二
「今晩は何する?」
「久しぶりだ、稽古でもしよう。葵、今は357回中、俺の123勝125敗109引き分けだ。今回は俺が3回勝ってやる。」
「いいけど、何処でヤンの?”力”の使用あり?ありだったらやるけど。」
「チェ、いいよ。お前の空間でやろう。そのほうが何かと便利だ。」
彼は機嫌がいいらしく、珍しく口が達者になっていた。玉葵からすると、そこまで珍しいわけではなさそうだ。
「よし、のった。今すぐいけるか?あっ、武器の持ち込みは一つまでな。」
「俺は元々一つしか持ってねえよ。」
「じゃあ、行こう。」
玉葵は微笑んで、指を鳴らした。すると、そこは今まで居たマンションの一室ではなく、広大な草原になっていた。彼らはそれぞれ剣と槍を持って静かに向かい合っていた。
「Ready――,GO!」
其の合図のあと、激しい打ち合いが始まった。彼らは100時間ほどずっと打ち合っていたが、なかなか勝負がつかないらしかった。途中からは話しながら打ち合っているようだ。とは言ってもそれは罵り合いといったほうがいいかもしれない。
「おい、てめぇ、何でまだ息も切れてねぇんだ!ふつーの人間だったらとっくに死んでんぞ!」
「はあ?こっちのセリフだ、総!ろくに“力”使ってねぇくせに、何で生きてんだよ!人間の皮被った熊かてめぇは!!」
玉葵は彼を総と呼んでいた。
「レキっとした人間だ、こっちは!というかてめぇこそそんな“力”使えるやつ、つーかそんな使って死なねぇーやつ始めてみたぞ!」
「ろくに“力”使えねぇー分際でほざくな熊!」
「熊じゃねーっつってんだろ!」
150時間ほどたった時、示し合わせたように彼らは草むらに倒れた。
「こ...今回は...ひっ引き分けだな...」
「チェッ…。今回こそはいけると...思ったのに…」
「取り敢えず、もう寝る…」
玉葵は疲れ切った様子で草むらに寝転んだ。玉葵の其の様子を見た彼も同じように寝転んだ。あたりは静かに時が流れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます