第4話 盗賊人_決闘
〜深淵の森〜
静かな森の中で葉と葉が擦れ合う音が鳴り響く。
17:00頃。1人の女と1人の男が睨み合っていた。
「お守りを取られたぐらいでキレるとは思わなかったよ。相当大事なものだったんだね」
ハンターはポイッとぐちゃぐちゃのお守りを捨てる。
お守りが地面に着く前にガルドは能力を使い、お守りを取った。
角を激しく光らせ、ハンターを睨みつける。
「ヌシ、ワシの動きを見ておらんかったか?」
ハンターは首を傾げ喋ろうとしたその瞬間。
ハンターの腹に重い打撃が後から入った。
「がっ……!?」
その場に崩れ落ちるハンターだが、ガルドはまだ収まっていなかった。
「ヌシが行った行為は極刑に値する。覚悟するんじゃな」
ガルドはハンターに目掛けて大きく拳を振り下ろす。
「残念、油断しすぎだ」
ハンターはそう言うとガルドの目の前で手をかざす。
ガルドは拳を振り下ろした。
だがハンターには当たっていない。
手をかざした時、眩しい光が見えて俺達は何が起こったのか分からなかった。
そして光がなくなった瞬間俺達は絶句した。
ガルドの振り下ろした腕が、無い。
「な、なんじゃと……!?」
ガルドは振り下ろした|気(・)になってた。
「ガルド!早く出血を!!」
俺は慌ててガルドを呼ぶ。だがガルドの腕からは血が流れていなかった。
「あなたの|腕(・)は少しこちらで預かります」
ガルドの腕と思わしき物がハンターの手の上にあった。
「私の前では全員プラモデルですよ。能力を使えば相手の四肢、顔や目。何から何まで全て"預かる"ことが出来るんですよ」
「アイテムを取るだけの能力じゃなかったのか…!?」
俺とゾエラは少し後に引く。
「私、集会場に戻って応援呼んでくるね……」
ゾエラは小声で俺に言ってきた。当然俺は頷きゾエラは走っていった。
「ヌシ……!!」
「頭と胴を分けるとか何とか言ってましたよね。やってあげましょうか?」
ハンターはクスクスと笑い、ガルドに近づく。
「待て!!アイテム野郎!!」
流石に放っておけない。
俺は考えるよりも先に声が出ていた。
「君は誰だい?さっきからずっとそこにいるけど……」
標的はガルドから俺に変わった。ガルドの腕を捨てこちらに近づいてくる。
「ヌシ!逃げろ!敵わぬぞ!!!」
ガルドは俺に声を荒らげ叫ぶ。俺だって逃げたい。
でも今ここで助けなきゃ、俺のプライドが許さねえんだ!!
「来いよ……お前の能力なんてなんも怖くねえぜ!」
「調子に乗るお年頃か、現実を見させてやる」
「ヌシ!!!逃げんか!!!」
ハンターは俺に手をかざす。
俺に考えさせる余地もなかった。もし腕が取られても後から応援が来る……!!
俺の能力が通用しなくても何とかなる……!!
俺は激しく光る手に目を瞑ってしまった。
本来なら何かしらの部位が無くなってるはず……!
目を開けるとそこには口を開け驚くハンターがいた。
「……んあ?」
恐る恐る体の部位を触るが全てある。
すぐに結論が出た。
こいつは……
倒せる。
「……覚悟しろよ盗人、ガルドの大切なもん奪った上にぐちゃぐちゃにして捨てるなんてよ」
ハンターは後に引いていく。
「な、なぜ効かない……俺の能力がなぜ……!?」
俺はニヤッと笑いこう答えた。
「日頃の行いじゃねえ?」
その瞬間静かな森の中から大きい打撃音が聞こえた。
〜深淵の森〜
19:00頃。
応援を呼んだゾエラによってハンターは捕まり無事に解決した。
ガルドの腕もすっぽりハマり嬉しそうにしていた。
「ガルド、そのお守りは悪いけど治せねえ」
俺は少し残念そうにガルドに話す。
「よい、主がいなかったらワシは全て奴に盗られておったかもな。」
お守りをじっと見つめ、ポッケに入れる。
「ありがとな。タケル」
そう言うとガルドは俺の方を向き笑顔でお礼を言った。
「……俺の名前どっから知った?」
「ゾエラがタケル君って言うから覚えてしもぅた。」
「タケル君〜!ガルドちゃん〜!」
ゾエラが向こうから走ってきた。何やら慌てている様子だ。
「一度集会場に来てって受付のお姉さんが!」
その時タケルに電流が走った。
アイテムハンターを捕まえた→集会場に集合→感謝の印→金!!!
