第12話 錬金術_対峙
〜屋内〜
ダズは剣を片手にこちらに向かって歩いてくる。
「俺の寿命が縮む前にリタイアしろ」
「するかよ。言っとくが俺は別に賞金目当てで戦ってるわけじゃない」
「……なに?」
俺はゾエラの仇を取りに来ただけだ……と言ってもダズには伝わらない気がする。
こいつがゾエラと面識があったら話は別だが、そんな事を考える暇も与えてくれないようだ。
「じゃあ何故戦う?理由はなんだ?」
「仇」
そう言った瞬間にダズは剣を振り上げ、俺に目掛けて振り下ろす。
俺はすぐに避けるが、衝撃によりヒビがまた増えた。
もうすぐで崩れ落ちそうな予感がしてならない。
「ダズ選手の剣によって建物の崩落が進んだ〜!これは2人とも危ういのではないか〜!?」
「迂闊には飛び込めない……!」
「……どうした。仇を取るんじゃなかったのか?」
「仇の相手はお前じゃなくてあの白髪頭だ!」
無理矢理時間を稼いで崩れるのを待つか、自分から壊すか……。
ダズは恐らく崩落と同時に、寿命を削って何かをするはずだ。
しなければ今俺が考えている作戦が一気に崩れる……!
「ルルマは何も犯していない。お前らの思い込みだ」
「おいおい……お前も今洗脳食らってんのか?」
「俺は至って平常だ……余計な心配は気が散る」
すると剣を捨て次は手を合わせ錬成を開始し始めた。
「おぉ〜っと!?ダズ選手!剣を捨てました!これはまた新たな錬成が始まるのか〜!!」
実況者の声と錬成音が建物内に響き渡り、青い光に包まれるダズ。
すると目を開き、青い光を右手に集中させ俺に目掛けて放ってきた。
まるでエネルギー弾のように。
「これは!?」
「フルトロンでは気流弾という技のひとつですね。まさか錬成可能だとは思いませんでした」
光で前が見えない俺はとりあえず右に避け、被弾を間逃れた。
だが、建物のヒビも限界を迎え遂に崩落が開始した。
4階から爆音と共に崩れ始める。コンクリート同士がぶつかり合い、土埃も舞い始めた。
「崩落が始まった!これは逃げれるか2人とも!?」
「タケルくん……!」
モニター越しで見ていた冒険者達もタケルの生死が気になりザワザワし始める。
口を手で押え、驚きを隠すゾエラ。死んだかと思ったがゾエラはまだ信じていた。タケル君はここから逆転する冒険者だと。
「…結界」
ダズは寿命を削ってバリアを展開し、落ちてくる瓦礫を速攻守り対処した。
だが、気流弾を避けた後からタケルが生きているか分からない。
暫くして瓦礫が全て落ち、土埃のみ舞っていた。
「呆気なかったな、スズキタケル」
崩れている瓦礫を上にタケルを探し始めるダズ。
だが下敷きになっている可能性もある為、そう簡単には見つからない。
それか致命傷になり集会場に戻っているかもしれない。
「ルルマは俺の親友だ。ルルマの仇を取るということは俺が許さない。賞金と栄誉を手に入れ、俺達はフルトロンの英雄になると決めた仲なんだ!」
ダズはルルマとの思い出を思い出しながら熱く語る。
ルルマとダズ昔から一緒に遊んでいた幼なじみの親友。
仇を取るという言葉を聞き、彼は少々腹を立てていた。
「俺達の邪魔をする奴らは全員潰すと決めたんだ!」
「隙ありだ」
瓦礫の間で待機していた俺は、後ろからダズのバリアに触れる。
皿が割れるような音が鳴ると共にバリアが一瞬で弾ける。
その状況に対応出来なかったダズは、状況を整理するしかなかった。
「な……!?」
「ビンゴ……!」
「バ、バリアが弾け飛んだぁ〜!?これは一体何が起きたァ!?」
実況者も、冒険者達も、そしてダズも全員驚いていた。
だがゾエラはガッツポーズなどをせず、ただ笑って泣いていた。
