第38話

全く、彼女の成長スピードには目を見張るものがある。

まだ学校に来てから数時間だというのに、彼女の周りには歪な空間が出来上がっている。

「見ろよ、周りに変なもやもやができてる」

『あれは…ノイズだな。空間を湾曲させてる』

「なんだか…小さいブラックホールみたいな感じだ」

『あぁ、正常なものを取り込み力を増している』

「もう怖いんだけどあれ」

目の前のものを見て、正直な感想が出る。

あれはもう人では無い。彼の言うとおり、バグだ。

『なら、なおさら修正しなきゃならん』

「…ちょっと気になったんだけど、あの呪文どこで知ったんだ?」

『ん?あれか?あれは…俺にも分からん』

「なっ!?(ズコー)」

ここまで綺麗にコケることは人生において2度もないだろう。

それくらい美しいコケを俺は披露した。

「分からんってそりゃないだろ!?」

『いやあの違うんですなんていうかいつの間にか頭の中にあったっていうか』

「…はぁ?」

『この記憶がまだ今みたいに自由じゃなかった時だ。頭の中で話すことができないからどうしようかと悩んでたらな?』

『─滅びの時は近い……この言葉を……貴殿に……─』

「…」

『と、こんな声が入ってきたんだ。それからというもの中々頭から離れなくてなぁ。今はすっきりしてる』

「…今は冗談を言ってる場合じゃないと思うんだけど」

『ホントなんです、ウソじゃないです信じて』

「アホか!そんなご都合主義あってたまるか!」

『えぇ…だってここそういう世界じゃ』

「はいお口チャック」

『むぐ』

「…とりあえずその冗談話は置いといて、目の前の問題から解決しなくちゃな」

『こちらとしては早々に花蓮を修正しなくてはならんが…今近づけば消し炭になるのは確実だ』

「となると…彼女が手薄になるのを待つか?」

『ダメだな、周りの歪みは恐らく花蓮の意思とは関係なく発生している。待つのは無理だ』

「ならどうしたら…」

『まぁ待て、機会は必ずくる。いきなり今日何かを起こす訳じゃない。もしかしたら明日かもしれんし明後日かもしれん』

「今はただその時を待つのみ、か」

『そうだ、まずは観察に徹しろ。亀井の様子も忘れずにな』

「!」

『…何面食らった顔してるんだ。…俺だって鬼じゃない。一応は見てやる』

「ははっ、頼もしいや」

『…はぁ』

「どうした?」

『いや、元はただのエロゲだったのになんでこんなSFチックな状況になったんだろうなーって』

「…」

『やめろ、そんな目で見るな。俺だって健全な男子だ。そういうゲームには興味津々なんだよ』

「…この体の人には同情するよ、こんなやつに入られて」

『うるせー!』





侵食率、76%。

損壊率、91%。

言語能力の低下、かなりあり。

人としての生活能力、もはや0。

速やかなる削除をお勧めします。

「ソう…ついニ世界マで私がジャまなのネ。でモ、大丈夫」

「あイツを消しタラ…亀井をグちゃぐチャにしたラ、私も消エルから」

汚染率、100%オーバー。

キャラクターとしての姿を維持できません。

「アぁ…もう、こんナ姿、勇也ニ見せラれナイわ」

メモリー損失、情報を保存できません。

「でも…マた、会いタイ」

「大好キな…ゆう…ヤ」

崩壊率、99%。

自我を保てません、暴走します。




キャラクター「error_01」。

制御不能です。即刻削除を提案します。

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