒に誰かから襲撃を受けたみたいだな。お前より傷が重い…直ぐに目を覚ますだろうが。大丈夫だ。あいつなら死なない。」
この師匠は彼の父でもある。自分の倅なら此の程度で死なないという自信があるのだろう。ひとまず、その言葉は玉癸を安心させた。
「良かった…。―――確か、総と一緒にデカい力を持っている子をこっちに連れてこようとしたんです。華子って名前だった…っ!華子さんは?」
「華子?そんなヤツはここにはいないぞ。
「は?んな馬鹿な!もしかしてっ、
「座れ!」
玉癸は布団から出ようとしたが、師匠の声で元に戻った。いや、戻らされた。いくら玉癸とて、師匠の命令には逆らえない。
「さっきから一体どうしたんだお前は。気付かずこんな重症を負うところからして、何かおかしいぞ。一旦落ち着け。」
「はい…」
「落ち着いてからもう一度説明してみろ。」
玉癸は深く深呼吸をする。それから辺りをゆっくり見回した。
落ち着いたのか、玉癸はゆっくりと話し始める。
「大きな、力を持っている人がいて――」
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