一
彼は今日も同じように玉葵の家へ向かっていた。彼は家に着くと、玄関を通り、ベランダにある椅子へ腰をかけた。――玉葵の家はマンションだった。5階までしかなく、見た目も古いものだったが、賃貸が安く、家もそこそこ広いため、玉葵は満足していた。彼はしばらくそこに座っていた。太陽が傾き、空が赤くなってきた頃、主人が帰ってきた。彼が来たときにはギシギシなっていた床も、主人が歩くときは大人しかった。玉葵はコートを脱ぎながらベランダにいる彼に向かって言った。
「お。いたのか。久しぶりだな。3年ぶり?」
「4年3ヶ月17日ぶりだ、葵。」
「何処にいた?飯はきちんと食えたか。」
「薩摩まで行っていた。飯は、…恵んでもらった。」
「無一文で行ったのか。良く無事に帰ってきたな。まあ、今ここに無事にいるならいいか。」
玉葵は久しぶりに友と会えたことを喜んでいた。
「月を探しているのか?今日は新月だから見えないぞ?」
彼は外を見ていると、月を探していることが多い。彼は月の神秘さが好きらしかった。玉葵にはよく分からない。彼はわかっている、というかのように黙ったまままだ空を見つめていた。寒かったので、玉癸は部屋の中に入ってキッチンへ行き、湯を沸かした。
「君、何食べる?」
玉葵は彼が何も話さないのを見て、何でも良いと言っているのを見て取った。玉葵はとりあえずあった野菜を切って炒めて食べ物にした。それをベランダまで運び、机に置いた。
「食べるか?」
「ああ。できればお茶も注いでくれ。」
玉葵は彼の高飛車な注文にも、嫌な顔一つせずに答えた。戻ってきた後、頂きます、といって彼らは少し遅い夕飯をとった。玉葵が適当に作ったものだったが、なかなか美味しかったらしい。二人とも満足そうな顔をしていた。食べ終わった後、片付けをして、夜空の下で話をした。
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