第28話
1つの音が、一定のリズムで流れる。
ピッ、ピッ、ピッ。やけに頭に響く。あぁ…目が覚める。
「…?ここは…」
病室のような部屋で目が覚める。
どうして俺はここに…?
「ぐっ…!」
動こうとするが、腹部に激痛が走り瞬時に動きを止める。
よく見ると、身体中が包帯でぐるぐる巻きにされている。
「なんだこれ…これじゃ動けないじゃないか」
どうしたものかと悩んでいると、部屋のドアが開き、誰かが入ってくる。
「ふんふんふーん」
この声は…
「ふふふーん…えっ」
俺の前にいる女の子が目を大きくしてこちらを見つめている。
「勇…也…?」
女の子が恐らく俺のものであろう名前を呼ぶ。が、
「…えっと、誰?」
俺はこの子を知らない。
あれから何時間経ったろうか。
どうやら俺は学校での爆破事故に巻き込まれたらしい。
俺は爆発をもろに喰らったが生きているようで、医師も、
『よく生きてたなぁ…信じられんよ』
と驚いていた。
そして、それと同時に俺は記憶障害らしい。
爆発の影響で脳にダメージが行ったのか、記憶が少し飛んでいるようだ。先程の女の子は知り合いだったらしく、1週間ほど目を覚まさなかった俺の彼女だと、後から聞いた。
『ごめん、俺、君のことは知らなくて』
『…え?そんな、嘘でしょ…?ねぇ…?やっと目覚めたのに…?』
『…ごめん』
『…これ、果物の詰め合わせ。良かったら…食べて』
『…ありがとう』
『…私、信じてるから。記憶、戻るって』
「…悪いことしたかなぁ」
なんて、杞憂に浸っていると、
「ちょっと、失礼!」
「は、入りますよ!」
「兄さん!」
またしても知らない人が3人来た。
「はぁ…はぁ…起きたのね、神崎くん」
「…聞いたよ勇也、記憶障害なんだってね」
どうやら女の子の知り合いらしい。皆俺のことを知っているようだ。
「あぁ…だから、君たちのことは何一つ分からないんだ」
「そんな…嫌です!兄さん!」
「君は…」
「私ですよ…覚えてないんですか…?貴方の妹の結衣ですよ…?」
彼女は俺の妹らしい。しかし、何も覚えてないので何も言えない。
「…」
「…にいさぁん(泣)」
「勇也、本当に何も覚えてないのかい?」
「えぇ?……」
もう一度、3人の顔をよく見てみる。物静かそうで、至って冷静な女性。多分同い年だけどちっちゃい男、そして俺によく似た顔の女の子。
じっくり見てみるが…
「…すまん、よく分からない」
「そう…どうやら本当のようね」
「…」
「じゃあ幾つか質問するわ。答えてもらってもいいかしら?」
そういって彼女はメモ帳を出す。メモ帳には文字がびっしりだ。
「あぁ、構わない」
「じゃあ行くわ、貴方の名前は?」
「…分からない」
「OK、貴方の名前は神崎。神崎勇也くんよ。分かった?」
「あぁ」
「じゃあ次よ。貴方の…」
しばらくして、質問は終わった。
「これで終わりか?」
「えぇ、もう充分。今日はここらで失礼するわ」
「分かった」
「…早く記憶戻して、花蓮に元気だしてやんなさいよ」
そう言って彼女達は部屋を出ていった。
「戻せるもんなら、戻したいよ…」
愚痴を零しながら、ベッドに体を倒す。
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