「お姉さん、そこで何をしているの?」



 彼女は玉葵ぎょくきの声に反応し、驚いたように玉葵の方を向いた。

「えっ。あ、私?」

「うん、お姉さん。こんな真夜中にこんな暗いとこで何をしてるの?良ければ、俺んち来る?」

 傍から見ればナンパしているようにしか見えないな、と思いながら玉葵は誘った。こんな機会を逃すわけにはいかない。

「えっ。あっ。ありがとうございます。よろしければ。私、寝る場所がなくて困っていたんです。......あっ、もしかして。あなた、私と前どっかであったことあります?」

 彼女は玉癸の隣にいる彼に気づき、声をかけた。彼は頷いただけであったが、彼女には分かったようだ。

「?彼と知り合いだった?」

 玉癸は今知った、という顔をして訪ねた。

坂口さかぐちさん...でしたよね?前、家の前に座っていらっしゃったのでご飯を差し上げたことがあったんです。」

 これには呆れたように言った。

「なるほど...恵んでもらったわけね。」

 最後の方は声が小さく、彼女には聞こえなかったみたいだった。

「まあ、いいや。こんなこんな寒いとこで話すのも嫌だし、一回俺んちに行こう。それでいい?えっと―――。」

「私は華子って言います。」

「じゃあ、華子さん。それでいい?」

 華子が頷いたのを見て、玉癸は歩き出した。彼らは一緒に玉葵の家に向かった。その途中、玉癸は彼女といくつか言葉を交わした。


 ............玉葵の記憶はそこで途切れた。

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