第6話 VS分家子息
「———第1試合、ユイト・デビルアイVSルイ・ホークアイ。両者武舞台へ」
俺は特に緊張も慢心もすることなく普段通り武舞台へと上がる。
武舞台から少し離れた観客席には分家総勢100人以上と、更に少し離れた場所に姉上、母上、父上が座っていた。
俺が3人を見ていると……姉上が突然何か取り出す素振りを見せる。
そして取り出されたそれは……よくアイドルを応援する時に使う推しの名前が書いてある団扇であった。
団扇には———『ユイト最強!!』———と書かれており、姉上と何故かレイブンも一緒に両手に持って振っているではないか。
は、恥ずかしいんだが……。
俺は———羞恥で顔が真っ赤になりそうなのを抑えながらそっと目を逸らした。
戦略的視線逸らしである。
「お前が俺の相手か?」
「…………」
俺が相手———ルイ・ホークアイに聞いてみるもまさかの無言。
俺は侯爵家であり、相手は子爵家であるにも関わらず、である。
ルイは剣を片手に何処か遠くを見ていた。
まるで俺など眼中にないかの様に。
「……お前には
「……雑魚の相手に敬意など不要。会話など以ての外だ」
…………ほう、言ってくれるじゃねぇか。
「なら俺に瞬殺される所詮引き立て役には俺の自己紹介など要らぬか……」
折角名前を聞かれた時のために何日か前から結構真面目に考えたのだが……ちょっと悲しい。
相手が初っ端から無口キャラとか最悪だ。
「……審判、早く始めろ」
「お互い———準備は宜しいですか?」
「ああ」
「此方もOKだ」
俺達の準備が確認出来ると同時に審判が手を上に挙げ———。
「それでは———試合開始!!」
———一気に振り下ろした。
「———【
無口なルイが呟くと同時に瞳がオレンジ色に変化し瞳孔が少し拡がる。
そんな彼の変化に……。
「それがホークアイ家の【
「———何だと……?」
俺は即座に必要ないと判断。
もはや模倣する価値すらもない。
しかし、まあ案の定ルイには俺の言葉が怒りの琴線にしっかりと触れた様で……露骨に顔を険しくする。
「……おい、もう一度言ってみろ」
「何度でも言おう———貴様の魔眼は所詮俺の魔眼の下位互換だ。比べるのも烏滸がましい」
「き、貴様ぁぁああああああああッッ!!」
逆上したルイがオレンジ色の瞳を怒りでギラつかせながら突進してくる。
その攻撃は———。
おいおい……何だよこのお粗末な攻撃は……。
———物凄く無茶苦茶なモノであった。
剣の構えはまだ良いとしても、踏み込みや歩法、剣筋など色々とめちゃくちゃで見てられない程だ。
まあ普段から達人のレイブンのを見ては【全能眼】で緻密に観察しているからかもしれない。
「はぁ……この程度なら俺の魔眼を使うまでもないな。残念だが……勝てんぞ、お前は」
俺は自身の身体を魔力で強化して向かってくるルイの背後を一瞬で取ると……ルイの背中を蹴飛ばす。
「ガハッ———!?」
ルイは碌に防御体勢にも入っていなかったせいでそのまま弾丸の様に武舞台の奥の壁まで吹き飛んで激突した。
石が崩れる崩壊音に破壊音、衝撃波によって砂埃が舞い観客席の調子に乗っていた一部の分家達の声が途端に静かになる。
「審判、合図」
「…………ルイ・ホークアイ戦闘不能。よって———勝者ユイト・デビルアイ!!」
俺はそのまま急いで運ばれるルイを背に最初のスタート位置に戻る。
その間会場はまるで誰もいないかの様にシンと静まり返っていた。
「きゃぁあああ!! ユイト〜〜〜!! かっこいいよ〜〜!!」
———姉上以外は。
姉上だけはまるで自分が勝ったかの様に……下手すれば自分が勝った時よりも嬉しそうに笑顔で頻りに団扇を振っては手を叩いていた。
姉上……。
相変わらずブレない姉上に若干呆れながらも、空いた口が塞がらないと言った感じの分家達に格好付けて宣言した。
「———全員纏めて遊んでやる。どうか……俺の瞳を紅く染めさせてくれよ?」
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