第34話

学校に着いてすぐ、俺はクラスメイトに捕まった。

「お、おい神崎!お前大丈夫だったか!?」

「あ、あぁ…問題ないよ」

「すごいね神崎くん、あれで生きてるなんて」

やはり皆現場を見ていたのか、かなり心配してくれた。

「ほら、こんなところで立ち往生もなんだし、早く教室へ行こう」

「あぁ、じゃあまた後で」

そう言ってクラスメイトを送っていると、

「あ、勇也!」

「おー、君は…」

「新田陽介くん、よ。この前教えたはずだけど?」

「そういう貴方は川瀬さん…その節はどうも」

「体はもう大丈夫なのかい?」

「あぁ、この通りばっちり」

「そっか…なんともなくて良かったよ」

「ありがとう」


「…花蓮、その」

「ん?どうしたの?真緒」

「もう大丈夫なの?前までその…すごい落ち込んでたから」

「あぁ…その事ね。大丈夫よ、何も心配ないわ」

「…でも」

「大丈夫なの」

「っ…ごめんなさい」

「…」

…幼馴染が怖い。

前まで明るい、どこにでもいる普通の女の子だった。

何もおかしいところはなかった。でも…最近はなんだか変。

おかしくなったのは…神崎くんが入院してからしばらく経った頃。

悲しみに暮れていた花蓮は、突如壊れたように吹っ切れた。

前日まで生きてる気すらなかったのに、いきなり元気になって、毎日笑顔になった。何より…その笑顔が恐ろしい。

作ったような口元。光ってない目元。どこを見てるか分からない目線。

花蓮は毎日、そんな顔をするようになった。

…神崎くんも気付いているだろう。花蓮の異常さに。

どこか普通ではないことに。

だから彼にはもう傷ついてほしくない。

花蓮には…普通の人に戻ってほしいから。



「ここが、俺の席?」

「あぁ、先生から話は聞いてる。困った事があれば頼ってくれよ」

「悪いな何から何まで。…ちなみに名前は?」

「俺か?俺は神楽坂だ、神楽坂翔太郎かぐらざかしょうたろう。好きに呼んでくれ」

「分かった、ありがとう神楽坂」

「おう」

どうやら俺はそれなりにクラスメイトの信頼を勝ち取っていたようで、教室に入ると皆、声を掛けてくれた。

「皆おはよう…と、神崎くんか。今日から復帰と聞いているが…特に問題はないか?」

「あ、先生…ですね。はい、大丈夫です」

「む…そうか、記憶喪失だったな。すまん、私のことは知らなかったか」

「あぁいえ、こちらこそ…」

「私は桐田智嗣きりたともつぐだ。今度は忘れないでくれよ」

「はは…善処します」

「もう少ししたらホームルームを始める。挨拶は今の内に済ましておけ」

「はい、分かりました」



「では、話は以上だ。そのままゆっくりしていろ」

ホームルームが終わり、少し時間が余ったので、外を眺めてみる。

中庭にグラウンド、食堂。この学校は結構広いらしい。

校内も把握しとかないとな…なんて考えていると。

「ういーす…遅れてすみません」

「…亀井か」

1人の生徒が遅れてやってきた。

そしてその瞬間、

「!!」

「!?」

背中に寒気が生じるとともに、物凄い殺気を感じた。

殺気を向けられているのは…亀井というやつだ。

『未知のエラーを検知しました』

…またこの声だ。となると…この殺気を向けているのは…?

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