第14話 危険な森にヒロインが居るんだが
「———ユイト、本当に行くのか?」
「はい。どうしてもあの森に行かなければならないのです」
俺は引き留めようとする父上に毅然として言う。
分家との交流会から1ヶ月。
あれから俺への襲撃は1度も起こっておらず、部屋も綺麗に改装されて再び過ごせるようになった。
まぁ狙われていることに変わりはないんだが。
たかが1回襲撃を防がれた程度で諦める様な相手ではないのか確実だろう。
そして……魔眼名家であり、しかも当主どころか分家のもの勢揃いの中で襲撃をする大胆な奴らこそ、原作でユイトを殺したのも、十中八九今回の襲撃を計画した組織だろう。
きっとこの先も何かしらと俺を殺そうと企んでくるはず。
———と言う事で、【模倣眼】を除けば、転生して初めて原作知識を使おうと思う。
俺の目標は、『深淵の森』と呼ばれる何とも厨二病達が大好きそうな森にある。
ただし、父上が心配するのも当たり前で、この森はゲームで言う終盤に主人公達が訪れる森であり、推奨レベルは何と、Level100がMAXのゲームで『95』と言う化け物みたいに難易度の高い森なのだから。
「ユイト様、せめて私1人でもついれて行かれることは出来ないのでしょうか?」
「ダメだ。1人で行かないと意味がないんだ」
レイブンが自ら名乗り出てくれるが、今回ばかりは誰であろうと連れて行くことは出来ない。
「……そうですか……」
俺の断固として頷かない姿勢に軽く肩を落とすレイブンと父上。
姉上と母上はこの場に居ないが……その理由は2人にはそもそも言っていないからだ。
2人とも……姉上は自分も行くって聞かなそうだし、母上はぶっ倒れそうだからな。
俺は本当に言わなくてよかったと、内心自らの選択を称賛していると……父上が大きくため息を吐いた後に言った。
「儂も昔は好きなようにやっていたからな……儂はもう何も言わん。ただ———2人に秘密にしてまで行くというのだから、目的のモノは絶対に手に入れて帰ってくるのだ」
俺の目を見て告げる父上に、俺はニヤッと笑みを浮かべた。
「———必ず別人のように進化を遂げて帰ってきます」
俺はそう言って我が家を後にした。
「……相変わらず陰湿な場所だな」
俺は丸2日かけて辿り着いた『深淵の森』の入口で吐き捨てる。
正直この森にいい思い出など何1つとしてないのだが……【模倣眼】を強化するにはこの森にある小さな泉の———『神水』と呼ばれる特別な水が必要なのだ。
魔眼を強化してくれる神聖な水が。
原作では主人公がラスボスに勝つために『神水』を手に入れようとした。
ただ、先程も言った様に道がイマイチ不明確で、中心部の何処かにあるとしか覚えて居ないのだ。
「どうやって探すとしようか……」
俺は憂鬱な気分になりながらも『深淵の森』へと足を踏み入れる。
同時に森に入る前までは明るかったと言うのに、足を踏み入れた途端に一気に薄暗くなった。
更に木々が怪しく揺れ、さざめきが不気味に鳴り響く。
「……【
俺は【全能眼】を発動させて薄暗さを相殺させてズンズンと進んでいく。
偶に猿系モンスターが現れるが……。
「【
「ガゴギャッ!?」
竜の魔眼の力を使えば……案外直ぐに倒す事が出来た。
まあこの猿系モンスター———ウッドモンキーと呼ばれる雑魚は、レベル55相当のモンスターなので、弱いのも当たり前だ。
コイツらは、群れの場合は厄介だが単体ではそこまで強くない。
ただ———あくまで最強の素質がある俺視点での話なだけである。
決して普通の人やそこらの冒険者などが戦えば1匹であっても命懸けの死闘を繰り広げざるを得ない。
その筈なのだが……。
「や、やぁあああああ———ッッ!!」
「「「「「キキッ! キキッ!!」」」」」
目の前には薄暗い中でも輝く白銀の髪を乱しながら必死に剣を振るう少女が居る。
少女は見た者全てが魅了されるであろう美貌を持っていたが……その美しい顔や身体は傷だらけで服もボロボロになっていた。
その少女を見た俺は———。
「———こんな場所で何をしている、あの大馬鹿者は……?」
———ウッドモンキーに囲まれて危機的状況に陥ったゲームのメインヒロインの1人に呆れ返っていた。
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