第33話

『─なぁ、まだか?』

…何だよ、藪から棒に…

『俺、なんだか嫌な予感するんだよ。記憶、まだ戻ってこないか?』

嫌な予感…辞めてほしいな、そういう事言うの。

俺、今日から学校に復帰するんだぜ…?

『あー、そうだったな…はぁ』

…なぁ、俺はどんなヤツだったんだ?

『俺か?まぁそうだな…自分で言うのもなんだけど結構良い奴かも?』

何だよ、それ…適当だな。

『いやだってどうしようも無いんだよ!?前世の記憶使って頑張ろー、って意気込んでたのになんか俺の知らない感じにぐちゃぐちゃーって!最初は利用出来るやつがいればとことん使ってやろうとか、結構酷いこと考えてたけど…ねぇ?これじゃ普通に学生生活するしかないかぁ…ってなって』

答えになってないよ…

『あ、ほんと?…確かにこれじゃ愚痴だ』


─あぁ…そろそろ目が覚めそうだ、じゃあな。

『そうか…気をつけてな。お前の近くに、今にも壊れそうなやつがいる。…何があるか分からない。用心しとけよ』

…はは、まるでアニメかゲームみたいだな…その忠告。

『実際そうだろ、ここ最近忘れてたけど』




「……実感湧かないな、その言葉」

夢から覚める。

今日で3回目だ。あの夢を見るのは。

「嫌な予感、か」

さっきの事を思い出す。あいつ…前の俺は嫌な予感がすると言った。そして、今にも壊れそうなやつもいると言った。

いったい誰だろうか。俺の周りにいる人たちの中にそいつはいるとこの前も言ってたが。

…考えても仕方がない。今日から学校に行くんだ、考えるのは学校でもいいだろう。

朝のルーティーンを済ませ、支度をする。

妹さんはまだ起きなかった。またこの前みたいに抱きつかれても困る。そのまま大人しく寝ててもらおう。

玄関のドアを開ける。

「おはよう、勇也」

玄関の前には彼女…花蓮が立っていた。

─いつから?急なもんだったから少し驚く。

「…は、早いね?いつから…」

「いいえ?さっき来たところよ」

「あ、あぁそう…」

「今日から学校に復帰するらしいわね。私も一緒に行くわ」

「分かった…行こうか」

彼女に近づく。すると、

『エラーが発生しています。速やかなる消去をお勧めします』

まただ、また変な声が頭の中に響く。…なんなんだ、これ。

彼女の方へ目を向ける。…笑顔ではあるが、目が笑ってない。どこを見ているか、全く分からない。

「どうしたの?そんなに見つめて…顔に何か着いてる?」

「い、いや何でもないよ、早く行こう」

彼女は危険だ。本能がそう告げている。

外見は普通でも、中が変だ。

俺は、今の彼女が化け物にしか見えない。

だからこそ、不用意な接触は避けたかったんだが…まさか向こうから来るとは思っていなかった。

…今は正常だが、いつ壊れるか分からない。

俺の言ってたことがようやく理解できた。

…彼女の笑顔が怖い。まるで全てを見透かしているような、あの笑顔を直視できない。

…俺は、全く笑えなかった。

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