彼は必ず逆転する……そんな冒険者なんだって。
「おうダズ、お前はもう俺に勝てないぞ」
「何を……何をした貴様!!」
「お前すげえよ。あんな奴と親友なんてよ。昔から一緒にいたってことは、ゾエラってやつも知ってんだろ?」
ゾエラの名前を聞いた瞬間、ダズの顔つきが変わる。
やはり知っているようだ。
ダズは距離を置き、地面を叩き錬成を開始する。
「あいつがどんだけ悲しんでどんだけ苦しかったか」
ジリジリと近づく俺。錬成を続けるダズ。
だがダズの手が心做しか震えていた。
「あいつの今までの笑顔。今思い返すと無理してやってたのが分かったよ。こんな過去があったと思うと胸が痛くなる」
だんだんと足を早める。ダズは錬成が終わり俺に銃を構え、撃ち始めた。
だが当然効かない。顔、胸に当たるが全て弾ける。
ダズは絶望の顔をするが、再び地面を叩く。
俺は叩いた瞬間、勢いよくダズに向かって走り始める。
ゾエラ、俺はこういう正義感がある行為……苦手だったんだよ。
日本にいた俺じゃ絶対にしてない。
でもお前らがいてくれたおかげで、お前らのおかげで俺も少し救おうって思えたんだ。
待ってろゾエラ。まずはこいつをぶっ飛ばして……!
|本命(ルルマ)をしばいて来るからよ……!!
「錬成……!急げよ錬成……!!」
「少し反省しろ……錬金術師!!」
しゃがんでいるダズに対して、アッパーを決める。
数センチ浮き、どしゃあっと倒れるダズ。
「き、決めたぁ〜!!!スズキタケル選手!華麗なアッパーでダズ選手に打ち込んだ!!」
その姿を見た冒険者達は歓声を上げた。
「タケル君……!」
ゾエラの感情は無茶苦茶で涙ばかりが溢れていた。
これで1人、ゾエラの敵は減った。
その事を喜ぶゾエラは俺に感謝の言葉を吐いていた。
「全部……効かなかったな」
「意識あんのか。流石錬金術師だな」
ささやかな風の音だけが流れる。
「……ルルマをぶっ飛ばしてくる」
俺は後ろを向き、ダズに捨て台詞を吐いてルルマに向かって歩いていく。
ダズは反論どころか言葉も出なかった。
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ダズ 脱落
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〜岩石エリア〜
ルルマは岩の上で座って休憩していた。
止血も完了し、戦う準備もできていた。
ノートを開き冒険者達の名前を見て、ルルマはため息をついた。
「まさか戦った相手がボルザークだったとはな。だが俺はそのボルザーク族の1人を倒したと思えば……怖いものがねぇな」
ルルマの前から足音が聞こえてきた。
石と石が擦れ合う音がだんだんと近づいてくる。
ルルマはノートをパタンと閉じ、岩から飛び降りた。
彼の覚悟はもう決まっている。
彼だけでは無い。鈴木タケルも覚悟は決まっている。
2人は久しぶりにお互いの顔を合わせた。
「ダズを倒したんだな、すげぇなお前」
「うるせぇよ……俺は仇を取りに来ただけだ。別に賞賛を求めてるわけじゃねぇ!」
怒りの感情をルルマにぶつける。
その顔を見て嘲笑うルルマ。
嘲笑う姿はまるで、ゾエラの仇を取りに来たのを知ってたかのような顔だった。
「生き残った2人が岩石エリアにて出会ったぁ!試合場はここで決定なのかァ!?」
「……来いよ、白髪野郎」
「ダズを倒したぐらいで調子に乗ってんじゃねえよ……!」
ガルドの戦い、ゾエラの涙。
全てを思い出し、決意を決め拳を握る。
「お前の能力を俺の能力でぶっ壊してやる!」
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