第9話 御披露目
「———っ!?」
「うおぉ……危ない危ない」
俺の袈裟斬りはギリギリの所で残像すら見えるほどの速度で避けられ空を切った。
流石にこの速度、タイミングで放った攻撃が避けられるとは思わなかったので少し驚くが———即座に【全能眼】で予測し、魔力の刃を地面に突き刺して蹴りを繰り出す。
「ぐっ……対応出来るのかよ……」
「見切っているぞ、お前の動きは」
今度は直撃とはいかなかったが、掠らせる事は出来た。
ニヤッと不敵に笑う俺とは対照的に、苦々しい表情で自身の頬に流れる血を拭うエドワード。
しかし、俺が押しているようで実は俺も問題に直面していた。
……まさか予測での動きを直前で変えられるとは……。
そう———エドワードは俺の予測で確定した動きを直前で変化させて避けているのだ。
しかもそれを連続で。
「チッ……」
「お、御自慢の【全能眼】が効かなくて困ってんのか?」
エドワードが薄ら笑いを浮かべて露骨に俺を煽ってくる。
勿論こんなガキンチョの煽りに乗らないが、腹立つのは事実。
コイツ……バカみたいな力だけじゃなくて頭までキレる様だ。
こう言う奴は1番戦いたくない相手だな。
まあ———。
「———俺の
「お、お前……その力は———ッ!?」
驚くエドワードを他所に、俺の片目が金色に輝き、片腕に竜燐のガンドレッド、おでこの片側には1本の角が現れ、全身に力が湧き上がって来た。
俺の身体を赤黒い魔力が纏われる。
「あ、アレは……!?」
「ど、どう言う事だ!? 【暴竜眼】は一世代に1人だけしか継承出来ないはず……!!」
「す、凄い……!!」
「か、かっこいいーー!!」
誰が見てもエドワードと同じ力だと分かる様な姿な俺の変化———会場の分家の当主達も子息達も誰もが驚く。
それは我が家族の皆やレイブンも例外ではない。
「……これは驚いたな……儂の目の前で起きたことは現実なのか……?」
「現実よあなた……ユイトの力の正体は私も分からないけどね」
「ユイト〜〜カッコいいよ〜〜〜!!」
どうやら姉上だけは驚いていない様だが。
姉上は我が家で1番の変人だな。
「———これで俺とお前の力の差はゼロになった様だぞ」
「おいおい……お前マジで何者だよ……」
エドワードが鋭く俺を睨み付けながら言った。
まあ他の人の魔眼を使えないと言う一般常識をぶち壊したのでこうなるのも仕方のないことであろう。
本来ならもう少し【模倣眼】の御披露目は後でも良かったのだが……どうせいつかバラす日が来るのでどうせなら大々的に御披露目してやろうと思ったのだ。
仮に俺を殺したのが分家の誰かならば、この交流会の間に何かしらのアクションを起こすかもしれないしな。
「エドワード・ドラゴアイ———我が力に堕ちろ」
「チッ……!?」
俺は奴が舌打ちを終える前に懐に入り込んでガンドレッドでエドワードの鳩尾を突く。
『バキャッ!!』と言う鈍い音と共に、俺のガンドレッドによってエドワードの腹部の竜燐が砕け散った。
「ガハッ———!?」
目を見開いて血反吐を吐くエドワードの眼前に手を翳し———。
「終演だ———【
俺は魔力を右手に集め———極大の赤黒い破壊の魔力の奔流を放った。
「———これで……我が息子、ユイトが次期当主の座に着くことに不満を持つ者はおらぬな?」
「「「「「「「「…………」」」」」」」
父上の言葉に、誰も反論は愚か反抗的な態度すらも取らない。
誰もが……特にホークアイ家、バトルアイ家、ドミネイト家の者達はもはや逆に失礼なくらいに俯いている。
まあ悉く俺にぶっ倒されたのだから、そもそも反抗すると当主より没落させられるので不可能なのだが。
「それと———今回のユイトの力についてだが……」
父上の言葉と同時に、場に緊張感がさらに漂い始めた。
誰もが気になっていながらおいそれと訊くことの出来なかった事柄を当主自ら言ったことにより皆の注目が父上に向かう。
場がピリつく中———父上が口を開いた。
「あの力を口外することの一切を禁じる。仮に……ユイトの力が外部に流れていることが発覚したならば———この儂自らがその犯人を潰す」
そう言った途端———父上から膨大で強大な威圧感が放たれ、分家の者達……大人とやらかした数人の子息が威圧感に当てられるだけで膝を地に付く。
更に皆苦しそうな表情をしており、中には気絶する者まで現れ出した。
「———父上」
「うむ、今回騒動を起こした輩にはこの程度で勘弁してやるが……次は無い」
父上はそれだけ言うと威圧を消し、少し明るい声で言った。
「これから全家で交流パーティーを行う。各々準備を整えてから集合としようか」
さて……相手側の出方を伺うとするか。
俺は辺りを見回した。
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夜の10時にもう1話上げます。
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