第15話 ヒロインを追いかけて(大量の軍隊と共に)
「———はぁ……はぁ……」
「「「「「キキッ!!」」」」」
眼の前ではボロボロの美少女が猿に集団リンチを受けている。
そしてそんな状況を、俺はこの目で見ていた。
「……何なのだこの状況は……」
このカオスとも呼べる不思議な状況に、流石の俺も動揺せざるを得ない。
俺自身はメインキャラに関わるつもりは微塵も無かったのだが、まさかこんな所で出会うとは……運命の悪戯とでも言うべきか。
非常に面倒だが……。
「死なれては俺も困るのでな」
俺は木々に身を隠しながら、つい最近習い始めた『魔法』と呼ばれる魔眼とはまた別の力を行使する。
残念ながら、俺の魔眼には、まだ遠距離攻撃系統の魔眼は未実装であるため、魔法を習わざるを得なかった。
ただ———此処で予想だにしない幸運に恵まれた。
———【全能眼】が魔法を全て解析し、原理を理解させてくれるのだ。
そのお陰でゲームでは適当に使っていた魔法が、大まかに『運用』『構築』『発動』の3つの工程があることも分かった。
後は、何千回と見てきた様々な魔法のイメージを【全能眼】で解析した知識と合わせてその工程に当て嵌めてやれば……魔法が発現する。
今回使うのは改良版中級風魔法———【風刃・改】。
透過性が改良前より僅かに劣るが、その分速度と威力が倍増した改良した魔法の中でも出来の良いモノの1つだ。
「切り裂け———【風刃・改】」
俺の掌に小さな幾何学的な魔法陣が現れ、そこから半透明の風の刃が放たれる。
風の刃はメインヒロインの1人———マリアを取り囲む5匹のウッドモンキーの首を知覚される前に正確に斬り落とした。
「———えっ……?」
突然頭が胴体から離れたウッドモンキーを見ながら呆然と呟くマリア。
これでアイツも命の危険にさらされたことだし帰るだろうと、目を離そうとした時。
「行かないと……」
何と———マリアは俺の予想を裏切って中心部へと走り出した。
あまりにも無謀すぎるマリアの行動に、俺は目を剥く。
「ま、マジか……」
驚き過ぎて普段の口調じゃ無くなっていたが、今はそれどころではなかった。
———メインヒロインが原作開始前に自ら死にに行こうとしている。
例え俺が転生したせいでストーリーが多少変わったのだとしても、流石に変わり過ぎではないか。
それにコイツは死ねば、この先一体誰がゲームの主人公と一緒にラスボスを倒すというのか。
俺はラスボスとは戦わんぞ……。
あんな化け物に勝てるのは特別な魔眼を持った主人公とヒロイン達だけだ。
自ら絶対に勝てない敵に挑んで死にに行くなど御免である。
そのためにはマリアには生きていてもらわなければ困る。
「チッ……仕方ないな……」
俺は内心、関わりたくないな……と思いながらも後を追った。
「———マリアの目的は『不死鳥の羽』か……」
モンスターがマリアの下に辿り着かない様に、バレない程度に護衛しながら追いかけている途中で、俺はやっとマリアの目的に気が付いた。
それと同時にマリアが、これほどまでに必死なのも頷ける。
———『不死鳥の羽』。
この森の中心部に住む、レベルが『99』であり、この森最強格の不死鳥が落とす貴重なアイテムで、どんな病気、傷、心的障害でも、深刻度によって治るまでに掛かる時間は変動するが、絶対に治すことの出来る優れものである。
ゲームの中でマリアは、このアイテムを『魔力欠乏症』と呼ばれる常に魔力が体外に抜けていく病気を患った自身の母親に使おうとしたのだ。
しかし、結局は手に入れることが出来ず、母親は数年前に死んでしまったと書いてあった。
「なるほどな……これは歴としたストーリーだったわけだ」
原作では描写こそされていなかったが、この森に入っていたと言うことだろう。
つまり———。
「俺が余計な事をしたのか……」
彼処で助けなければ、マリアは諦めて帰っていたということである。
死にもしないし、大きな怪我を負うこともなく。
「チッ……うろ覚えなのが仇となったな……」
俺はそう零すも……既にやらかしてしまったことは変えられないので、引き続き死なないように守らなければならない。
中心部に行くに連れ、出現するモンスターも強力になり……そろそろ俺1人では手に負えなくなってきた。
「どうする……」
俺は自身にそう問い掛けながら走っていると……正しくこの状況を打破できる妙案を思い付く。
我ながら天才なのでは? と思いながら【幻影眼】を発動。
現れたのは、毎度お馴染みレイブン幻影である。
それを俺は更に5体出現させると……【現世眼】で実体化させ、マリアにバレない様にモンスターを倒せと命令を下した。
「「「「「……」」」」」
「5体のレイブンは流石に不気味だな……」
四方に散らばって行ったレイブン(幻)を見ながら小さく零すと……白銀の髪を風に靡かせながら真っ直ぐに駆けるマリアを追いかけた。
この時———完全に『神水』の事を忘れていたのは言うまでもない。
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