「ゾエラ、ガルドに身体能力向上を付与して」
「えっ……わ、分かった」
ゾエラはそう言うとガルドに能力を付与した。
金が入るということは寝る居場所だって借りれる!!
めっちゃテンション上がってきた!!
「ガルド!能力を使って集会場に急げ!!」
ゾエラをガルドに乗せ、指示を出す。
ガルドはもうそれはそれは凄いスピードで走っていった。
「ヒーローは遅れてやって来るってことで……俺は少しずつ歩いて行きますかね……」
深淵の森から集会場まで約10分。俺はぼちぼち歩きながらテンションを上げて行った。
~集会場~
集会場のお姉さんと正座させられているガルドとゾエラがいた。
「いや、集会場に来てくださいとは言いましたよ……?」
「「はい」」
お姉さんは門に指をさし呆れながら2人に言った。
「誰がマッハの速度で門ぶち破って来てって言いましたか?」
「「ごめんなさい」」
お姉さんが机に置いてあるボードを手に取りある紙を見せた。
「指名手配確保報酬。依頼を受けている途中、集会場が出している指名手配犯を捕まえると依頼完了と同時に、報酬金が上乗せされるシステムです」
報酬の紙に(120万ガロン)と書いてあった。
「ひゃ、120万!?」
ゾエラは紙を手に取り驚きを見せた。
「120万と言ったら何が買えるんじゃ?」
「何でも買えちゃうぐらいだよ!?パーティーを組んで2日目で120万だなんて……!?」
ガルドは滅茶苦茶うれしそうな顔をして、お姉さんにはやく金をくれの目をし始めた。
「お二人様、喜んでるとこ申し訳ございませんが……。」
お姉さんは報酬の紙の後ろにある紙を見せた。
ガルドとゾエラはその紙を血の気が引いた。
(集会場:門修理代 125万ガロン)
「門を壊さなかったらそのお金は貴方達のものでしたが……」
「ま、待つんじゃ!免除免除!捕まえたんじゃ免除しろ!」
お姉さんに抱き着くガルド。焦るゾエラ。集会場に近づくタケル。
「タケルに怒られるんじゃ!たのむぅ!!」
タケルに怒られるのを少し怖がっているガルド。
「いや……ガルドさんが走らなかったらよかった話では……?」
すると門のほうから走ってくる足音が聞こえてきた。
「おい!敵襲k……」
タケルが急いできたが2人がお姉さんに怒られてる姿を見て謎の安心感とイライラが沸いた。
「タケル、テキシュウジャ」
こんなに早く到着するのは予想していなかったのか片言になったガルド。
「嘘つけ。お前の余計なスピードだろバカ」
きっぱりと言い切る俺。うなずくゾエラ。
「タケルさん。報酬金は120万ガロンでしたが、ガルドさんが門を壊したので125万の報酬金が発生したので5万ガロンの借金を抱えたままですね」
紙を見せ、少し残念そうにするお姉さん。
「ガルド」
俺はガルドを呼び、それに返事するガルド。
「な、なんじゃ?」
「借金5万。お前ひとりで回収してこい」
「えぇ~!!なんでじゃなんでじゃ!」
ガルドは涙目になりながら俺に抱き着く。
「当たり前だろ!お前が余計なスピードを出さなかったら借金もくそもなかったんだ!」
「私たちのパーティーは借金5万ガロンから始まるのか………」
ゾエラは頭をガックシとし後の冒険を不安だったが、それ以上にこれから先が楽しみであった。
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