第4話 分家との交流会について

 ———アルベルト・フォン・デビルアイ


 デビルアイ家の当主にして【全能眼】を物凄い高レベルで使い熟す最強の魔眼使い。

 しかもそれだけではなく、武術の腕も凄まじい。


 俺と同じく黒髪黒目で、60代とは思えぬ超絶精悍でダンディーな顔立ちに、身長は190を超え、筋肉はボディービルダー並みにあると言う正に超人。

 ゲームの時は、こんなのよくいるよな、とか思っていたが、実際に会うと普通に化け物である。


 いや、オーラが半端ないんだわ。

 普通に近くに行くだけで魔力が高密度過ぎて気持ち悪くなるし。


 正直この世で次期ゲーム内最強キャラとなるユイト・デビルアイを此処まで追い詰めれるのはこの一家だけだと思う。

 それ程に異次元な強さをしているのだ。


「ユイトよ、最近もちゃんと修練はしているか?」

「勿論しています」

「流石私のユイトね〜〜! 可愛いだけじゃなくて努力家なんて〜〜!」


 そう言って地味に本気で俺に抱き着こうとしてくる姉上を【模倣:全能眼】を使用して華麗に避けながら、父上の隣に座る母上に挨拶をする。


「母上、一昨日ぶりです!」

「ふふ、おはよう、ユイト」


 母上———ナターシャ・デビルアイは、我が家の家系ではないため【全能眼】は持っていない。

 まあその代わり【治癒眼】と言う珍しい治癒系魔眼を持っている。


 そして見た目も聖母の如きおっとり系美女であり、金髪碧眼である。

 我が家では母上の碧眼と抜群のプロポーションを姉上が引き継ぎ、顔付きを俺が若干引き継いだ。

 

「母上、どうか姉上の暴走を止めて下さい」

「え〜〜私は暴走なんてしてないよ〜?」

「なら俺を捕らえようとするのをやめてくれるのか?」

「やめない」


 ほらやっぱり。

 現状俺では姉上に絶対勝てないので、こうして母上に頼るしかないのだ。

 現に今も、姉上が【全能眼】を使っていないお陰で避けられているのだから。


「アカネ、ユイトが嫌がる事をすると嫌われてしまうわよ」

「…………嫌われたくない」

「なら追いかけ回すのはやめて、席に座わりなさい」

「…………はーい……」


 姉上は不満げにしながらも、母上の言う事は素直に聞いて自らの席に座った。  

 やっと終わったことに、俺はホッと安堵のため息を吐いた。










「———1週間後、我が家に分家の者達が集まる」


 如何にも高級そうな何年経っても慣れない食事を口にしていると……父上がそう切り出した。


 父上の話では、毎年1年に1度行われる、本家と分家の交流会を1週間後に早めて開催するらしい。

 本来は後数ヶ月は先なのだが……何かあったのだろうか。


「お父様、何故今の時期に開催するのですか? 本来はまだ先の筈です」


 先程までのブラコン具合は何処に行ったのか、と問い正したくなるほど真面目になった姉上が至極真っ当なことを訊く。

 俺も丁度気になっていたのでナイスタイミングである。


「うむ、その通りだ。だが……少し問題が起きたのだ」

「問題?」


 俺は小首を傾げて声に出してしまう。

 3人が俺の方を向いているが……それよりも思考に意識が回っていた。


 ストーリー開始前とはいえ、何か問題となる事件があったか……?

 俺が忘れた……いや、俺が転生した影響と考えた方が妥当か。

 であれば……何だ?

 ふむ、さっぱり分からん。


「どうしたの〜ユイト〜〜」

「いや……俺が知る限り問題など聞いたことないが……」

「まあどの家でも良くある分家と本家の小競り合いだ。儂はどうでも良いが……分家がユイトが次期当主に相応しくないとほざいてあるのでな」

「…………へぇ……」


 突如———辺りの温度が下がり、張り詰めた緊張感が漂い始めた。

 それだけでなく、息苦しくもなり、重力が倍になったかの様な錯覚にも陥る。


「ぐ……姉上……」


 その原因である———アカネは無表情で瞳のハイライトを消し、全身から真っ青な魔力を立ち昇らせていた。

 魔力で部屋が揺れ、天井にぶら下がっているシャンデリアが今にも落ちて来そうな程に暴れている。

 

「———アカネ」

「…………申し訳ありません。感情がコントロール出来ませんでした」


 父上の一言で姉上は我に返って魔力を消すと頭を下げる。

 その瞬間に辺りを支配していた重圧や緊張感が弛緩し、何もかもが元に戻った。


「……これが姉上の力か……流石だな」


 俺は全身にかいた冷や汗に不快感を覚えながらも、姉上の強さに感嘆の呟きが漏れる。

 ハッキリと自分と姉上の力の差が感じ取れただけ、今日集まった価値があるというものだ。


 俺が内心で闘志を燃やしていると……俯く姉上に父上が慰める様に言った。


「アカネ……お主がユイトのことを大切に思う気持ちもよく分かる。儂も始め聞いた時は分家を滅ぼそうかと考えたほどだからな。はっはっはっ!」


 何を言ってんだこの人は。


 更に、高らかに笑う父上を見て、姉上は先程の反省は何処へ言ったのか、したり顔で頻りに頷いていた。

 母上は……先程からずっと笑顔だが、全く目が笑っていない。

 いつでもやる気満々と言う感じである。

 

 ……やっぱりこの家は強過ぎるが故に何処かズレているらしいな。

 簡単に当主が「分家を滅ぼす」とか言えないだろ普通は。

 そして周りの誰かが苦言を呈すだろ。

 

「まあ簡単に言えば……分家の彼奴が調子に乗っておる。このままでは最悪家門を乗っ取ろうなどと馬鹿な事を考える輩が現れるかもしれぬ」

「「「はい」」」

「よって———今回の分家との交流会はユイトには悪いが……分家の彼奴と闘ってもらおうと思っている。それが1番早くて確実な方法なのだ。どうだ、ユイト?」

「……」


 どうだ、ね……そんなの考えるまでもない。

 既に答えは決まっている。



「———任せて下さい。我が最強の魔眼で飼い主に噛み付く駄犬を躾けてみせます」



 周りが強過ぎるから、自分の力を試すのに丁度いいしな。

 

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